第124話 結界跡を目指せ! あっさりとした告白 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 倉庫に足を踏み入れると、中の視線が一斉に拓也に向いた。バーガモンにエビバーガモン、とりからボールモン。あの村の住人に混ざって、ノヘモンやリボルモンなどのデジモンもいる。

 その中でも、真っ先に四体が駆け寄ってきた。

「拓也? 本当に本物!?」

「私達を助けに来てくれたの?」

 バーガモン二体にエビバーガモン二体。残りの兄弟も無事だったようだ。

 拓也は帽子を脱いで軽く絞った。

「まあな、って言いたい所だけど、今どういう状況なんだ?」

 質問し返すと、六兄弟が口々に答えてくれた。

「雨があまりに降りやまないから、みんなでここに避難してきたんだ」

「家に帰れなくなったお客さん達も一緒にね」

「みんなで食料を分け合ってるんだけど、雨もやまないし、いつまでもつか分かんないの」

「強いデジモンを集めて、結界の跡を調べに行こうって話も出たんだけど」

「雨で、谷にあった結界の建物は水没しちゃって」

「湖みたいになってるんだよ! 誰も底まで潜れないんだ」

「この辺りは普段水が少ないから、水棲型のデジモンもいないし」

「ちょっ、ストップ!」

 拓也が両手を突き出して、六兄弟が止まった。

「その話、長いか?」

 六兄弟はうーんと考えてから一斉に。

「長い!」

「分かった。じゃあ輝二達来させるからまとめて全員に話してくれ」

 即決。二度同じ話をさせるのは面倒だし、バーガモン達を見つけた事も伝えないといけない。

「輝二、今からゲートを開ける。こっち来てくれ」

 練習の時のようにデジヴァイスを操作し、扉を呼び出す。光があふれて、扉のあった場所に輝二とユニモンが現れる。

 その場にいたデジモン達が唖然としてその光景に見入っていた。特に六兄弟は目も真ん丸、口もぱっくり開いている。

「すごい! 今の何!?」

「もう一回やって!」

 結局、こっちが先に話をする羽目になった。


 腰を落ち着けてから、改めて話を聞く。まとめるとこうだ。

 この雷のエリアの結界は、谷底にあった。しかし、結界が壊れてから雨が降り続き、谷は深い湖と化してしまった。この辺りには水棲型のデジモンがいないため、谷底の結界跡までたどり着ける者がいない。そのため結界を復活させる方法も分からず、この倉庫にこもっている。食料が尽きるのも時間の問題だ、と。

 話を聞き終わって、拓也は腕を組んだ。

「水中か……さすがに進化しても無理だよな」

「話の様子だと、30メートルはあるだろう。潜れても、息がもたない。結界跡に空気が残ってるかも分からないし」

 輝二の表情も冴えない。そんな場所まで潜れるのは、水の闘士か、空気を操れる風の闘士か。炎と光には不利な話だ。

 バーガモン達も、自分達の期待が無茶だと気付いたのか、黙ってうつむいてしまっている。


 ぷひゅ~。

 雰囲気を壊す気の抜ける音。

 ユニモンの深い深い鼻息であった。

「そういう事なら、食事にしませんか? 雨宿りしてた家に食料あまりなくて。僕、おなかすいてるんです」

 聞いた全員が目をひんいた。

「おい、今の話聞いてたか?」

 拓也がどうにか声を絞り出す。ユニモンは小首を傾げた。バイザーの赤い光がまたたく。

「もちろんですよ。だから僕は今エネルギー不足だって言ってるんです。時空越えるだけで大分疲れました」

「あのな! 食料が足りてないのはみんな同じなんだぞ! それをこんな真面目な話してる時に!」

 拓也の声が大きくなる。バーガモン達が身を引いて、そっと顔を見合わせる。

 ユニモンが口を尖らせた。

「真面目な話してるから言ってるんじゃないですか。どう考えても僕のがんばりどころです」

「え?」

「ん?」

 拓也とユニモンが止まった。どうも話が噛みあっていない。

 二人が目を合わせたまま、静寂が数秒。

 ユニモンが、あ、と声を出した。

「言ってませんでしたっけ?」

「何を?」

 拓也が短く聞く。

「僕、水中でも息できるって。1000メートルくらい軽く潜れます」

「おい……それ早く言えよ!」

 拓也の叫びに、ユニモンがえへっと舌を出した。




「本当に潜れるんだな? 飯を食べたいからじゃなくて」

「ふぉんとうでふって」

 拓也の質問に、ユニモンがふごふご答える。目の前には六兄弟特製のハンバーガーが、軽く二十個積み上げられている。

 その一個をユニモンがくわえ、舌を駆使して行儀悪く頬張る。

「ふぇふふーんふぉんふぁふぁふぉふふぁいふぁ、ふぃんふぁいふぃふぁふんふぇふふぉ?」

「食べてから話せよ」

 輝二が呆れて言うと、ユニモンは一度頷いて、ハンバーガーを二個頬張った。そんなユニモンを、六兄弟が嬉しそうに見ている。多少行儀が悪くても、自分達が作ったものを食べてもらえるのは幸せらしい。

「拓也達は食べないの?」

 エビバーガモンに言われてようやく食べ始める。正直、ユニモンの食いっぷりだけでおなかいっぱいだ。

 二十三個のハンバーガーが消えた所で、やっとユニモンが息をついた。

「ごちそうさまでした。で、何の話でしたっけ?」

「お前が水中に潜れるって話だよ」

「昔、ネプトゥーンモン様――当時はまだシャウジンモンでしたが――を助けた時に、お礼に力をいただいたんです。超深海にある、あの人のお城まで潜れるようにと」

「超深海って、どれぐらいだ?」

「水深6000メートル」

 輝二の質問にあっさり答える。なるほど、谷底まで潜るなど造作もないだろう。

「ただ、水中と時空は移動するだけで疲れるんです。僕の種族としての本分は陸空ですから。おまけにお客さんを乗せてお城まで行くってなるとお客さんの呼吸も世話してあげなきゃいけないし」

「……お前また重要な事さらっと言わなかったか?」

 拓也が聞くと、ユニモンが、ん? あ! と気づいた。

「そうそう! 僕の背中に乗って水中行くこともできますよ? 一緒に来ます?」

「まず、お前ができる事を一通り教えてもらってからな」

 輝二が珍しく、疲れたため息をついた。

「すみません。もう何百年もネプトゥーンモン様と付き合ってたので、互いに出来る事は知り尽くしてて。改めて誰かに説明するって癖が抜けちゃってるんです」

 ユニモンは少々恐縮した。




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ユニモンの本領発揮その2。陸空、異世界に加えて水中もいけちゃう生き物です。

……なんかもうユニモンの形をした別の何かじゃないかって気が←


ちなみに食べてる時のユニモンは「本当ですって」「ネプトゥーンモン様の住まいは深海にあるんですよ?」と言っています(通訳)