第177話 激闘を乗り越えて ためらいのない自白! | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 戦いは兄貴達の方が押していた。
 分身が痛みを感じないとはいえ、さっき右足に斬りつけたのが効いている。分身は左足一本だけで動いていて、速度は格段に落ちている。
 剣を逆手に持ち替えて、肩を引いて振りかぶる。
「りゃあっ!」
 炎をまとった剣を分身に投げつける。敵は左足の脚力で跳び上がる。
 が、直後に俺の回し蹴りで撃墜する。今の速さなら、俺の足と翼で余裕で追いつける。
「信也!」
 兄貴が俺の剣を拾って投げ渡した。片手でつかみ取り、放たれた雷撃を旋回してかわす。
 地面に着地すると同時に柄を両手で握り、刃に炎をまとわせる。
 敵は立ち上がろうとしてよろめき、その場に膝をつく。雷撃は自動照準で飛んでくるが、威力が弱まっている。
 これでカタをつける!
「《九頭竜陣》!」
「《スターライトベロシティ》!」
 九頭の炎の竜が噛み砕き、白光が駆け抜け、貫く。
 俺は敵の目前へ迫り、脳天へ剣を降り下ろした。
「《トリ…シューラ》!」
 左半分を覆っていた仮面にヒビが入り、粉々に砕け散った。
 
 
「やったな」
 兄貴とマグナガルルモンが歩み寄ってくる。
 けど俺は返事をせず、仰向けに倒れたユピテルモンの分身を見下ろしていた。分身にデジコードは出ない。足からデータのくずになり崩れ落ちていく。仮面は砕け、下の顔があらわになっている。
 その顔は満足げに微笑んでいた。
 「お前とスピリットの同調は予定通りに進んでいる。戦闘力もデータの吸収力も理想的だ。プルートモンとしての姿を早く見たいものだ」
「悪いな。そんな羽目になる前に、俺達がお前の本体を倒す」
 俺は冷ややかに答えた。
「ではその言葉、この戦いの記憶と共に本体に伝えておこう」

 分身が目を閉じると、額から金色のデジコードが飛びだした。それは天に昇る竜のようにまっしぐらに、暗い空の彼方へ消えていった。捕まえる間もなかった。

  視線を空から分身に戻した時には、体は跡形もなく崩れ去っていた。

 いや、デジコード球が一つ残っている。分身が取り込んでいた、闇のエリアの結界だ。

「このスキャンは俺にやらせてくれ」

 マグナガルルモンがデジヴァイスを手に歩み寄ってきた。輝一の兄弟、だもんな。俺は道を開けた。

「悲しくうごめく魂よ、聖なる光で浄化する! デジコード・スキャン!」

 結界のデータは、光の闘士のデジヴァイスに吸い込まれた。

 俺はノゾムを肩から降ろした。緊張が解けると、自然と体がデジコードに包まれて人間の姿に戻った。

 ハイパースピリット二人も進化を解いて、改めて俺達の方に向き直った。
 二人は渋谷駅の地下でマルスモンにさらわれた時から変わっていなかった。いや、半身のスピリットを手にした分、表情が生き生きしているように見える。

 輝一によく似た少年が口を開く。

「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺は源輝二。お前の兄貴と同じ中学1年だ」

「名前は聞いてる。輝一の双子の弟だよな」

 改めて顔を合わせると、輝一と同じ顔でも雰囲気が違う。輝一が割と周りに合わせたり会話したりするのに対して、輝二は自分のペースを崩さないって感じだ。双子でも性格違うんだな。

「俺は神原信也。小学5年生。そこにいる神原拓也の弟だ」

 俺の自己紹介に、兄貴が目を丸くした。へへ、いい気味。

「何十倍もたくましくなってるって言っただろ? 今の俺は兄貴がすごかろうとどうだろうと気にしないんだよっ」

 俺はにっと笑って付け足してやった。

 

「おーーーい!」

 声と足音が聞こえて、顔を向けた。

 城の入り口のあった方から、4人の人間と2体のデジモンが走ってくる。

 友樹、泉、純平、輝一、ボコモン、ネーモン。

 みんなもここに来てたのか。

 手を振って走ってくる仲間達を見て、俺は駆け寄りたいような泣きたいような変な気分になった。

「お城が突然消えたから、急いで来たんだけど」

 泉が言いながら、俺に視線を向ける。再会するのは、俺が炎のスピリットを破壊しかけて以来だ。

「……あの、」

 俺は珍しく一瞬言葉に詰まった。

「ごめん、勝手にいなくなったりして」

「うん、すっっっごく心配した」

 友樹が真顔で答えた。手紙も何にもなしにいなくなったんだ。心配かけて当たり前だ。

 でも、と友樹がほっと表情を緩めた。

「また会えたからいいよ」

「サンキュ」

 俺は苦笑して感謝した。

 

「信也、ところでその子は?」

 純平が視線をノゾムに向けた。

「それに、さっき城のデータがお前の体に吸い込まれるのが見えた」

 兄貴も心配そうな目を俺に向けてくる。

 俺が炎のスピリットを壊しかけた時、俺は誰にも話せずに逃げ出した。

 今は俺だけの問題じゃない。ノゾムのためにも、デジタルワールドのためにも、俺は全て話さなきゃならない。

 後ろに隠れていたノゾムの肩に手をかける。ノゾムも緊張した顔でうなずき、一歩踏み出して俺の横に並んだ。

 俺は仲間達を見回す。

「こいつはノゾム。俺の相棒なんだ。ノゾムのこと、俺のこと、これから話すけど……俺達のこと、嫌いにならないでほしい」

 


 
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4話に渡ったユピテルモンの分身との戦いもこれで決着。フロ02の第2部もここで区切りとなります。
第1部(1~115話)は信也がデジモンと出会い、炎の闘士の力で突き進む物語。第2部(116~177話)は信也とノゾムの存在意義を探す放浪の物語。そして次回からの第3部は他の仲間達との関係の再構築と最終決戦に挑む物語となります。

第200話までの完結を目標に進んでいきますので、どうぞ最後までおつきあいくださいませ。