〔24〕本気の秘技ボコモンネーモン | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 拓也、純平、泉、友樹の1班は階段を上り、ガラス張りの廊下を進んでいた。ガラス越しに1階の作業工程が見下ろせる。作業するスタンガンのようなクワガタデジモンと、それをこん棒で指揮する緑の小柄な人型デジモン。ミノモンによれば、前者がコクワモン、後者がゴブリモンだ。他にデジモンは見当たらない。

「なあ、この工場にハグルモンはいないのか?」

 純平が聞くと、ミノモンは小首を傾げた。

「ハグルモンなんて働いてないミノ」

「でも、ここから製品を運んでるっていうトレイルモンから聞いたの。この工場でハグルモンを見たって」

 泉が口添えすると、ミノモンが左右に揺れた。

「それは僕にも分からないミノ。多分勘違いミノ」

「トレイルモンが間違えたのかな?」

 友樹が不安げに眉を下げた。拓也も黙って腕を組む。自分がトレイルモンのワームに聞いた時は、自信満々に答えてもらったのだが。トレイルモンがいい加減なのも事実だ。

「じゃあさ、ケルベロモンは見なかったか?」

「知らないミノ」

「そっか。参ったな」

 念のため出した名前も空振りで、拓也は頬を掻いた。

「他に質問がなければ、次の場所に移動するミノ」

 ミノモンの先導で、再び歩き始める。拓也も考え込みながら、歩き出そうとした。


「拓也」


 小声で呼ばれて、振り返る。

 廊下の奥、「従業員以外立ち入り禁止」と書かれた看板の向こうに、濃紺のバンダナがのぞいていた。

 輝二?

 声に出さずつぶやいた。一度ミノモン達の様子をうかがう。拓也が来ていないのにも気づかず、歩いていく。その隙に、拓也は無音の早足で廊下を戻った。

 従業員区画は消灯されていた。薄暗い廊下の角を曲がると、すぐの壁に寄りかかっているのを見つけた。

「なんだ、輝二も来てたのか」

 小声で聞くと、あちらも小さな動きで頷く。

「この工場にスピリットがあると聞いたからな」

「え、そうなのか!?」

「お前達は違うのか」

「俺達は、ケルベロモンとハグルモンを追ってきたんだ。もうすぐスキャンできる、って所で逃げられちゃってさ」

 拓也は工場に来た経緯を簡単に説明した。

「大輔達は別ルートで探ってくれてる。後で合流して、情報を突き合わせる予定なんだ」

「大輔か」

 暗がりでも、顔をしかめたのが分かった。拓也も説明を止める。

「どうかしたのか」

「このまま本宮大輔についていったら、お前は永遠にスピリットを手に入れられない」

 思いがけない言葉に、拓也は一瞬言葉に詰まる。

「なっ、いきなり何言いだすんだよ。輝二もさっき、『この工場にスピリットがある』って言ったじゃないか。それが俺のかも」

「違う。本来お前が得るはずだったスピリットは、目覚めの時を奪われたからだ。大輔によって」

「そんな、大輔はそんな事する奴じゃない! 輝二は一緒に旅をしてないから知らないだけだ。他人の進化を妨害するような真似、するわけが」

「本当に自信を持って言えるのか?」

 畳みかけられ、言葉に詰まる。大輔が自分達と違うのは事実だ。隠し事をしているのも間違いないだろうし。だが、どうしても拓也には、表裏のない大輔を疑えなかった。

「って、だいたい、どこからそんな情報持ってきたんだよ!」

 思わず食って掛かるような口調になった。それをなだめるように、冷静な声で返される。

「俺達をデジタルワールドに呼んだ声の主。そいつが教えてくれた。『本宮大輔という子どもを呼んだ覚えはない』『炎の街にはスピリットが二つあったはずだ』って」

「……俺は聞いてねえぞ」

「大輔に聞かれたくないからかもな」

 拓也にはもう、反論の言葉もなかった。

「おーい、拓也ー! どこ行ったんだー!」

 通路の向こうから、純平の声がする。拓也がいなくなったのに気付いたようだ。

 一緒に来るか? と目で聞くと、首を横に振られた。

「俺は俺で、この工場を探ってみる。他のみんなには黙っててくれ」

 それだけ言って、廊下の奥に歩き去った。

 拓也が従業員区画から出ると、すぐに純平やミノモン達に出くわした。

「ははっ、悪い、トイレ探してたら迷子になっちゃってさ」

 拓也のとっさの言い訳に、誰も疑問を持たなかった。




 一方の、大輔+デジモン三人。

 は、敵に囲まれていた。

 ハグルモン約二十体に、前も後ろも封鎖されてしまっている。案内のミノモンは、ハグルモンが来た途端「きゃ~!」と叫んで逃げ去ってしまった。

「確かにハグルモン探しには来たけど! こんなにいるなんて聞いてねえぞ!」

 大輔が若干うろたえながらも、デジヴァイスを取り出す。ハグルモンなら成長期だからアーマー体の方が有利。だが、ここまで囲まれてると袋叩きの可能性大である。

 そこにボコモンが、いつになく真剣な顔で割り込んだ。

「いよいよ、わしらの本気を見せる時が来たようじゃな、ネーモン」

「え!?」

 いきなり話を振られて、驚くネーモン。だが、周りを見回して納得する。

「あー、そうみたいだね」

「ボコモンとネーモンも戦えるのか!?」

 ブイモンが期待に目を輝かせる。今まで二人が戦ってる姿は見てないが、案外強いのかもしれない!

 ボコモンが姿勢を低くする。

「行くぞ!」

「うん~!」

 ボコモンとネーモンが、一斉に敵に向かって走る。

 ハグルモン同士の隙間を素早く潜り抜け、敵の包囲網の外へ!

「《逃げ足ダッシュ》!」 

「《逃げ足猛ダッシュ》!」

 ライドラモンもかくやのスピードで、二人の姿が小さくなっていく。ちなみにボコモンの方が速い。

「大輔はーん、後はたのんだぞい~!」

 大輔とブイモンは口をあんぐり開けて、後ろ姿を見送った。

 それが廊下の角に消えた所で我に返り、大輔絶叫。

「仲間置いて逃げるか、普通ーーーっ!?」




◇◆◇◆◇◆




いっぺん出してみたかったんです。ボコモンの《逃げ足猛ダッシュ》とネーモンの《逃げ足ダッシュ》。これ技か。技なのか。


デジコレは最後のバンチョーイベント終了。EDはイグドラシルに特攻かけようとするBレオモンに他のバンチョーが反対したり激励したりするって感じだったんですけど……もう他のバンチョーがBレオモンに死亡フラグがすがす立ててるようにしか見えなくて、途中から笑い転げてました(苦笑)シリアスなシーンだった、はずなんですが……(笑)