お正月特別編 不思議な鳥は甘味がお好き | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

改めまして、星流です。今年もよろしくお願いします。
遅くなりましたがお正月特別編です。最近フロ02もユナイトも重い展開だし、お正月だし、明るい話を書こう! ……と思った結果、クレイジーなものができあがりました。珍しくアルコールを飲んだ状態で書いたせいか。
 
 
 
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 ある春の日、家のインターホンが鳴った。
 玄関を開けたら、青くて背中に木の生えた鳥がいた。それも1年生のぼくくらい大きいやつ。
 見なかったことにしよう。
 ドアを閉めようとしたら、がしっとへりをつかまれた。頑張って閉めようとしたけど、逆にぎりぎりとこじ開けられた。
 ぼくより頭一つ低いのに、手じゃなくて羽なのに、なんでこんな強いんだ。
「ぜえ、はあ」
 ドアが元通り全開になったところで、ぼくは諦めて手を放した。
 鳥の方は明るい顔で片手(片羽?)を上げた。
「クワッ」
 ……あいさつか、あいさつなのか。
「おにい、なにやってるの?」
 妹がぼくの後ろから顔を出した。鳥を見て目を丸くする。
「うわあ、かわいい!」
 年少さんの妹と鳥の目線は同じくらいだ。妹が手を伸ばして鳥の頭をなでる。
「こんにちは。おなまえは?」
「クワー」
「デラちゃんっていうの。かわいいなまえね」
「いや、どこからデラちゃんって名前出てきたんだよ」
 今の流れだとクワちゃんだろ。妹がきょとんとしてぼくを見た。
「だって、このこがじぶんで、デラちゃんだよ、っていったよ」
 言ってない。
 ぼくがツッコむ前に、鳥のお腹からグーという音が聞こえた。
「デラちゃん、おなかすいてるの?」
「クワ……」
 鳥はとたんに座りこんだ。
「じゃあなにかたべさせてあげる!」
 妹は鳥を家の中に連れていこうとする。ぼくは玄関に立ちふさがって両手を広げた。
「ダメ。知らない人を家に入れちゃダメってパパとママに言われてるだろ」
「デラちゃんは人じゃなくて鳥さんだよ?」
 そうだけど……そうじゃなくて!
 ぼくが考えている間に、鳥はぼくのわきの下をくぐって素早く家の中に侵入した。
「あ、こら!」
 ぼくと妹が後を追う。
 鳥は廊下できょろきょろした後、ダイニングに入っていった。テレビやテーブルを不思議そうに見ている。
 ぼくは鳥が変なことをしないかじっと見張る。その間に妹は冷蔵庫を開けてレタスだのニンジンだのを抱えてきた。
「おにい、デラちゃんはニンジンすきかなあ」
「普通の鳥じゃないよなあ。分かんない」
 適当に答えると、妹は野菜を床に並べた。
「デラちゃんどれがいい?」
 妹が呼ぶと、鳥は野菜に顔を近づけてにおいをかいだ。
 全部かいだ後に首を傾げて、レタスをくわえた。「あまりおいしくないけどこれが一番まし」みたいな顔して食べていく。
 ぼくはその横のイスに座った。テーブルのおやつかごからチョコボールを取って、口に放り込む。
 二つ三つ食べていると、視線を感じた。いつの間にか鳥がぼくを、いやぼくの持っているチョコボールを見つめている。
 ぼくはチョコボールと鳥を見比べて、さっとチョコボールの箱を背中に隠した。
「これはぼくのおやつだからダメ!」
「クワ!」
「おいしそう、だって!」
「おいしいけどダメ!」
「クワー!」
「いっこでもほしい、って!」
「うーん」
「クレー!」
「くれー、って!」
「ちょっと待て、今この鳥しゃべった!」

 鳥を指さすと、鳥は「ナンノコトデショウ?」というように目をぱちくりした。

 となりで妹も「ずっとおはなししてるよ?」と目をぱちくりしている。

 頭が痛くなってきた。

 あきらめてチョコボールを三つぶ手のひらに出した。

「ほら」

 手をのばすと、鳥はすぐにチョコボールを食べた。

 目をまん丸くして、体が一瞬膨らんだ。

「クエーッ!」

 興奮したように一声鳴いて、そのまま「クエックエッ」と嬉しそうに鳴きながらリビングをぐるぐる回った。そしてぼくのところに戻ってきて、手のひらに残っていたチョコボールを全部食べた。

「もっとたべる?」

 妹が自分の分を全部床に転がした。鳥はクエクエ鳴きながらせっせと食べる。

 なんかもう、「キョロちゃん」に名前変えればいいんじゃないかな。鳴き声変わってるし。

 

 チョコボールを食べ終わった後、鳥は玄関の方に歩いていく。

「もうかえっちゃうの?」

「クエッ」

 妹が聞くと、鳥はちょっとさみしそうにうなずいた。

「じゃあチョコボールおみやげにあげる!」

 そう言って妹はリビングに走っていって、食べかけの箱を持ってきた。

「あ、それぼくの……」

 言ってる間に、チョコボールは鳥の背中の木に押しこまれた。

 鳥は嬉しそうにした後、背中の木にくちばしを突っ込んで、茶色の木の実を取り出した。妹の手の上に乗せる。

「くれるの?」

「クエー」

 ぼくが聞くと、鳥はまたうなずいた。

 道路まで見送りに出ると、鳥は「クエッ」と片羽を上げてあいさつして、通りの向こうへ歩いていった。どこへ帰っていったのか知らないし、あれ以来会ってない。

 

 もらった木の実はベランダの鉢に植えた。すぐに芽が出て、秋には両手で包めるくらいの小さな木になった。鳥の背中にあった木にそっくりで、茶色の実がなった。

 食べてみたら、チョコボールだった。

 

 

 

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自分で読み返しても、クレイジーすぎてオチもなにもない。

鳥デジにお宅訪問させよう→おやつをあげよう→チョコボールのキョロちゃんって鳥だな

というひどい思考回路の結果です。ほんとアルコールテンション怖い。