〔35〕対立! 勇気VS炎 | 星流の二番目のたな

星流の二番目のたな

デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 森の中の空き地。大輔達はたき火を囲み、事情を説明している。

 話を一通り聞き終えて、拓也は頭の後ろで手を組んだ。

「ふうん、パートナーデジモンがいる世界か。そっちの世界には、大輔やヒカリみたいにパートナーのいる子どもがたくさんいるんだな」

「たくさんってほどじゃないけど……まあ十闘士よりはずっと多いな」

 大輔が会っただけでも十人は軽く超えるし、世界中にはパートナーのいる子どもが何人もいると聞いている。パートナーのいる子どもは珍しいが、十闘士に比べればそう少なくもない。

 拓也とヒカリを観察していたテイルモンが、口を開いた。

「大輔から話は聞いていたが、本当にデジモンに進化する人間がいたとは。デジタルワールドでは人間もデータ化されるから、そういう事が可能になるんだろうか」

「多分そうね……進化の仕組みを説明しろと言われても、難しいんだけど。私達も進化は感覚的にやっていることだし。私達からすれば、大輔とブイモンの関係の方が不思議よ。私達はスピリットのデータを自分に取り込んで進化するけど。どうして大輔やヒカリちゃんの気持ちが、ブイモンやテイルモンの進化に結びつくの? そっちの方がずっと変よ」

 泉が考えながら答えた。テイルモンはなるほど、と頷いて、ブイモンはうーんと眉間にしわを寄せる。

「変って言われても。俺と大輔は出会った時からつながってるんだ。だから大輔の心が俺の力になるのは当たり前で……あーもう、言葉でなんか説明できないよ! とにかくそうったらそうなんだ!」

 ブイモンは頭を抱えて首をぶんぶん振って、考えるのを放棄した。

 そんなブイモンを見て、ヒカリがふふっと笑う。

「つまり、私達も泉さん達も、お互い変だってことね」

「本当。私達、変同士ね」

 泉も肩をすくめて笑った。

「ねえ、ヒカリちゃんも私と同じ5年生なんでしょ? さんづけなんてしなくていいわよ」

「そう? じゃあ、泉ちゃん、でいい?」

「うん!」

 女子二人はすっかり打ち解けあって、前からの友達のように楽しそうに話している。


 一方で、前から知っている大輔と拓也の間には、微妙な距離感が生まれていた。

「そういう事情なら、何で最初から言ってくれなかったんだよ」

 拓也の不満に、大輔は困って頭を掻いた。

「それは……ほら、デジタルワールドに来たばかりの拓也達を不安がらせたらまずいな、って思ったから。ここが俺の知ってるデジタルワールドと違う、とか、仲間と通信ができない、とか言ったら安心させられないだろ? 友樹とか、けっこうビビってたし」

 友樹の名前が出て、拓也の表情がまた暗くなる。

「ね、ねえ、大輔達はこれからどうするの? 私達はまた友樹達を探しに行くけど、一緒に来る?」

 重い空気を壊そうと、泉が声を上げた。ヒカリがそうね、と頷く。

「私達はこっちの世界のことよく分からないし。一緒に旅するのもいいかも」

「本当に俺達とでいいのかよ? 大輔達は世界の混ざり合いを止めるってダイジな役目があるんだろ」

 拓也がつっけんどんに遮る。その言い方に、大輔も顔をしかめた。

「だけど、奇跡のデジメンタルと紋章がこの世界のどこにあるか分からないんだ。光子郎さんの話じゃ、タグもかなり近づかないと反応しないっていうし。だから、デジメンタルと紋章が見つかるまでは一緒に旅をした方が」

「やっぱりお前はお前の世界の方が大事なんだな! 輝二や友樹や純平を探す気はないのかよ!」

「そういうわけじゃない!」

 拓也に対して、大輔も声を荒げる。

「さっきも言っただろ? 俺達がこっちの世界にいること自体、世界の混ざり合いを速める原因になる。だから俺達は急いで探し物を見つけて、こっちの世界から離れなきゃいけないんだ!」

「だったらさっさと探していなくなれよ! 俺達がどうなろうと、お前らには関係ないもんな!」

「違う! 俺だって、できれば友樹達を一緒に探したい! ボコモンとネーモンを倒した犯人を見つけ出したい! でも時間がないんだ!」

「結局そうなるんなら、最初から俺達になんか関わってこなきゃよかったのに」

 拓也が吐き出すように言った。

「大輔が来なければ、俺はここに来てすぐにスピリットを手に入れられたんだ。別行動しようって決めた時も、大輔がいるなら大丈夫だろうと思ったから……。なのに、お前は肝心な時に友樹達のそばにいてやらなかった! 俺、お前のこと、信頼してたのに、中途半端に放り出してくのかよ!」

「俺は、そんなつもりじゃ」

 自分でも言いたいことが分からなくなって、大輔は口ごもった。確かに拓也達は、普通と違う大輔を信じて、頼ってくれた。その気持ちに応えたいと、今でも思っている。自分がこの世界に留まるリスクさえなければ、全力で。

 デジメンタルと紋章さえ見つかればそれでいいのか? 拓也や泉を見捨てて帰れるのか? 世界の異変さえ正せれば、異世界の仲間なんてどうでもいいのか?

 大輔は答えを出すことができなくなっていた。


「ねえ、そこまでにしましょう」

 怒鳴り合いが途切れたところで、泉が間に入った。ヒカリもうなずく。

「お互いに、探し物のために旅をしなきゃならないのは同じなんだし」

 テイルモンが冷静に提案する。

「ひとまず問題は置いておいて、協力して探し物をしたらどうだろう。デジメンタルと紋章が見つかる前に拓也達の仲間を見つけられるかもしれない。私達の探し物が見つかるまでに、私達がどうするか考えよう」

 大輔と拓也は、渋々賛成した。問題の先送りにしかならないが、ここで解決するには冷静さも情報も足りていなかった。

「なあ、今日はもう休もうぜ。明日から、また一日中移動することになるんだから」

 ブイモンが大きなあくびをする。

「それなら、俺が最初に見張りをするよ。順番に起こすから」

 そう言って、拓也がたき火のそばに残る。それ以外の五人は、それぞれの場所で横になり、不安で浅い眠りについた。




◇◆◇◆◇◆




実はなかったヒカリによるちゃんづけ。選ばれし子どもの女子の中では、最後まで最年少でしたから、誰に対してもさんづけだったんですよね。(クラスメイトにちゃんづけしてるシーンとかあったかな……? あったらすみません)


大輔と拓也は険悪ムードです。大輔は歴代主人公一、悩まないキャラなので、大輔でも悩みそうな問題を放り込んでみました。時には大輔だって悩めばいいと思う。