〔32〕扉の封印デジタルゲート | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

「分かりました、俺行ってきます!」

 話を聞くと、大輔はすぐさまチビモンを引っつかみ、駆け出していこうとした。その首根っこを京が捕まえる。

「ちょっと、手がかりもないのに行ってどうする気?」

「あ、そっか」

 チビモンもはっと気づいた顔になる。大輔は改めて光子郎に向き直った。

「デジメンタルはともかく、紋章ってどうやって探したらいいんですか?」

「紋章とタグは引き合うものなんです。紋章に近づけば、タグが光って教えてくれます」

 光子郎の端的な説明に、ふむふむと頷く。

「それから、大輔君の話から考えると、向こうのデジタルワールドはこちらより時間の流れが早いようです。大輔君のいた時より状況が悪化している恐れもある。それに、こちらとの通信もできません。チビモンと二人だけで行くのは危険すぎます」

「じゃあ、みんなで行く?」

 ヒカリの提案には伊織が反対する。

「それだと、こっちで何かあった時に先輩達に任せきりになってしまいます。敵の正体が分からない以上、通常の進化とアーマー体の両方で備えるべきです」

「それなら2チームに別れよう。ここに残るチームと、大輔君と一緒に行くチームと」

 タケルが言って、みんながお互いを見回した。

 最初に京が手を上げた。

「私はここに残ることにする。光子郎さんと一緒に、世界の事とか敵の事とか調べてみる」

「僕も残るよ」

 続いてタケル。

「もし敵が暗黒系デジモンだったら、エンジェモンの力が必要になる。大輔君の見た未来が現実になるとしたら、ここに残って対抗しないと。問題は、敵が向こうのデジタルワールドに出た場合だけど」

 タケルから視線が向いて、ヒカリが頷いた。

「そういうことなら私とテイルモンが行くわ」

「紋章はなくても、一度進化できた。もし向こうで暗黒系デジモンが出たら、私が必ず相手をする」

 テイルモンも力強い口調で引き受けた。

 最後に伊織。

「海のデジモンを相手にするなら、サブマリモンが必要ですよね。こちらは丈さんに任せて僕は……」


「いえ、伊織君とアルマジモンはこちらに残ってください」

 光子郎が口を挟んできた。

「どうしてですか?」

「お台場が戦場になる可能性を考えてみたんです。人的被害を抑えるためにも、立地的にも、海のデジモンは多い方がいいと思うんです」

「じゃあ、俺とヒカリちゃんだけで、向こうに?」

「ええ、あと……」

 そこで珍しく、光子郎が口ごもった。

「実はもう一つ、お話しすることがあるんです。向こうのデジタルワールドに通じるゲートなんですが、大輔君が戻ってきた後、閉じてしまったんです」

「え、じゃあ、しぶやえきのホームは?」

 チビモンの問いに光子郎が首を横に振る。

「消滅しています。恐らく、敵がつぶしたのでしょう」

「ここのパソコンからゲートを開くことはできないんですか? いつもみたいに」

 京の問いには頷く。

「僕もそれを考えているんです。ここから、敵の閉じたゲートをこじ開ける必要がある。そのために、紋章の力を使いたいんです」

「でも、俺の紋章は向こうに」

「状況を逆に利用するんです。タグと紋章は引き合う。その力で道を作るんです。ただ、引き合う力だけでは足りない。だからもう一つ残っている紋章を使って後押しできないかと」

「待ってください。残っている紋章って」

 タケルが渋い表情になった。光子郎もためらいながら認める。

「ええ、一乗寺賢君の優しさの紋章です。閉じたゲートを破るには、彼に協力してもらう必要があります」

「よりによって……」

 伊織も眉をしかめた。




 一乗寺の学校や家は、ずいぶんメディアで取り上げられていたのですぐに分かった。自分の学校が終わってすぐに電車に乗れば、通学路で待ち伏せるのも難しくなかった。

「よっ」

 片手を上げた大輔に、一乗寺は軽く身構えた。

 とはいえ、大輔の話の内容は予想していたものとは全く違ったことだろう。

 河原で水の流れを見ながら、大輔は事情を説明した。

「――つまり、君達が別のデジタルワールドに行く際に、隣で紋章を使って後押ししてほしいという事かい?」

「ああ。頼めるか?」

「僕には君達の頼みを断るなんてできない。それが世界の行く末に関わるものならなおさらだ」

「ん、そっか。じゃあ、連絡先教えといてくれるか? 日時が決まったらメール送るから」

 お互いにD-ターミナルを出しアドレスを交換する。

 そういえば初めて拓也に会った時、拓也はD-ターミナルを知らなかった。でも同じ渋谷駅で出会った。あの時から、少しずつ世界は重なりだしていたんだろう。

「それじゃ、僕はこれで」

「ああ、じゃあな」

 帰宅する一乗寺を見送る。大輔のかばんからチビモンが顔を出した。ん? と不思議そうになって、辺りの臭いをかぎ始める。

「どうした、チビモン?」

「だいすけ、いちじょうじからワームモンみたいなにおいがしたよ。それもさいきんの」

「え?」

 顔を上げた時には、もう一乗寺の姿は小さくなっていた。




◇◆◇◆◇◆




ちょっと強引な論理になってしまった気もしますが。

だってこうしないと賢ちゃんがずっとハブられる羽目になっちゃうじゃないですか!