- 哀しみは
石畳のうえで鍛えあげられた
心魂の苦い果実
黄色い記憶の嬰児は埋葬され
慰められることなくドクドクと噴きあげる動脈血がうめきをあげる
そして
永訣の惑星が深く息を吸うほんの半刻手前
一匹の黒猫が無表情にそれを眺めた
まだ幼かった地球のように鉄は煮えたぎり
四十日四十夜の渇きを死海のほとりにどさりと降ろす
恥じらいは
鉄床のうえで叩きあげられた
劣情の渋い一個の果実
もはやわかりあえぬ孤独
とろとろと手のひらをこぼれ落ちてゆく果汁
わたしよ
いまこそこの耐えきれぬ重荷を
四十日四十夜の徒労と忘却の闇に
そっと沈めるがいい
深く…
さらに深く…
そしてここから始める
新たな第一歩をおまえは
冷たい石板に
自らの紅い鮮血をもって書き記すがいい
- いえす『四十日四十夜の別れ - 途上にて』
9月5日 闘病の床にて。


