第103話 盲点からの襲撃! おのおのの戦場へ | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 マグナモンと話をしながら夕飯を食べなくて正解だった。でなきゃさっきの攻撃で吐いてたかもしれない。

 俺らしくない感想だけど、それくらい今の攻撃はヤバかった。

 だって見えないこぶしで背中をぶん殴られたんだぜ? おかげで俺は友樹に全力体当たりした。

「信也!?」

「俺のせいじゃねえっ……!」

 友樹の文句に、うなって答える。ただでさえ背中が痛いんだ、説明してる余裕なんかない。

 後ろを振り返る。俺を殴ったはずのこぶしはどこにも見当たらない。

「友樹、デジモンに姿を隠せる奴っているのか?」

「ええっと、いる。カメレモンってデジモン。でも大きいデジモンだし、僕達全員に気づかれずに近寄るなんて」

「だよな」

 木々の間に目をこらしながら、俺も友樹の言葉に賛成した。いくら話をしてたといっても、ケンカが始まりそうになってたといっても、俺達だって見張りをなまけてたわけじゃない。誰かがゆがみから落ちてくるとか、近寄ってくるとかすれば気づかないはずがないんだ。透明人間だって、歩けば足跡はつく。

 一方、マグナモンはさっきから立ったままだ。俺が吹っ飛ばされた後から、じっと動かない。さっきまでのケンカ腰は消えている。俺も耳をすましてみるけど、木や草の音以外何も聞こえない。


 前触れなく、マグナモンが顔を上げた。素早く跳んでその場から離れる。

 さっきまでマグナモンがいた場所を、一陣の風が駆け抜けた。

 この風、前にもあった。

 俺がそれを口に出す間もなく、マグナモンが俺達の横に着地した。俺達に目を向ける。

「こっちに!」

 俺達が鎧に触れるくらいに近寄ると、マグナモンは何か複雑な文句を叫んだ。

「――“ライトオーラバリア”!」

 最後だけ聞き取れた。同時にマグナモンから放たれた光が球になって俺達を包み込む。

 直後、張られたばかりのバリアに波紋が広がった。微かに何かが焦げるような音も。

 俺達から十メートルほど離れた場所に、デジモンが現れた。

 いや、違う。現れたんじゃない。動きを止めて俺達に見えるようになっただけだ。

 たった一度会っただけだけど、反応する間もない俊足と冷徹な性格は忘れるはずもない。

 仲間のウェヌスモンを淡々と殺していたこのデジモンを。

「メルクリモン!」

 緑の狼の頭を持つそいつは、俺が呼んでも顔も上げなかった。煙を上げ、ノイズの走る自分のこぶしを黙って見ている。

「障壁を生む力。久しく見ない力だ。更に我が攻撃を察するとは」

 静かに状況を口にして、今度はマグナモンに視線を移した。





―――





 ゆがみはずっと見張っていたのに。一体どこから現れたんだ。

 槍を握り、敵の一挙一動を注視しながら、頭の隅にはその疑問が絶えず渦巻いていた。

 今まで見た事のないデジモンなら、以前のレッパモンの時のようにこっそり忍び込んでいても分からないかもしれない。

 だが、目の前にいるデジモンは俺達もよく知るデジモン。見逃すはずがない。とすれば、つい先ほどこちらの世界に来たばかりのはずだ。

 ゆがみを通らずにどうやってここまで。

 そこでやっと、敵の企みを理解して歯噛みした。

 これ見よがしに巨大化した三つのゆがみ。俺達の注意はどうしてもそちらに向く。更にはゆがみからやってくる異世界からの来訪者。無意識のうちに、何か来るとすれば時空のゆがみからだという思い込みが出来上がる。

 でもそれは間違いだ。常時の出入り口である三つのゆがみ以外にも、世界を超える手段はある。

 例えば、メルクリモンのあの短刀など。
 俺達がゆがみの監視や来訪者との会話にかまけている隙に、別の場所から侵入できる。
 最初はゆがみの変化も次々とくる来訪者も十二神族の予想外だったのかもしれない。だが、今回はそれを上手く利用された。

 俺達は分断された上に、それぞれ刺客を送り込まれた。

 背後でエンジェモンが低い声を漏らした。急襲をよけきれず、二枚の羽と右腕が黒ずんでいる。

「エンジェモン、ここは任せて。城にこの事を伝えてください」

 俺の言葉に、エンジェモンはよろめきながら森の中へ駆け込んだ。

 敵はそれを嘲りの目で見送った。

「あれはオレンジの坊主が進化した姿か。まあそれはいい」

 視線が俺達に向いた。槍を握り直す。

 敵の目が怪訝そうにすがめられる。

「本当にロードナイトモンか? 雰囲気が違う……何より、なぜ十闘士の側に立っている」

 デュナスモンの問いに、ロードナイトモンは暫し黙っていた。





―――





『上半身が人型、下半身が獣型の半獣半人のデジモン。防御力、攻撃力、スピード全てにおいて優れている。必殺技は右腕と一体化した《ハンティングキャノン》』

「ケンタルモン。成熟期。獣人型。属性はデータ」

 俺のデジヴァイスの音声と龍輝さんの声が重なった。龍輝さんのデジヴァイスにもデジモンの情報を読み取る機能があるらしい。「成熟期」はこないだ聞きかじったけど、聞き慣れない単語が出てきた。

「属性って何ですか?」

 俺の質問に答える前に、龍輝さんが伏せた。俺も泉ちゃんも、ドルモンも這いつくばる。

 理由は簡単。ケンタルモン軍団が一斉に《ハンティングキャノン》を撃ってきたからだ。俺達の頭上を黄色い光線が飛び交う。

 ドルモンが「しっぽがこげた~!」と半泣きになっている。

「説明は後だ。今はケンタルモン達を何とかしないと」

 龍輝さんの言葉に、俺も泉ちゃんも頷いて、左手にデジコードを浮かべた。

「ダブルスピリット・エボリューション!」

「ライノカブテリモン!」


「スピリット・エボリューション!」

「シューツモン!」


「《コンデンサストーム》!」

「《ウィンドオブペイン》!」

 磁場の嵐と突風で《ハンティングキャノン》を弾き飛ばす。

「俺達も行こう」

 龍輝さんが立ち上がると、ドルモンも涙をぬぐって立った。

 進化して俺の目線は高くなったはずなのに、不思議とドルモンの存在感が増して見えた。




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戦闘開始です。視点があちこちいくので目まぐるしいかもしれません。

ロードナイトモンVSデュナスモン(フロ)は、もちろんやりたくてやりました(笑)
じゃあフロのロードナイトモンはどこにいるんだよ、と言われそうですが……「魚介類祭りだったあの戦闘」がヒントだったりします。

今年中にもう一話アップしたいとは思っていますが、スケジュール的に微妙な所です(汗)



今回初登場のデジモン

デュナスモン

ケンタルモン



(12/26 コメント返信遅くなりました。彼氏と……ではもちろんなく、仕事とリア充しておりました(汗))