第122話 満を持して帰還! 拓也達の見たデジタルワールド | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 一時的に異世界に飛ばされていた拓也達は、トロッコに乗って十闘士の世界へ戻ろうとしていた。一点の光もない空間に、レールだけが一直線に浮かびあがっている。何十分か何時間かも分からない間、二人は規則的な揺れに揺られ続けた。

 やがてレールの先に光が浮かぶ。トンネルを抜け出る時のように、その光がみるみる大きくなり、視界を覆う。

 そして、猛烈な雨が二人を襲った。

 嵐である。頭上には暗雲と金色の稲光いなびかり。周囲は一面の雨粒と霧。洪水が起きてもおかしくない豪雨だ。トロッコの速度もあいまって、雨の弾丸が容赦なく二人の顔に打ち付ける。息もできないほどで、たまらずトロッコの床に伏せた。

 次第にトロッコの速度は鈍り、完全に停止する。役目を果たしたトロッコは、雨に溶けるように消え失せた。拓也と輝二は嵐の中に取り残される。

「どうするんだよ! これ!」

 雨音に負けじと、拓也が声を張り上げる。もらった問題集を傘代わりに頭上に掲げているが、この嵐では役に立たない。むしろ問題集を覆っているビニール袋に穴が開きそうである。

 輝二も芯まで濡れながら叫び返す。

「とにかく! 雨をしのげる所を探そう!」

「ああ! このままじゃ! 体力けずられるだけだ!」

 大声で会話しつつ、辺りを見回す。が、滝のような雨の中で視界は効かない。

 拓也が口を開くと、雨粒がのどに飛び込んだ。

「ごほ、ったく、どっちに行けばいいんだよー!」

「僕は右ななめ30度の方向をおすすめしますよ」

「右か。俺には何も見えないが」

 そこまで言って、輝二の口が止まる。二人の首が勢いよく動く。

 いつの間にか、二人の間に馬のつらが割り込んでいる。

 拓也がその頭を勢いよくなでた。しぶきが飛び散る。

「ユニモン! お前、俺達を乗せてくれたユニモンだよな!」

「他に、こんな雨の中あなた方の所まで来るユニモンがいますか」 

 ユニモンが口をへの字に曲げた。それを見て輝二も表情を和らげる。

「無事でよかった。お前はこっちの世界に着いてたんだな」

「ええ。この辺りで時空のゆらぎを感じたので来てみたんです。ところで」

 ユニモンが濡れそぼったたてがみを気持ち悪そうに振る。

「話をするなら移動の後にしませんか? このままだと全員風邪をひいちゃいますよ」




 行き先を右ななめ30度に据え、豪雨の中を五分ほど歩く。雨に打たれ容赦なく体温を奪われていく、遅々とした移動。

 その末に着いたのは石造りの家が並ぶ村だった。家の一つに入った所で、ようやくまともに息を吸った。

 天井も壁も床も灰色の石で固められた、正方形の家だ。小さな窓はあるが、今は分厚い石で閉じられている。奥の暖炉で燃えている火だけが明かりだった。外で荒れる天気も、中ではほとんど聞こえない。住民は避難してしまったのか、拓也達以外に生き物はいなかった。

 ユニモンが入り口で体をゆすり、水を吹き飛ばした。早足に火のそばに寄る。

 拓也と輝二も上着を脱いで、入り口で絞る。この場には男しかいないからと、下着以外も全部絞った。

 部屋の隅からいすを持ってきて、服を暖炉のそばに干した。自分達も座って暖を取る。

 体が温まるまで、無言の時間が流れた。

「もう、戻ってこないんじゃないかと思いました」

 床に伏せたまま、ユニモンがつぶやいた。先程までの口の悪さと違い、心細さが透けている。

 揺れる火に目を向けたまま、輝二が静かに聞く。

「俺達がはぐれてから、こっちでは何日経った」

「六日です。毎日この天気なので身動きもとれず、一人で待っていました」

 拓也は顔をしかめた。ネプトゥーンモンの生死も分からない状況で、このデジモンは六日も自分達を待っていてくれたのだ。

「そうか。悪かったな」

「いえ。あなた方を落としてしまった僕も悪いんです」

 床にあごをつけたまま、ユニモンが首を横に振った。

 また沈黙が流れ、今度は拓也が口を開く。

「ここは俺達の、十闘士のデジタルワールドだよな。どの辺りなんだ?」

「僕も初めて来たのでよく分かりませんが、荒れた状況から考えると、結界の壊れたエリアの一つ。天気も含めて考えると雷のエリアではないでしょうか」

 ネプトゥーンモンから、十闘士の世界の現状は聞いていた。スピリットによる結界が破られたエリアは風、氷、雷、闇の四つ。雷雨からして雷で間違いないだろう。

「これからどうするんですか?」

 今度はユニモンから聞く。

 輝二が片手でデジヴァイスを操作する。

「輝一達と連絡が取れればいいんだが、天気のせいか距離のせいか、全然つながらない」

「ひょっとして、デジヴァイスが故障してるんじゃないか?」

「まさか。疑似だろうとデジヴァイスはデジヴァイスだ。大雨でダメになるような機械じゃない」

「そっちじゃなくてさ。ほら異世界で、お土産とか言ってデジヴァイスいじられただろ。それで壊れたんじゃないかって」

 輝二が黙って、デジヴァイスの上を指が動く。

「通信機能自体は生きてるし、疑似スピリットやデジモン解析も異常はない。もらったデータのせいじゃなさそうだ」

 それを聞いて、拓也は少しだけ残念に思った。

「となると、この天気を何とかするか、通信のできる場所まで移動するかですね」

 ユニモンが話をまとめる。拓也はうなって腕を組んだ。

「嵐を止めるなら結界を直しに行く。通信するならこのエリアを出る。どちらにしろ外がこれじゃあな……」

 黙り込んだ全員の耳に、嵐の吹き付ける音が微かに届いた。




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半月以上空きましたが、拓也輝二がatonementの世界から帰ってきましたっ! おみやげに問題集と、お互いのデジヴァイスのある場所に移動できる機能(ドラ○もんの四次元ポケットとスペアポケットみたいな?)をもらってきました。


雷のエリアは嵐が乱舞しています。最初は雷をドカンドカン落とそうかと思ったんですが、あまりにも危険なので嵐にしました。そのせいで水属性が入りましたが見逃してください←

更に、雨にともない問題集がダメになりそうだったので急きょビニール袋で防御。さすがに一発でダメにするわけにはいかないので(笑)

うーん、なんて(設定的に)面倒なエリアなんだ……。