第123話 拓也のエリア探索! 雨に打たれた村 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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「準備はいいか?」

 輝二の言葉に、拓也がうなずいた。

 今二人は、家の端と端に離れて立っている。それぞれの右手にはデジヴァイス。

 ユニモンはその中間で、床に伏せて――否、行儀悪く足を延ばしてくつろいで――二人をながめている。

 拓也がデジヴァイスを地面と水平にし、腕を伸ばした。

「ゲートオープン!」

 声とともに、親指でボタンを押す。スキャナから普段より細いデジコードが流れ出す。

 拓也の前でデジコードが素早くつむがれ、人間に見合った大きさの、両開きの白い扉が現れる。
 拓也側の扉が作られると同時に、輝二のデジヴァイスからもデジコードが流れ出す。輝二が何か操作するでもなく、拓也側に一歩遅れて、同じ白い扉が出来上がる。

 二つの扉が、同時に強い光を放つ。目を開けていられないほどの光に、拓也の体の輪郭がぼやける。

 その光が収まった時には、白い一対の扉は跡形もなかった。代わりに、輝二の目の前に拓也の姿が。

「お~」

 ユニモンが伏せたまま、感心しているのか適当なのかよく分からない声を出した。

 輝二は満足そうな顔でデジヴァイスをしまった。

「成功だな」

「ああ……」

 一方の拓也は、自分のデジヴァイスを見てげんなりした表情。その顔にはありありと「成功しなくてよかったのに」と書いてある。

 その肩を輝二が叩く。

「この大雨の中動ける手段が見つかったんだ。駄々をこねている場合じゃない」

「別に、駄々こねてるつもりはねえよ」

 拓也が唇を尖らせる。

 ユニモンがわざとらしいため息をついた。

「あ~残念です。僕が大雨の中でも走れるデジモンだったら、代わりに行ってあげられるんですけど」

「そうだな。俺も雨を吹き飛ばせる属性を持っていれば、拓也と一緒に行けたんだが。すまない」

 いけしゃあしゃあと言う二人を指さし、とうとう拓也が叫んだ。

「そんなこと言って! お前ら代わる気なんて全っ然ないだろ!」
「ない」

「ないですね」

 返事は簡潔かつ容赦なかった。




 ため息をつきながらも、拓也は素早く準備を済ませた。乾いた服を羽織り、改めてデジヴァイスを握る。

 慣れた手つきで左手のデジコードを読み取る。


「セミスピリット・エボリューション!」

「フレイモン!」


 フレイモンが戸口に立つと、輝二が石の戸に手をかけ、体重をかけて引いた。跳ねた雨が勢いよくフレイモンの足に降りかかる。が、その足を濡らす前に、フレイモンが発する熱気で蒸発していく。

 エリア探索に拓也が選ばれた理由はこれだった。雨に打たれる事がなければ、体力の消耗も抑えられる。

「じゃ、行ってくる。結界のありかかエリアの出口か、何か見つけたら連絡する」

「頼む」

 輝二の一言を聞いてから、嵐の中に駆け出した。フレイモンの周りで蒸気が吹き上がり、雷が空気を震わせる。熱で一瞬乾いた足跡は、再び叩きつける雨にかき消されていく。雨粒の大きさは大して変わっていない。それでも、霧が初日より薄いのは救いだ。

 今のうちに何か見つけないとな。こぶしを握り直し、土を踏みしめ走った。




 走りと歩きを織り交ぜながら、一時間ほど進んだ。霧の向こうに商店街のような街並みが見えた。

 そこに足を踏み入れた時、フレイモンは今いる場所に気づいた。

「ここ、バーガモンの村か?」

 垂れ下がる看板には見覚えがあった。木造の家が立ち並ぶ景色にも。拓也達が二年前(こちらでは十年前)に訪れて、ハンバーガー作りにいそしんだ懐かしい場所だ。

 しかし、連日の雨に打たれた家々は黒ずみ、崩れている所もある。看板は地面に落ちて土にまみれている。雷が鳴るたびに、どこかの建物のきしむ音。

 とてもデジモンが住んでいそうな様子はない。足元を泥水が流れていく。

 フレイモンは一度うつむいた後、目を上げ、大股で近くの店に踏み込んだ。

「誰かいないか!」

 声を張り上げるが、聞こえてくるのは雨漏りの音ばかり。会議でもしたのか、店のイスが円形に並べられたままだ。

 奥の厨房にも踏み込んでみる。足元の木が腐りかけていて、時々嫌な音を立てた。食料庫はきれいに空になっている。残っているのは買い置きのスパイスくらいである。

 開かないドアを蹴破ってみると寝室で、何故かまくらや布団のたぐいがなくなっていた。

 フレイモンは一通り見回った後、デジヴァイスで通信を取った。

 一通りの状況を聞いた輝二は、数秒黙って考えを伝えてきた。

『もしかしたら、バーガモン達はどこかに避難したのかもしれないな』

「それで、食料や布団がなくなってるって事か?」

『ああ。家がそんな状況じゃ住んでいられないだろう』

「確かにムリだな。でも、こんな雨の中どこに?」

『遠くない所に、避難場所があるんじゃないですか?』

 ユニモンも会話に加わってきた。

「避難場所か。分かった。村の近くをもう少し探してみる」

『俺達もゲートを開いて合流するか?』

「いや、いい。こっちは休めるような場所じゃないから」

 フレイモンは通信を切って、深呼吸する。そしてまた、豪雨の中に飛び出していった。


 そして十分と経たず、目的地は見つかった。

 窓から明かりの漏れる、石造りの建物だ。一階建てで、体育館くらいの広さがある。正面中央には分厚く大きな金属扉がある。倉庫か何からしい。

 扉に近寄ると、右下に通用口があった。

 それが開いて、デジモンが飛び出してきた。フレイモンに細長いものを突き付けてくる。

「誰だ! 何しにきた!」

 甲高い声がする。見ると、フレイモンより一回り小さなデジモンが二体。ごまのついたパンのような帽子に、肌色の体。まだ小柄なバーガモンだ。精一杯大声を出しているが、手は小さく震えている。よく見れば、こっちに向けているのは折れた木材だ。

 フレイモンはひとまず両手を上げた。

「俺は怪しい奴じゃないって。このエリアでデジモンを探してたんだ」

「そんなこと言って、僕達を捕まえる気だろ!」

 木材の切っ先が近づく。震える切っ先を向けられるのは、ちょっと違った意味で怖い。フレイモンは一歩下がった。

「違うよ、俺は人間だ。ちょっと待て」

 進化を解いて、拓也に戻る。バーガモン達が目を丸くした。

「拓也?」

「拓也だー!」

 途端に木材を捨てて、拓也に飛びついてきた。拓也、拓也と嬉しそうに跳ねている。一体は緊張が解けたのか、涙声になっている。

 拓也は一瞬ぽかんとした後、気づいた。

「もしかしてお前ら、とりからボールモンの兄弟か?」

「うん!」

 二体が揃って答えて、拓也から離れた。あの六兄弟のうち二体が進化したらしい。

「他の兄弟達も中にいるよ!」

「みんなここに避難してるんだ!」

 早く早く、と手を引かれて、拓也は倉庫の中に通された。




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お土産、早速役に立ちそうです。本当はこの話でそこまでやる予定だったんですけど、まあ星流のよくある長くなる、です。

ちなみに。

Q.見た目は扉なのにどうして開かないのか?

A.開いたらどうあがいてもどこ○もドアにしか見えなくなるから。

っていうしょうもない理由です。


あと、前から作ろう作ろうと思ってたんですが。

デジフロ公式サイトにあったマップを流用して、フロ02エリアマップを作ってみました。

「設定」テーマの記事で上げておきます。