三題噺「パペット」「沼」「幽霊」 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよび
デジモンアドベンチャー02の
二次創作(小説)中心に稼働します。

注)『デジモンフロンティア02~神話へのキセキ~』は
管理人が勝手に想像するフロンティアのその後の物語です。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。


テーマ:

無性にギャグを書きたくなったので、ツイッターで題を募集して一本書きました。

今回はデジモンなしです。

 

 

―――

 

 

 木製のパペットは最初、小さな女の子のおもちゃでした。
 お着替えをさせたり、糸をぐちゃぐちゃに絡まらせたりと、女の子は幼いなりにパペットをかわいがっていました。
 が、家族で牧場に出かけた帰り、パペットはうっかり開いていた女の子のリュックから滑り落ち、そのまま置いていかれてしまいました。
 夜が来て、朝が来て、また夜が来ても、女の子は迎えに来てくれませんでした。
 三日目の夜に、パペットはとうとう決心しました。
「置き去りにされたからには、呪いのパペットになろう!」
 呪いのパペット。それはパペット界のロマンと言っても過言ではありません。
 夜な夜なひとりでに動き出し、変貌した容姿と甲高い笑い声で人を恐怖に陥れる。それだけの自立性と演技力を兼ね備えた存在になれるパペットは少なく、それだけに誰もが一度は憧れる存在なのです。
 別に女の子に恨みはありませんが、「草むらに置き去りにされた」というのは呪いのパペットになるための王道第一歩です。
 そうと決めたら、寝転がってる場合ではありません。パペットはむくっと起き上がって、もつれていた糸をきれいに束ね、二本の木の棒を小脇に抱えました。こんなこともあろうかと、自分で動く練習をしていたかいがありました。
まあそんなことはどうでもよくて、大事なのは、より呪いのパペットにふさわしい「それっぽい場所」を探すことです。牛がモーモー鳴いている牧場を選ぶなんてナンセンスです。
 パペットは人気のない夜道をずんずん歩きます。
「へえ、こんなところにパペットが歩いてるなんて珍しい」
 声がしたので見上げると、20歳くらいの男の幽霊がいました。白いはかま姿ですが、どこもかしこも破れてボロボロです。右目は大きなたんこぶで潰れています。
 パペットは着ていたドレスのすそをつまんであいさつしました。
「こんにちは。この辺りに呪いのパペットにちょうどいい場所はない?」
「それは奇遇だな! いい場所を知ってるから案内するよ!」
 幽霊はとても嬉しそうな笑顔で答えました。
 幽霊はパペットを近所の沼地に連れて行きました。
 パペットは目を輝かせて沼地を見回しました。
「これが噂に聞く底なし沼!」
「……いやぁ、水深30センチくらい」
「じゃあ、無念の死を遂げた遺体が今もこの底に」
「俺、ここで溺れ死んだけどすぐに引き上げられたからなあ」
「そ、それなら長年放置されて、知る人ぞ知る場所に」
「俺が死んだの半年前だし、実家そこの牧場だから親すぐ来るんだよなあ」
「あ、花束……」
 とうとうパペットは我慢できなくなって、腕を胸の前に組んで、幽霊を見上げました。
「これのどこが『いい場所』よ!」
「これから心霊スポットとして有名になるんだよ! 今も親や友達が来たら首だけ沼から出してみたり、風もないのに波を立ててみたり、頑張ってるんだぞ! 俺はこっから有名人になるんだ!」
「効果出てるの?」
「霊感のあるやつが一人も来ない」
 がっくりする幽霊を見て、パペットはふふんと笑いました。
「じゃあ仕方ないわね。ここはちゃんと体のある私が盛り上げてってあげるわ。ここが有名になれば、霊感のある人も来るようになるし」
「よし、一緒に頑張ろうぜ!」
 幽霊とパペットは力強くうなずきあいました。呪いのパペットを目指す者と悪霊を目指す者。ここに固い同盟が組まれました。
「さて、まずはお前も呪いのパペットらしくならないとな」
 幽霊はパペットを上から下まで見ました。
「まずは3か月くらいこの沼に浸かれ」
 パペットは沼地を見ました。よどんでいる上に、緑のぬるぬるした藻が漂っています。
「うっ、やだやだ、絶対いや」
「放置されてた感出さなきゃ怖くならないだろ!? 泥パックすると思って、ほら」
「騙されないからね!? 泥パックが沼の泥と違うことくらい知ってるから!」
「ちっ、脳みそまで木なのに頭いいな」
「脳みそもない人に言われたくないですー。あなたこそ着物やめたら? 死んだの半年前でしょ? 着てたの洋服でしょ?」
「幽霊といえば白い着物にたんこぶってお約束なんだよ!」

 


 百年くらい経ったら、この沼も心霊スポットとして有名になる……かもしれない。

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