俺とノゾムの横に、スサノオモンが飛んできた。俺の姿を見て、冷静にうなずく。
「スサノオモンは遠距離攻撃の方が得意だ。援護するからお前は遠慮なく前に出ろ」
「オーケー。俺の一番得意なやり方だ」
短い会話を終えて、敵に向き直る。
ユピテルモンが一本残ったハンマーを振った。自動で敵を狙ってくる雷雲が生み出される。
その数は五つ。前回の戦いから半減している。不意打ちでハンマーの片割れを吹っ飛ばした効果が出ている。
「ノゾム、しっかりつかまってろよ!」
「うん!」
背中の四対の羽で一気に加速する。剣を体の右下に構えて、ユピテルモンめがけて飛ぶ。
「《マボルト》」
雷雲がユピテルモンを守るように円陣を組んだ。雷撃が俺に放たれる。
「りゃあっ!」
迫る雷撃に向かって剣を振る。白炎は雷を飲み込み、消し飛ばした。
ユピテルモンは俺から離れるように飛んだ。雷雲が俺を囲み、雷を次々と放つ。さすがの数に、立ち止まって雷を弾くのに精一杯になる。この一発でもノゾムに当たったら危険だ。
「スーリヤモン、避けろ!」
スサノオモンの声に、とっさに空中で宙返りした。
逆さになった視界の中で、スサノオモンが赤と青のキャノン砲を構えているのが見えた。
キャノン砲を右下に引くと、砲口から光の剣が伸びた。それを一気に振り抜く。
「《
太く、長い光の剣が雷雲を切り裂く。その軌道から逃れようと雷雲が動くが、光の剣は一層輝きを増して全てを捉えた。
五つの雷雲全てが、文字通り雲散霧消した。
「サンキュ、兄貴達!」
言っている間に自分の体勢を立て直す。ユピテルモンがマントをたなびかせながら接近してくるのが見えた。
「っ!」
振り下ろされたハンマーを剣で受け止める。《マボルト》が破られて、接近戦に切り替えてきたか。
敵の黄金の鎧の表面を、無数の小さな雷が走っている。前の戦いでは、この磁場のバリアを破れなかった。
でも、出力をぎりぎりまで上げた今なら。
刀身を右斜めに滑らせ、鍔迫り合いから抜ける。神剣アパラージタを燃え上がらせ、左に切り上げる。
「《トリ…シューラ》!」
ユピテルモンがハンマーで受け止めようとした。
が、剣の白炎はハンマーを豆腐のように両断し、敵を右腹から肩へ大きく切り裂いた。
ハンマーの半分が地上に落ちていく。
ユピテルモンは傷を押さえ後ずさった。その切り口は赤く、湯気を上げている。
「この鎧も、極めた炎の前には無意味、か」
つぶやくユピテルモンは息苦しそうだ。
「まだまだ!」
「僕達の力はこんなもんじゃない!」
俺とノゾムの声が重なる。
距離を詰め、神剣で何度も切りつける。剣を振るうたびに、ユピテルモンの鎧の欠片が舞う。
「……ならば!」
ユピテルモンの前蹴りが俺の腹に入った。その勢いで、ユピテルモンとの距離が空く。
その隙に、敵から金色の光があふれだした。スサノオモンが光の剣を伸ばして切りつける。が、剣はプラズマの塊をすり抜ける。
「っ、まずい!」
「《ワイドプラズメント》」
ユピテルモンの体がプラズマと化した。
あの状態だと俺の攻撃は通じない。右手でノゾムを支えて、全力で離れる。
翼が増えた分、スーリヤモンの速度は上がっている。
それでも、プラズマの弾ける音が背後から少しずつ近づいてくる。
「スーリヤモン!」
スサノオモンの声がした。見ると、地上に降り立って両手を天に掲げている。
その口が動いた。
来い。
俺は急旋回して地上に進路を取る。プラズマの塊も後を追ってくる。耳元で風がうなる。
地面に激突する寸前で方向を変える。鎧が地面をえぐり、土ぼこりを上げる。
「くらえ、《
スサノオモンの叫び。
直後、落雷の音と共に、地面が揺れた。俺は左手を地面について勢いを殺し、前転して着地する。
振り返ると、上空から地面へ八本の雷の柱が突き刺さっていた。
柱の根元にはプラズマの塊。それがユピテルモンの姿に戻っていく。
「《ワイドプラズメント》を、捕らえた……!」
俺の驚いた言葉に、スサノオモンが答える。
「《
拘束されたユピテルモンが身じろぎする。
「私は天空の神にして最高神。それが、敵の雷に敗れることなど、ない!」
ユピテルモンの周囲の地面に雷がほとばしった。地面がデジコードに変わり、ユピテルモンに吸い込まれる。できた空洞を抜け、拘束から逃れた。上空に飛び、俺達から距離を取る。
スサノオモンがクッと顔をしかめる。
「まだあんな体力があるのか」
でも、とノゾムが続ける。
「鎧はだいぶ欠けているし、動きも鈍い。あと少し、僕達ならできる」
「ああ、俺達なら!」
俺は地面を蹴り、飛んだ。
神剣アパラージタが白炎に包まれ、まばゆく燃える。
ユピテルモンがハンマーの欠片から雷撃を放つが、燃える剣を振って全て打ち落とす。
「お前の企みも、終わりだっっ!」
ありったけの力を込めて、俺は剣を降り下ろした。
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フロ02更新再開です。大変お待たせいたしました!