〔45〕紋章のチカラ | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 大輔は服の下からタグを引き出した。金色の紋章が太陽を反射して光る。この紋章の力を引き出せば、エクスブイモンが完全体に進化できる。
「分かりました。俺やってみます!」

「僕にやらせてください」

 大輔と同時に、思いがけないところから声がした。

 賢が緊張しきった表情で立っていた。

「でも、お前のパートナーデジモンは」

「……まさか」

 大輔が不思議そうに聞く横で、タケルの顔色が変わった。

 それに応えるように、賢の抱えていたかばんが動いた。中から緑色のミノムシが顔を出した。大輔はそのデジモンの名前を知っていた。賢にとっての何なのかも。

「ミノモン、生まれ変わったのか」

 大輔の言葉に、賢とミノモンがそろってコクリとうなずく。賢は申し訳なさそうに肩をすぼめた。

「黙っていてすみませんでした。話すタイミングがつかめなくて」

「確かに、ここ数日は異世界やゲートの話にかかりきりでしたからね」

 光子郎がうなずく。


「うわああっ!」

「! イッカクモーン!」

 悲鳴の直後、丈が柵をつかんで叫んだ。

 イッカクモンの右半身が、どす黒い毒墨にまみれていた。その体が海の中に沈んでいく。サブマリモンが全速力でそちらに泳いでいくのが見える。エクスブイモンやアグニモン達にもケガや疲れがみえる。

「のんびり話している時間はない。大輔、一乗寺、頼む」

 太一が早口に二人に呼びかけた。

 大輔はすぐにデジヴァイスをつかみ、柵の上から身を乗り出した。

「エクスブイモン! いったん戻れ!」

 その間に、賢はミノモンをかばんから地面に下ろす。自分のデジヴァイスを向けた。

「ミノモン、行くよ」

「まかせて、けんちゃん!」


「ミノモンしんか!」

「ワームモン!」

「ワームモンしーんかーっ!」

「スティングモン!」


 小さな体が、瞬く間に背の高い昆虫型デジモンに変わる。カブテリモンなどと比べると細く、人型に近いフォルムだ。

 離脱してきたエクスブイモンが、スティングモンを見て嬉しそうに笑った。まるで彼がここにいることを前から知っていたかのように、何も聞いてこなかった。

 自分のパートナーを前に、大輔と賢が紋章を握る。二人の肩を太一がつかんだ。

「紋章は、それぞれの心の一番優れたところを表している。大輔は奇跡、一乗寺は優しさだ。その部分を輝かせることができれば、デジモンは完全体に進化する!」

 大輔は紋章を握った右手を額に当てた。きつく目を閉じる。仲間達の戦う音が、声が聞こえてくる。

「――俺は、この戦いに負けたくない。勝ちたい。どんな厳しい戦いでも、切り抜けられる力がほしい!」

 賢は紋章を握った右手を左手で覆う。そっと目を閉じる。

「――僕は、これ以上誰かが傷つくのを見たくない。人を、デジモンを守るための力がほしい!」

 大輔のこぶしから黄金の光が。

 賢のこぶしから薄紅の光が。

 あふれだして二人とパートナーを包み込んだ。


「エクスブイモン! 超・進化ー!」

 全身の筋肉が更に成長し、耳が硬い角に変わる。ひじからは、鼻にあるのと同じ鋭い刃が生えた。背中の小さな翼は、強靭な赤い翼へと伸びあがる。


「エアロブイドラモン!」

「スティングモン! 超・進化ー!」

 体色が透き通る緑に変わり、滑らかな鎧に形を変える。その表面にはきらめく円形の宝石がいくつも浮き出る。真紅の穂先を持つ槍を右手に握る。


「ジュエルビーモン!」



 光子郎が手早くパソコンを操作し、アナライザーを作動させる。

「エアロブイドラモン、完全体、ワクチン種。必殺技は《Vウィングブレード》と《ドラゴンインパルス》。

 ジュエルビーモン、完全体、ワクチン種。必殺技は《スパイクバスター 》」

「すごい、一発で進化させた……」

 丈が目を丸くして二体のデジモンを見上げる。

 大輔が紋章を握る手を高々と上げた。

「よーし! 行ってこい、エアロブイドラモン!」

「頼む、ジュエルビーモン!」

「おう!」

「分かった!」

 パートナーの応援に短く答え、二体は身をひるがえした。海上に立つマリンデビモンへと、まっすぐに飛んでいく。


 進化の解けたゴマモンが、サブマリモンによって氷の上に引き上げられた。アグニモンがそれを抱え上げる。

「おい、しっかりしろ!」

「うっ、オイラより、戦いの方を……」

 ダメージが大きいのか、それ以上は声が出なかった。アグニモンは歯を食いしばり、そばにいたフェアリモンを呼んだ。

「こいつを岸まで連れていってやってくれ」

「任せて」

 フェアリモンがゴマモンを受け取り、船着き場に飛んでいく。

 それを見送ったアグニモンの目に、新たなデジモン二体の姿が映った。

 名前も強さも知らない、初めて見るデジモンだった。なのに、アグニモンは不思議とひとつの確信を覚えた。

 これでいける。




◇◆◇◆◇◆




紋章持ち二人の完全体進化回でした。いつの間にか「brave heart」口ずさみながら書いてました(笑)無意識下に刻み込まれている……。本当に進化しただけですが、戦闘に入ると長くなるのでここまでにします。

そして、今回の完全体進化で察した方もいらっしゃるでしょうが、ユナイトにはジョグレス進化が出ません。期待されていた方ごめんなさい。ジョグレス進化自体は大好きなんですけど……ストーリー構成的に入れる余裕がなくて(泣)

大丈夫、星流ごときが書かなくても、きっと公式様が大暴れさせてくれる。


3/12に第二章公開で3/17にネクストオーダー発売。忙しくなりそうです。スサノオモン、スサノオモンっ!