〔46〕エアロブイドラモン&ジュエルビーモンVSマリンデビモン | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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 エアロブイドラモンが両翼を広げ、マリンデビモンの眼前に迫る。翼の先端と鼻先の角が輝き、V字を描く。敵の吐き出さす墨を避けながら急降下。

「《Vウィングブレード》!」

 敵の右目からあごにかけて一文字に切り裂く。

 マリンデビモンが空をあおいで叫び、四本の触手を乱暴に振り回した。

 その無秩序な攻撃をくぐり抜け、ジュエルビーモンが間合いを詰める。マリンデビモンが気づいた時には、赤い槍は振り抜かれた後だった。

「《スパイクバスター》!」

 槍の衝撃波を正面から食らい、敵の体がくの字に折れる。そのまま仰向けに倒れ込んだ。激しい水しぶきと共に、マリンデビモンの動きが一瞬止まる。

「今だ、たたみかけるぞ!」

「言われなくても!」

 ブリッツモンの言葉に、ヴォルフモンが素早く言い返す。そんな会話の間にも、全員が攻撃準備を整える。

「ホルスモン、胸を狙って!」

「《マッハインパルス》!」

「サブマリモン、一点集中を!」

「《オキシジェンホーミング》!」

「ネフェルティモン!」

「《ロゼッタストーン》!」

「《ヘブンズナックル》!」

「《バーニングサラマンダー》!」

「《リヒト・クーゲル》!」

「《スノーボンバー》!」

「《ミョルニルサンダー》!」

 単体では大してダメージの与えられなかった攻撃も、これだけの数が集まれば威力を増す。

 海が高く水柱を巻き上げ、ふ頭にいる大輔達のところにまで塩水が舞った。夏の強い日差しに、しぶきが細かに輝く。

 そのきらめきの中で、エアロブイドラモンが全身から白炎を立ち上らせた。

「みんな、離れてろ!」

 一声叫び、白炎が勢いを増す。気づいた敵が触手でつかみかかる。

「させるか!」

 ジュエルビーモンが槍を振って触手を切り落とす。

「《ドラゴンインパルス》!」

 エアロブイドラモンが、白炎を撃ち出す。それは竜頭の形をした衝撃波に変わった。反動でエアロブイドラモンの体が空中で一回転した。

 放たれた竜の頭部がマリンデビモンの胸ごと海を突き破った。腹の穴の向こうに、東京湾の底が一瞬だけ見えた。

 マリンデビモンの体がデータに分解していく。

 海が凪を取り戻す頃には、敵の姿は跡形もなくなっていた。


 ふ頭に戻ってきた直後、二体の完全体の体はみるみる小さくなった。

「お前、ブイモン……だよな?」

 大輔は自分のパートナーを指さして目をぱちくりさせた。色はチビモンに似ているけれど、青まんじゅうの頭を引っ張ったような形をしている。

「えっとね、いまはチコモン! どう? おれたちつよかっただろ?」

 チコモンが嬉しそうに笑いかけてきた。大輔もそれには「ああ!」と明るく答えた。

 その横で賢が自分のパートナーを抱き上げる。こちらは緑まんじゅうに葉っぱをかぶせたような形だ。

「お疲れ様、リーフモン」

「ぼくがしんかできたのは、けんちゃんのおかげだよ!」

 二人の笑顔は、憑き物の落ちたように和やかだった。

 その横で京と伊織はへたり込んでいた。

「京さん、大丈夫?」

「うん……ありがとうヒカリちゃん。何か、戦いが終わってから急に怖くなってきちゃって」

 京が胸の前で両手を握る。微かに震えていた。

 光子郎が伊織の背中をさする。

「伊織君、深呼吸してください」

「すぅ……はぁ……すみません、気を使わせてしまって」

「いいんですよ。生きたデジモンとの本格的な戦いは初めてだったんですから。精神的にこたえるのも無理はありません」

 拓也達は微妙な距離を取ってそれを見ていた。一緒に戦った仲間ではあるが、名前も知らない。声をかけようにも、どう言えばいいか迷っている。

 大輔がそこに声をかけようと歩き出す。


 が、その足がぴたりと止まった。

 後ろから、背筋の寒くなるような視線を感じる。

「だいすけ? いかないの?」

 チコモンには答えず、すぐさま振り返る。

 五十メートルほど離れた橋の下、影の中に少年が立っていた。黒く燃える目で大輔達をにらむ彼には見覚えがあった。

「ダスクモン……」

「大輔、どうし」

 肩を叩きかけた太一も少年を見つけて止まる。全員の視線が向くのに十秒もかからなかった。

「あれが?」

「話は聞いてたけど、気味が悪いくらい輝二にそっくりだな」

 友樹と純平が輝二と少年を見比べる。

 輝二は不快そうに顔をしかめて一歩踏み出した。

「お前はどうして俺と同じ顔をしてるんだ。人間か、それとも俺のコピーか何かか?」

「答える必要はない」

 少年は即座に吐き捨てた。

「俺はマリンデビモンとの戦いを見届けに来ただけだ。お前達の今の状況を確認するために。……命令さえあれば、すぐにでもこの手で消してやるのに」

 少年が握りこぶしを震わせる。

「まあ、いい。戦わなくても結果は変わらないからな。明日が楽しみだ」

 言葉を残して、少年の体が影に溶けて消えていく。

「! 待て!」

 大輔が駆け出す。

 が、橋の下に着いた時には少年の姿はなかった。

 仲間達が追いついてくる。タケルがあごに手を当てた。

「彼が敵の一味か。気になることを言ってた」

「マリンデビモンをしかけてきたのは、僕達の強さを確認するためだったんだね」

 パタモンがつぶやく。

「私達、向こうの世界でも彼に会ったの。その時、私達を倒すんじゃなくて、消去するんだって言ってた」

 ヒカリの言葉に全員が考え込む。

「私達を消去するきっかけになる出来事が、明日起こるということか?」

「情報が足りませんね……」

 テイルモンとホークモンが順につぶやく。

「うーん。考えても分からんがや」

「何があるにしても、明日になれば分かる。待ってみるしかないんじゃないかしら」
 アルマジモンが頭を横に振って、泉も困ったように首を傾げた。

 ゴマモンを抱えた丈がみんなを見回した。

「とにかく、今はみんな疲れてるし、名前と連絡先だけ確認して休むのはどうだろう?」

「丈の言う通りだな。結局自己紹介もしてないし。俺は八神太一」
 太一の出した手を拓也が握る。

「俺は神原拓也。よろしく」

 二人をきっかけに、全員が名前と電話番号、メールアドレスを紹介し合う。

 自己紹介が済んだところで、その日は解散になった。




◇◆◇◆◇◆




お待たせしました。やっと書きあがりました。


数の暴力(前半は敵に対する、後半は作者に対する)

やることいっぱいあったので、話が少しあちこちいっていますが、生温かい目で許してください(汗)