第125話 濁水の谷底へ ユニモンの本領! | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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 小休憩を挟んだ後、一行は出発した。

 ビニール袋をかぶったバーガモン二体がフレイモンの前。

 ユニモンがフレイモンの右横。

 輝二がフレイモンの後ろ。

 雨で冷える体を暖められるとあって、フレイモンの周りに密集している。天候が天候のため、「歩きづらいんだけど……」とは言えないフレイモンであった。

 相変わらずの滝のような雨である。 雨音を引き裂く雷鳴が、ほぼ十秒おきに響き渡る。遠くで。近くで。さながら、大太鼓と小太鼓との大合奏である。時折、稲光と共に地面が揺れる。 

「あ! 見て見て! あれだよ!」

 バーガモンが前を指さして、精一杯怒鳴る。フレイモン達は、うつむき加減だった顔を上げた。

 以前は谷だった、との言葉通り、左右に長い湖が形成されていた。雨と霧で分かりづらいが、縦幅は50メートルほどだろうか。左右は霧の向こうに消えて、果ては見えない。

 茶色に濁った水面は、雨粒でひっきりなしに跳ねている。湖中に飢えたコイが密集しているように見えた。

 湖のふちまで行くと、白銀色の金属がタイルとして敷かれ、階段が湖の底へ伸びているのが分かった。

「この階段の先に! 結界の跡があるんだな!」

 輝二が叫ぶと、バーガモンが「そうだよ!」と叫び返す。

 それを聞いたフレイモンが進化を解いて、ユニモンにがなる。

「けっこう濁ってるけど! いけるか!?」

「階段をたどるくらいなら! 問題ありません!」

 答えて、直後ユニモンが咳き込む。叫ぶだけで体力を消耗しそうだ。

 ユニモンが身をかがめる。拓也と輝二がその背に乗り、再び立ち上がった。

「下がってください!」

 バーガモン達を遠ざけてから、ユニモンが集中する。赤い角が徐々に青白い光を帯びる。それがオーロラのようになびき、ユニモンと拓也達を取り囲んでいく。透き通った南の海みたいな色だな、と拓也は思った。光が頭上を通過すると、雨も届かなくなった。

 光の幕が全身を覆ったところで、ユニモンは小さく息を吐いた。

「これで水中でも呼吸できます」

「僕達は倉庫に戻ってるね!」

「気をつけて!」

 バーガモン二人が手を振る。


 ユニモンは助走をつけて、湖に飛び込んだ。

 瞬間、拓也は息を詰めた。呼吸ができる、と言われていても、反射的に息を止めてしまう。

 ユニモンが体の向きを変える。見渡す限りチョコレート色の濁り水だが、右には壁沿いの白い階段がぼんやりと見えている。ユニモンが足を動かすと、光の幕ごと移動し始めた。

 拓也の息が続かなくなって、一気に吐いた。のどに流れ込んでくるのは、少し湿った、空気。ようやく肩の力が抜けた。後ろで輝二も息を吐くのが聞こえた。

 視界のきかない中、唯一見える階段だけが、進んでいる証だった。白いタイルを伝い、底へと潜っていく。

 やがて、その白線が直角に曲がった。ユニモンの足が地面に着く。

 拓也の耳が微かな音を捉えた。

「なあ、ジジジって音しないか?」

 言われて輝二とユニモンも耳を澄ます。

「静電気みたいな音だな」

「この先から聞こえてくるようですね」

 ユニモンは慎重に歩を進めた。弾ける音が次第に近づいてくる。

 音の出所は、道の終わりにある無骨な建物だった。

 大小、材質も雑多な金属板で出来ていた。さびが進んでいるものもあり、さながら廃材である。それを、太い針金でつなぎ合わせて壁を作っている。全体に電気が通っているのかあちこちで火花が散り、それが音を立てていた。全体を捉えようと頭をめぐらすが、視界が悪く見通せない。しかし、建物自体が傾いているのは気のせいだろうか。

「道、間違えましたかね? ひいき目にもエリアを守る結界がある場所には見えないんですが」

 ユニモンが首を傾げると、拓也と輝二も渋い顔をする。

「道はたどってきたし、電気通ってるし、これでもブリッツモンのいた場所なんじゃないか?」
「あいつ、見栄を張るタイプではなさそうだしな」

「あー、純平のスピリットだしな」

「……そう言うと何だが」



「ハックシュン!」

「純平、風邪でもひいた?」

「い、いや、今誰かが俺のうわさしてたような」


 ユニモンが建物に近づくと、不意に視界が変わった。

 ひらけた。体育館ぐらいありそうな建物全体を、見通せるようになった。視界を覆っていた泥が消えたのだ。

 戸惑う人間二人に対し、ユニモンは平然と。

「ああ、大丈夫そうですね」

 と、あっさり光の幕を消した。馬上の二人が凍り付き、拓也が慌てて抗議する。

「お前! 何す、あ、空気、ある?」

 若干金属の臭いのする空気だが、呼吸できる。水中の浮遊感もない。ユニモンが鼻を鳴らした。

「ネプトゥーンモン様の城にあった僕の部屋と同じです。ここでは普通に息ができる。長年の感覚ですぐに分かりました」

 言ってから、無くしたものを思い出したのか黙り込む。拓也と輝二は何も言わずその背から降りた。

「でも、なんでここだけ空気があるんだ? 別にここ、前から水中だったわけじゃないだろ」

 拓也が周囲を見回す。この建物の周りだけ酸素がある。

 輝二はしばらく考えて、推測する。

「この電気が原因だろう。前に棒術教室の先輩が、学校でやった理科の実験について話していた。電気を使うと、水から酸素を作る事ができるって」

「じゃあ、ここに走ってる電気のおかげ?」

「多分な」

 中一の二人は、これでこの話を打ち切った。

 改めて建物に近づく。正面に、黒塗りのドアがある。そこだけは電流が走っていない。

 拓也がノブに手をかけると、きしみながら開いた。



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水の電気分解の話は、理科が中学レベル止まりの星流が書いている事なので……細かいツッコミは勘弁してください(汗)←

……さて、いい加減8/1を見据えないとヤバいぞ、私。