第155話 空を切り裂く雷鳴! 今持てる全ての力を | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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 接近する私達と、敵の視線がぶつかった。

 ヒポグリフォモンが口をかっと開き、赤く揺らぐ熱風を吐く。

「《ヒートウェーブ》!」

「《ウィンドオブペイン》!」

 迫るそれを烈風で散らす。風の扱いなら誰にも負けない。

 熱風がわずかに逆流し、ヒポグリフォモンがひるむ。素早くディアナモンが背中の矢を引き抜く。武器の柄をを弓代わりに、引き絞って放つ。

「《アロー・オブ・アルテミス》!」

 氷の矢はアイギオテュースモンが腕を振って弾いた。その指先が雷をまとう。腕を振り上げると、動きに沿って雷の杭が形成された。

 それが天に向かって打ち上がり、私の頭上に落下してくる。この速度なら問題ない。翼を動かし、回避する。

「シューツモン避けろ!」
「っ!?」

 ディアナモンの声。

 落下した杭が、方向を変えて向かってくる。半回転しながらぎりぎりで避ける。足をかすりそうになって、鳥肌が立った。

 ディアナモンが氷の矢で杭を射た。杭は甲高い音と共に四散した。

「《ライトニングパイル》だ。一度避けられても気を抜くな」

 私は頷いて、再び敵に目を向けた。

 アイギオテュースモンがヒポグリフォモンの首を二度叩いた。ヒポグリフォモンが羽ばたき、距離を詰めてくる。雷が今度はアイギオテュースモンの両腕を覆った。狙いはディアナモン。刃を構えて迎え撃つ。
「《ボルトブレイクノックダウン》」

「《クレセントハーケン》!」

 竜人のこぶしと神人の刃がぶつかる。

 よろめいたのはディアナモンの方だった。武器を握る手が震えている。雷の攻撃でしびれたのか。柄をしっかり握れていない。

 ユピテルモンの進化前の姿のはずなのに。ビーストスピリットと十二神族を相手にしても遅れをとらない。

 強い。

 でも、弱気になんてならない。ディアナモンと話して、誰かに任せず自分の全力で戦おうって決めたから。

 こちらに迫ってきた敵を、下に潜ってかわす。右手の爪を振り上げ、ヒポグリフォモンの腹を裂いた。

 ヒポグリフォモンが天を仰ぎ、痛みに声を上げる。アイギオテュースモンが揺さぶられ、急いで首にしがみついた。

 それを見て気づいた。アイギオテュースモンは空を飛べない。飛べるディアナモンに対抗するために、ヒポグリフォモンに乗ってきたんだ。

 だとすれば、両者を引き離しさえすれば。アイギオテュースモンは無力に落下する。

「ディアナモン! ヒポグリフォモンの動きを止められる?」

 私が呼びかけると、ディアナモンが声を上げて答えた。

「任せてくれ」

 アイギオテュースモンは再び雷の杭を生み出している。ディアナモンが膝を突き出した。両膝の三日月が銀色の光を帯びる。

「《グッドナイト・ムーン》!」

 光が細やかな粒子となってヒポグリフォモンに降り注ぐ。

 ヒポグリフォモンの翼の動きが鈍った。まぶたが重そうに垂れ、体が傾く。

 見逃さず、一気に距離を詰めた。雷の杭が左肩をかすめる。前の戦いの傷がある場所を。肩が熱くなってしびれる。構わずアイギオテュースモンに体当たった。加速の勢いを乗せて、ヒポグリフォモンの背から叩き落とす。

 落下する敵を急降下して追う。

 上空でディアナモンが武器を振る音とヒポグリフォモンの悲鳴が聞こえた。

 アイギオテュースモンが不安定な姿勢で杭を二本生み出す。放たれる前に、上から風をぶつけた。

「《ウィンドオブペイン》!」

 飛んできた杭を消し飛ばし、アイギオテュースモンを地面に打ちつける。盛大な土ぼこりが立った。

 私は翼を広げてスピードを殺した。

 今ので大分ダメージを与えられた。けれど、スキャンし終えるまで油断はできない。土ぼこりの向こうをじっと見つめる。


 反撃は思いがけない方向から飛んできた。

 左の翼に痛みが走った。力が入らずバランスを崩す。

 翼の中心を雷の杭が貫いていた。さっき消し飛ばしたはずなのに。

 上空で何かが弾けるのが目に入った。電気が寄り集まり、再度杭を形成している。右の翼だけを動かしても、体が思うように動かない。

「シューツモン!」

 ディアナモンの声。

 雷の杭が私に迫る。

 ディアナモンの武器が投げ込まれたのはその時だった。武器は避雷針のように攻撃を受けとめ、砕け散った。

 私はなんとか地面に不時着した。追ってきたディアナモンが横にしゃがんだ。

「……ごめんなさい。あなたの武器が」

 翼を押さえながら謝る。ディアナモンは首を横に振った。

パイルが再生するのは私にも想定外だった。元から敵に当たるまで止まらない攻撃だったが。昔のアイギオテュースモンより能力が上がっているようだ」

 ディアナモンの表情は険しかった。

「ヒポグリフォモンは倒したが、その傷では戦いは困難だな」

 私は歯を食いしばって、ディアナモンと目を合わせた。

「いけるわ。飛べなくても風はまだ使える」

 ディアナモンも、ケガがないとはいえ武器を失っている。私が抜ければ厳しい戦いになる。

 硬い地面を踏む音がした。アイギオテュースモンが立ち上がり、私達を見据えている。

 純平達はまだ戻ってこない。

 仲間が戻ってくるまで持ちこたえる?

 ううん、そんな人任せの戦法なんてやっていられない。倒す気で戦わないと殺られる。

 ディアナモンが敵に身構えながら話す。

 「アイギオテュースモンの力は胸のクリスタルから生まれる。丈夫な材質だが、あれを砕ければあるいは」

 私も視線を向ける。アイギオテュースモンの胸には青く光るダイヤ形のクリスタルが埋まっている。

 《ウィンドオブペイン》を正面から受けても傷のないクリスタル。それを砕く攻撃をするには。

 私の目が最後に残った武器を捉えた。




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《ライトニングパイル》の描写は悩みました。雷の杭を落とすって技なんですが、大量に落とすとケルビモンの《ヘブンズジャッジメント》と差異がつけられないのです……。

結局、一度命中すると次から必中になるとの設定だったので。基本単発で、高い誘導機能を持たせてみました。