光の章 〔3〕大地を揺るがすような雨 | 星流の二番目のたな

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 ガルルモンが少年王の視察について進言してから二日後。

 少年王はお召列車に乗り、一人で草原の町に出かけた。

 摂政も自らの城である永遠の城でヒューマンデジモンの副官と会うべく出かけていった。

 二体がこの城に戻ってくるのは明日の予定だ。留守を任されたデジモン達は、普段よりも少し静かな一日を過ごしていた。

 少年王の学友であるララモンも、ひとりではイタズラを仕掛けることもなく、大人しくしている。ガルルモンにとっては仕事がはかどり、ありがたい限りだ。

 ガルルモンは訓練所で、訓練生達の指導に当たっていた。今日は日差しが暖かく、青空が広がっている。屋外で訓練をするには絶好の日だ。

 一体のモノドラモンが、デジモンを模した木の板相手に爪を振っている。ガルルモンはその横で足を止めた。

 モノドラモンはのけぞりながら大きく腕を振り上げ、勢いよく振り下ろしている。

 ガルルモンに見られているのに気づき、モノドラモンが緊張気味に動きを止めた。叱られることを察したのか、向き直って縮こまる。

「基本の動きよりも大振りだな」

「その、敵に大きな一撃を与えるには、振りかぶった方が良いかと思いまして」

 緊張しながらも、モノドラモンは自分の意見をはっきりと述べた。指導者相手に自分の考えを言いよどむ訓練生が多い中、ガルルモンはモノドラモンの態度を好ましく思った。

「確かに、大きく振りかぶれば攻撃の威力は増す」

 ガルルモンは前足でモノドラモンの腹を示す。のけぞる時にむき出しになっていた部分だ。

「しかし、その前に敵に弱点をさらけだすことになる。木の板はその場に立っているだけだが、実戦では敵も自分の命を狙ってくる。訓練する時も、自分の急所を守ることを意識しろ」

 話しているうちに、他の訓練生も手を止め、ガルルモンの話に耳を傾けている。

 その様子に、ガルルモンはふと、ある言葉を思い出した。皆を見回し、その言葉を口にする。

「『どんなに強い兵士も、死んでしまってはそれ以上の戦果を挙げることはできない。自分の命を大事にしてこそ、長く殿下の役に立つことができる』――俺がこの城に入ったばかりの頃、最初に訓練してくれた方の言葉だ」

 まだ未熟な訓練生だった頃に、この場所でこの言葉を聞いた。教えをたまわった期間は短かったが、教わったことは基礎として自分に染み付いている。

俺も、今の訓練生にとって良い師になれるよう努力しなくては。

 自分の師を思い出して、ガルルモンは背筋の伸びる思いがした。

 

 と、急に辺りが暗くなった。

 空を見上げると、東の方に黒い雨雲が見えた。目で見ても分かるほどに速く、城へと流れてくる。眺めているうちに、激しい雨音も聞こえだした。

「訓練は中断だ!」

 ガルルモンの一声で、訓練生達は駆け足で屋根の下へと駆け込んだ。

 直後、屋根を大粒の雨が叩き始めた。訓練場にも雨が打ちつけ、土交じりの水が勢いよく跳ねている。

 訓練生達が何か雑談しているが、雨音が大きく聞き取れない。

 

 そこに雷のような轟音が響き渡った。しかし、雷と違い近くで聞こえたような気がした。
 この大雨の中ではっきり聞こえたのだから、並みの音ではない。耳を澄ますと、城の中の方で大勢が駆け回る音がかすかに聞こえてくる。
 まさか、城が襲撃されたのか。
「訓練生はその場で待機! 指示があるまで待て!」
 訓練生に言い置いて、ガルルモンは城の中心部へと駆け出した。
 鉢合わせたデジモンをつかまえて口早に聞く。
「何があった!?」
「分からない! だが、殿下の部屋の辺りが崩れたらしい!」
 その言葉に、ガルルモンは手近な窓から身を乗り出した。雨に濡れるのも構わず上階を見る。かすむ景色の中で、白い壁の一部が崩れているのが見えた。賊の姿は見えない。城内に侵入したのか。
 とにかく、少年王や摂政の留守を守るのが自分達の任務だ。ガルルモンは他の兵士達と共に、上階への階段へと駆け出す。
 兵士達が階段に足をかけた時、階段の踊り場に誰かが降り立った。兵士達が二の足を踏み、その場で身構える。
 降り立ったのは少年王の教育係であるケンタルモンだった。ケンタルモンが兵士達を見回し声を張る。
「落ち着け、賊ではない。殿下が急遽帰っていらした」
「殿下が!?」
「草原の町で何かあったのですか!?」
 ざわめく兵士達に、ケンタルモンが背筋を伸ばし、再度声を張る。
「詳しいことは今確認している。兵士達は持ち場に戻れとの殿下の仰せだ」
 ガルルモンは納得ができずにうめき声を漏らした。明らかに何かが起きたのだ。それなのに、自分は現場に行くこともできず、何があったのか知ることもできない。
 今すぐ階段を駆け上がりたい衝動を抑えて、ガルルモンは頭を下げた。
「……殿下の仰せとあらば」
 
 
 
―――
 
 
 
 二日間、少年王は姿を見せなかった。臣下には何も知らされず、ただ摂政等が厳しい表情で、慌ただしく動き回っていた。
 そんな中、行商づてに気になるうわさが届いた。
 少年王がかんしゃくを起こし、草原の町を焼き滅ぼしたという。
 普段なら少年王に反抗する輩の流した嘘だと切り捨てるような話だ。
 だが、ガルルモンは根拠のない胸騒ぎがした。摂政等の表情には、うわさに匹敵するような深刻さが刻み込まれていた。
 
 そして三日目に、臣下一同が前庭に集められた。
 二階のテラスに摂政ディノビーモンが姿を見せる。その後ろに少年王が立っているようだが、日陰にいて表情は分からない。
 摂政が口を開く。
「先日、草原の町で起きた件について、流言を聞いた者もいるだろう。ここで真実を説明しておきたい。殿下が草原の町に視察にいらっしゃるのを知り、ヒューマンデジモンのグレイドモンが殿下の暗殺を謀ったのだ」
 暗殺。ガルルモンの毛が逆立った。周りからも動揺の声が漏れる。
「草原の町の長老は、あろうことかグレイドモンと手を組んだ。町の各地に殿下のお命を狙う者達を潜ませていたのだ。そのため、殿下は身を守るため、やむを得ず賊を町ごと焼き払った」
 摂政が一度息をつき、言葉を続ける。
「幸い殿下にケガはなく、首謀者であるグレイドモン達は死んだ。しかし、暗殺計画を知らずにいた罪なきデジモン達も多く戦闘に巻き込まれ、命を落としてしまった。誠に遺憾だ」
 正当防衛であったとはいえ、少年王が無実の民を手にかけた。その事実に、ガルルモンの体は震えだした。
 もし摂政ディノビーモンがついていれば、汚れ役は摂政が引き受けただろう。摂政でなくても、誰かが護衛としてついていれば、命を奪うのはその者の役目となったはずだ。
 誰かが。俺が。
「俺が、殿下をおひとりで行かせた。殿下を危険な目に遭わせ、多くの命を奪わせた」
 ざわめきにかき消され、ガルルモンの声は誰にも届かなかった。
 
 
 
☆★☆★☆★
 
 
 
というわけで、大粛清直後の光の城の様子でした。
ガルルモンは予測できなかったとはいえ、今後罪悪感を抱えていく事になります。
 
ジオグレイモン、ガルルモンと真面目系が続いたので、そろそろ不真面目な主人公も出したいなあ。
 
コメント返しは帰国後にさせていただきますので、お返事まで少々お待ちくださいませ。

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