第140話 光の闘士復活! そして冷気VS冷気 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

「これ、返すよ」

 デジヴァイスを手に取り、輝二に差し出す。

 操作するまでもなく、光のスピリットがスキャナから実体化し、輝二の元へ飛んだ。

 輝二が手を伸ばしかけ、止まる。

「でもこれを失ったら、輝一のダブルスピリットが保てなくなる」

 俺は自分のデジヴァイスを見下ろした。画面に「土」に似た文字が浮かんでいる。

「心配いらない。グロットモンが――土のスピリットが代わりに補助してくれる」
 信也が置き去りにしていったのを、俺が預かっていた。グロットモンなりに、そばにいながら信也を支えられなかった負い目を感じているのかもしれない。せめて、俺のダブルスピリットを支えようということか。

 輝二が安心して微笑んだ。

「それなら、遠慮はいらないな」

 輝二の取り出したデジヴァイスに、二つのスピリットが吸い込まれた。

 そばに立っている馬デジモンに、輝二が声をかける。

「ユニモン、下がってろ。お前の主について聞きだすのは、戦いが終わってからだ」

「……分かってます。絶対に負けないでくださいよ」

 ユニモンは硬い声で答えて、遠くに駆け去った。

 それを見届けてから、アポロモンに向き直る。

「やはり逃げおおせていましたか」

 無表情のアポロモンの言葉に、輝二が頷く。

「お前には聞きたいことがある。だがその前に、俺の兄や仲間を傷つけた借りを返させてもらう」

「本物のスピリットでの進化は久しぶりでしょう。勘の戻らない状態で私に勝てると?」

 アポロモンに聞かれ、輝二はにやりと笑った。

「勘なら戦ってるうちに戻るさ」

 輝二の左手に一輪のデジコードが浮かんだ。




―――




 マンモンが長い鼻を僕達に伸ばす。

「《スノーボンバー》!」

 鼻先から白い弾丸が吹き出す。とっさに背中のランチャーを向けた。

「《アイスプラント》!」

 ロープのついた銛が飛び、鼻を縛り上げる。雪玉を吐けなくなり、マンモンが苦しげによろめいた。

 その隙を逃さず、上空にいたシューツモンが爪に赤い風をまとう。舞い降りる勢いで、マンモンを切り裂く。

「《ギルガメッシュスライサー》!」

 急接近したシューツモンを、マンモンが鼻で強引に打ち払った。

「うっ!」

「シューツモン!」

 思いがけない反撃に、シューツモンの体勢が崩れ、落ちてくる。

 それをマンモンの牙が捉えた。

「《タスクストライクス》!」

 体重を乗せて、シューツモンをストーブの壁に叩きつける。

「きゃ、あっ」

 シューツモンが短く悲鳴を上げて、ぐったりと動かなくなった。

「よくも、《アイスプラント》!」

 僕は再度銛を打ち出し、ロープの端をつかんだ。マンモンの牙に縛り付け、シューツモンから引き離す。

 シューツモンは力なく地面に落ち、ひとりでに進化が解けた。

 マンモンは勝ち誇ったように両前足を掲げた。顔を振ると、絡みついていたロープがほどけた。

 次のターゲットを僕に定め、突進してくる。

「くっ!」

 僕は牙を両手でつかみ、それを抑えこんだ。双方が体中に力を込め、競り合う。

「《スノーボンバー》!」

 雪と冷気が僕の頭の上に降り注いだ。空気を凍らせ、毛は硬くこわばっていく。手足の感覚が消えていく。

 でも。

 僕は両腕で牙をつかみ上げた。マンモンの巨体が少しずつ浮き上がっていく。

「僕は、氷の闘士だ。ダブルスピリットなんだ。チャックモンの真似だけしてる相手に、負けるわけない!」

 マンモンを道の向こうに投げ飛ばす。冷気をぶちまけながら、横滑りになる。溶けかけていた雪が氷の道になった。

 自分の冷気を使うまでもない。敵が作った道を駆ける。

「《ロードオブグローリー》!」

 マンモンの体を二本の斧が切り裂いた。胴体にデジコードが浮かぶ。


「正義を乱す存在を、このデジヴァイスが氷のように固い決意で浄化する! デジコード・スキャン!」


 マンモンは消え、デジタマがどこかへ飛んでいく。

 ライヒモン達の様子も気になるけど、泉さんの方が心配だ。気を失ったままの泉さんに、僕は急いで駆け寄った。




―――




「スピリット・エボリューション!」

「ヴォルフモン!」


 デジコードが消え、光の闘士が姿を現した。テイルモンの城でヴォルフモンは見たし、話もした。でも、半透明の姿ではなく、スピリットに宿った人格でもなく、実体を持った輝二ヴォルフモンが目の前にいる。

 膝をついたままの俺に、ヴォルフモンが振り向いた。

「立てるか?」

「もちろん」

 輝二に負けるわけにはいかないから。心の中で付け足す。

 ヴォルフモンの横に並んだ俺を見て、アポロモンが無造作に動いた。落ちていた俺の槍を拾う。

 それを俺に投げてよこした。

 少し驚きながらそれを受け取る。

「仕切り直しです」

 言うやいなや、頭上の光球を輝かす。

「《ソルブラスター》!」

 熱気が地面に着弾。水が一瞬のうちに沸騰し、地面すらも溶けだす。

 が、その場に闘士の姿はない。

 俺は道の後方に跳びすさって回避。そしてヴォルフモンは。

「なるほど、ヴォルフモンの速度でもカウンターを仕掛ける隙がないか。さすが十二神族の一員だけあるな」

 そう言いながら、民家の屋根に軽々と着地していた。




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うーん、2サイド同時だとなかなか進まないですね。いつもの長くなる病の症状でもありますが。おかしいなー、1話で決着つく予定だったんだけどなー(苦笑)

双子って仲がいいわりに、アニメ内でコンビ組んで戦うことってないんですよ、意外に。一緒に戦う時でも、6人の中の2人って感じのだけで。コンビ組ませれば分かりやすく燃える展開になるだろうに、もったいないっ!

というわけで次回(こそ)は光闇の闘士両名をがっつり書きたいと思います。


さて、第140話まで来ましたか。これは、170は確実にいきますね。200は、さすがにいかないと思いたい。

145までいったら、また記念座談会の告知をしようかなと考え中です。ペースによってはちょうど3周年に当たりそう。……3年書いても終わらないってどういうことでしょうか(笑)



※27日にこっそり修正。マンモンが氷の闘士のデータを取り込んでたことすっかり忘れてたなんて、口が裂けても言えません!←