第150話 200年の月日 光が示す旅の終着点! | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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 俺達の話は、結局ずいぶん長くなった。おっさんが酒を飲んでばかりなのに、「その説明じゃ分からん」「お前らが旅の途中で会ったのならそこから全部話せ」なんてツッコんできたからだ。

 話し終わると、おっさんはやっと酒瓶を地面に置いた。誰も手をつけなかったから、たき火は消えている。

「つまりだ。そこのノゾムって方は長いことデジタルワールドにいた可能性が高いんだな」

「ああ。デジモンの文字が読めるし、この世界の歴史も聞いたことがあるって。後は、白くて横に長い建物ってのがどこにあるか分かればいいんだけど」

 ノゾムの過去が分かれば、ユピテルモンが俺達に攻撃をしかけてくる理由も見えてくるかもしれない。もしかしたらスーリヤモンの謎も。

 おっさんが汚いげっぷをした。さっきから楽しそうな笑みが口元に張りついている。

「そうだなあ。お前達が探している建物、知っているかもしれんぞ」

「本当!?」

 ノゾムが身を乗り出した。おっさんがまあ座れ、という風に手を動かす。

「その前に、だ。歴史を知っていると言ったな。この城ができた頃のことはどれぐらい知っている」

「俺は、あんまり。ヒューマンデジモンとビーストデジモンの戦いを止めたのがルーチェモンで、この城はルーチェモンの部下のものだった、ってくらい」

 言ってから、ノゾムを見た。ノゾムは鼻の上にしわを寄せて思い出そうとしている。

「僕も、さっき文章を見たから思い出したって感じで……でもやっぱり、ここを知っているような気がする。前にも、この中庭を見たような」

 ノゾムにつられて、俺も荒れ果てた中庭を見回した。タイルや柱は残らず壊れているし、植物はほとんど枯れている。

「そんなもんか。ならオレが話してやろう」

 酒をもう一杯あおってから、おっさんは話し出した。




 この城の主だった奴のことは知っているな。「人にして獣」と呼ばれたディノビーモンだ。

 奴は呼び名の通り人型デジモンであり獣型デジモンだった。その外見のせいでずいぶん苦労したようだがな。外見による経験と強さをルーチェモンに見いだされた。戦争を終わらせたのはルーチェモンだとよく言われるが、年若い主君を支えていたのはディノビーモンだ。

 ルーチェモンの統治が始まってもなお、人型と獣型のいざこざはなくならなかった。苦労の多いディノビーモンの気晴らしは城の建築に向いたわけだ。思いついた設備を増築し続けて……おかげでこんなヘンテコな城が残ってる。ま、おかげで反乱軍が攻めてきた時には迷宮化した城に苦労させられたのさ。


 ん? ああそうだ。この城は攻撃されて滅びた。あそこの壁、派手にえぐれてるだろ? ありゃあエンシェントグレイモンがここの兵士ごと吹っ飛ばした跡だ。
 何でそんなことになったのか……昔の話だし、色んな奴の利害が絡んでたからはっきりとは分からん。だがこの世界のデジモン達はルーチェモンの支配に反抗し、20年もの月日を戦いに費やした。そしてとうとう、右腕だったディノビーモンをこの城で倒した。それは事実だ。

 ふふっ、どうした顔色が悪いぞ。そうか、この話のことも思い出したか。良かったじゃないか。


 そう急かすな。お前達が探している建物の話だろ。今から話すから黙って聞いとけ。

 この城を攻め落とした反乱軍は次にどこへ向かったか分かるな。そう、本拠地であるルーチェモンの城だ。通称「光の城」。その名の通り純白の石で造られ、月明かりの元でさえ輝いていたと言われている。

 おっ、察しがいいじゃないか。オレが言いたかったのはまさに光の城のことだ。白くて横に長いだなんてざっくりにもほどがある表現だが、このデジタルワールドにでかい建物はそうないからな。白い大きな建物と言ったらあれしかない。

 光の城は南東にある。お前達の足じゃ二日くらい歩くことになるだろうな。


 待て待て、話はまだ終わっちゃいない。座れ。いいから座れ。

 光の城に行くなら気をつけて行けよ。あそこには金目のもの目当てのデジモンがずいぶん行くからな。

 いや、そのデジモンに気をつけろって言うんじゃねえ。逆だよ。

 あそこに行ったデジモンはな、誰も帰ってこない。

 信也、そこの相棒みたいにもう少し怖がれ。かわいくねえな。本当の話だ。

 トラップが仕掛けられてるとか、亡霊に襲われるとか言われている。実際、ここに来た遺跡荒らしがそのまま光の城に行くのを見るが、戻ってきたのは見たことがない。

 お前達も亡霊にとり殺されないようにするんだな。




「ったく、オチが怪談話かよ」

 俺はため息をついた。あいにく、俺はそういうのを素直に怖がるほどガキじゃない。

 ノゾムはそういうのは苦手らしかった。さっきから表情が硬いし、いつもに増して無口だ。

「とにかく、一応ありがとう。お化けが出るんだか何だか知らないけど、俺達は光の城に行く」

 お礼だけは言って、さっさと立ち上がる。

「もう行こうぜ」

「……一つ、聞きたいことがある」

 俺が声をかけても、ノゾムは座ったままだった。ゆっくり言葉を選びながら、おっさんを見る。

 それを聞いて、おっさんは喉を鳴らして笑った。

「ノゾムは気づいたみたいだな」

 何を?

 俺は立ったまま、ノゾムを見下ろす。ノゾムは息苦しそうに言葉を押し出した。

「あの城には、光の城には、もうデジモンは住んでないんだね」

 そう言えば、おっさんは光の城がどうなったのか話していなかった。反乱軍はこの城の後、光の城を攻めた。ここでさえ廃墟になっているのに、本拠地が無事でいるはずがない。

 おっさんがノゾムに向かって身を乗り出した。心の底から嬉しそうに答える。

「大正解だ。光の城にデジモンが住んでいたのは200年前まで。今じゃデジモンも寄りつかない残骸だ。『白くて横に長い建物に住んでいて、そこにいたデジモンに文字を習った』? ノゾムは何でそんな記憶を持ってるんだろうな?」

 おっさんはもう遠慮しなかった。豪快な笑い声が中庭に響き渡った。

 俺とノゾムは、何も言い返せなかった。今言われたことを飲みこむこともできていなかった。

 きっと光の城に行けば最後のピースが手に入る。でもそれで見えてくる過去は、11年なんて月日じゃ済みそうにない。そんな予感がした。




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爆弾を投下した所で、150話到達です。お待たせいたしました。過去話を圧縮するのが思いのほか大変で……これ詳細に語りだすとそれだけで中編ができあがってしまうのです(汗)


いよいよ次回は座談会! 200話には到達しない(予定な)ので、これが最後の座談会になります。(本編終了後の座談会は……迷ってますが多分やりません)

毎度のごとくにぎやかなことになりそうです。どうぞお楽しみに。


(追記:祝エンシェントグレイモン公式図鑑に追加。古代十闘士で唯一ハブられ、もとい忘れられていたので、いつ気づいてもらえるのかな~と思っていたのです。よかった(^-^))