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- 遠く見える金網、それを伝う
深緑のツタ
こんなに朝の空気が蒼いのに
わたしの心魂は微かに痛む、小さな小さな
擦り傷につまずいています

わたしの吸う息、あなたの吐く息
うまくあわせられなくて
あなたの笑顔さえ思い出すのが苦しくなります

鬱なのは理解(わか)っています
でもいまはなにを見ても石灰のように苦いのです

こんなに朝の風がやわらかで
空にはツバメも泳いでいるのに
それだのに
細かい棘の突き出た暗い深い穴のなかに
わたしは安眠の地をさがそうとしています
病気なのは理解(わか)っています
でもいつまでなのでしょうか
この鋭い棘たちと毎日
顔をつきあわせながら生きていくのは…
- いえす『つぶやき』
8月11日 閉鎖病棟にて。
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- 苦難の中から主に助けを求めて叫ぶと
主は彼らの苦しみに救いを与えられた。
闇と死の陰から彼らを導き出し
束縛するものを断(た)ってくださった。
- 旧約聖書(新共同訳)詩編一○七編十三節~十四節より。
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- いまのわたしには優しさがこわい
いまのわたしには愛がこわい
いまのわたしにはあわれみがこわい

じゃあどうしたらいい…?
………………………
そうだ…でもわからない

いまにも崩れそうな曇天の下
わたしの心も崩れそうだ
いや、もう真夏のスコールのように
もはや流れはじめているのかも知れない

いつわりのわたしならば、いっそ流れてしまえ
海深くまで沈んでしまえばいい

本当のわたしは誰よりも優しさを欲しています
本当のわたしは誰よりも愛に飢えています…こんなに与えられても足りないのです
本当のわたしはあわれみのふところに深く包まれたいのです
はらわたがちぎれるようなあわれみに甘えたいのです
本当のわたしは…本当のわたしは…
純白のこぼれるような笑顔と
魂の裂け目から流れ出るような涙が欲しいのです

あのイエス・キリストの御眼からひとすじ流れたもうたような
本当の涙と愛とあわれみが
いまのわたしには…いまのわたしには…
たまらなく欲しいのです
- いえす『慟哭あるいは不信仰者の祈り』
7月29日 閉鎖病棟にて。