光の章〔6〕異例の出世 | 星流の二番目のたな
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 ガルルモンが少年王の指南役を了承してから10日後。

 ガルルモンに辞令が下った。

 近衛兵見習いに任命するというものである。

 少年王の指南役を受け持つのは、いたずらの相手にされるのとは訳が違う。

 少年王に直接お仕えすることになるのだ。一介の兵士の身分では釣り合わない。

 そこで摂政ディノビーモンは、近衛兵見習いというそれまでに無かった身分を作り、ガルルモンをあてがった。

 ガルルモンに近衛兵に相当する身分を与えたいが、突然ガルルモンが出世すれば、周りの妬みを買う。その相反する条件を満たすための辞令だった。

 それでも、異例の出世であることに変わりはない。

 ガルルモンに辞令が下る前夜には、仲間の兵士達が出世祝いの酒盛りを開いてくれた。

 ガルルモンとしては、少年王の懇願に応じたまでで心から喜べる出世ではないのだが、その気持ちは表に出さず、一緒になって楽しんだ。

 近衛兵見習いになれば、仲間とこのように飲むこともできなくなるのだ。

 

 翌朝、ガルルモンはわずかな私物をまとめて、兵士の宿舎を出た。

 今日からは、城の上階にある近衛兵用の部屋が住居だ。

 部屋に入ってすぐ、ガルルモンは室内を見回した。

 前の部屋の十倍近い広さだ。

 足の裏に心地よく触れる絨毯。

 見るからに柔らかいベッド。

 ビーストデジモンに合わせてあつらえられた机。

 床から天井まであるガラス窓からは、明るい日差しが降り注いでいる。

「これは、落ち着かないな」

 ガルルモンはため息をついた。

 

 

 

 ガルルモンは少年王の訓練場として、城下町外れのはげ山を選んだ。

 少年王の技が暴発すれば、周りに被害が出るだけでなく、少年王が民を傷つけるという噂に拍車をかけてしまう。

 その点、何もないはげ山なら安心だ。

 緊張の面持ちで立つ少年王に、ガルルモンが声をかける。

「ではまず、あそこの岩を狙って技を出してください」

 その言葉に、少年王が不安そうに岩を見て、ガルルモンに目を向ける。

「でも、僕は力を制御できないの、知っているだろう。もし、ガルルモンの方に飛んだら」

「ご心配なく、必ず避けます」

 ガルルモンはこともなげに答えた。

 少年王は眉間にしわを寄せて、尚も言う。

「ガルルモンは、僕の技を見たことがないのに」

「殿下の動きなら、見切れる自信があります。散々鍛えられましたから――兵士の訓練でも、殿下のいたずらでも」

 皮肉の効いた一言に、少年王は虚を突かれて、その後不機嫌そうに唇を尖らせた。

「さあ、やってみてください」

 ガルルモンに促されて、少年王は岩の方向に体を向ける。ガルルモンは少年王と岩が見通せる位置まで離れた。

 少年王が胸元に両手をかざして、集中する。

 両手の中で、夜空を丸めたようなエネルギー体が生まれる。それが、少しずつ大きくなっていく。

「っ!」

 突然、エネルギー体が弾け飛んだ。

 ガルルモンのいる方向に。

 ガルルモンはその軌道を見定めてから、横に跳んだ。

 エネルギー体が着弾する。それは着弾点から十字に広がり、地面をえぐった。全長はガルルモンの体六つ分ほどある。

 えぐられた地面がデジコード化して、白銀の輝きを放ちだした。

「ガルルモン! 大丈夫!?」

 少年王がガルルモンに駆け寄った。

 ガルルモンは背筋を伸ばし、無事な姿を少年王に見せる。

「問題ありません。避けると言ったはずです」

 ほっと息を吐く少年王に、ガルルモンは淡々と言う。

「さあ、もう一度やってみてください」

 

 

 

 城の廊下を歩きながら、ガルルモンは今日の訓練を思い返していた。

 少年王はエネルギーを自分が制御できる以上に溜めてしまっている。

 まずは溜める量の加減ができるようにならなくては。次に、狙いを定める練習をして――。

「おや、君が近衛兵見習いか?」

 声をかけられて、ガルルモンははっと顔を上げた。

 廊下の向こうから、三体のデジモンが歩いてきた。

 先頭を行くのは、大柄な体と大きな羽を持つデジモン、ガルダモン。ビーストデジモンの指導者であり、この城もたびたび訪れている。

 後ろをついて歩く従者二体も、見慣れた顔だ。

 ただ、話しかけられたのは初めてだ。

 ひとまず、ガルルモンは歩み寄り、ガルダモンの前で膝をついた。

「はい。先日辞令をいただきました。ガルダモン様にご記憶いただけているとは、大変恐縮です」

「そう謙遜するな」

 ガルダモンは満面の笑みを浮かべ、馴れ馴れしくガルルモンの肩を叩いた。

「城下町でも噂になっているぞ。優秀な若者が、大出世を果たしたと」

「そう、なのですか。存じませんでした」

 親し気なガルダモンに戸惑いつつ、ガルルモンは差し障りない答えを返す。

 そんなガルルモンの背に合わせて、ガルダモンがしゃがんだ。ガルルモンの顔をまっすぐに見てくる。

「優れたビーストデジモンが出世するのは良いことだ。グレイドモンが倒れた今、我々が勢力を広げる良い機会。少年王や摂政も、ビーストデジモンの優秀さに気づいたのかもしれん」

「いや、まあ」

 そんなつもりはない、という言葉をどうにか飲み込んだ。

 政治的に見れば、自分の出世もビーストデジモンの勢力拡大にくくられるのか。

 こみ上げる嫌悪感が表情に出ないよう、ガルルモンはこらえた。

 反論しても、ガルダモンの機嫌を損ねるだけだ。

 ガルルモンの感情には気づかず、ガルダモンが立ち上がった。

「ではな。今後の活躍に期待しているよ」

 悠々と歩き去るガルダモンを、ガルルモンはその場で頭を下げて見送った。

 

 

 

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ガルルモンとガルダモン、1字違いでややこしい。

さて、次回は新章! 新たな未来の闘士が登場します。お楽しみに。