第102話 希望の救世主達! 選ばれた者の証 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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 俺達が座ってるのは、ゆがみを見張れる場所にある草地。人間三人とデジモン一人で丸くなって情報交換、ではなく栄養補給しているところだ。

「まさかデジタルワールドでポテチを食べれる日が来るとは思わなかったな~」

 ホクホク顔でポテチをもう一枚手に取る。家にいる時みたいに二、三枚一気にがっついたりはしない。ここはせっかく分けてもらったポテチのおいしさを存分に味わって――。

 はむはむ。ばりばり。

 ――なんて事はちょっとも考えず、目の前のおやつに夢中なやつもいる。

「ドルモン、そんなに急いで食べなくても誰も取らないぞ」

「うん~」

 龍輝さんの言葉に、ドルモンが元気よく頷く。

 はぐはぐ。もぎゅもぎゅ。

 頷くけど食べる速度は落ちない。

 ポテチを食べて嬉しそうに目を閉じたり、煎餅を頬張ってほっぺたが変に出っ張ったり。見ていて飽きない。つい二十分前までは車酔いかってくらいぐったりしてたのに、回復の早いデジモンだ。


 とりあえずここに戻る途中で、お互い自己紹介はしておいた。朝川龍輝さんは俺より三つ上の十七歳。紫色のデジモン、ドルモンは龍輝さんのパートナーデジモン。二人してゆがみに吸い込まれたらしい。

 詳しい話を聞きたいけど、龍輝さんのおぶってるドルモンがグロッキーのまま。とにかく何か食べさせようって事で、ドルモン持参のポテチと煎餅を開けて今に至る。


 自分の分を食べ終わった龍輝さんが、草の上に座り直す。片膝を立ててもう片方の足はあぐらにしている。そのまま興味深そうに辺りの森を見回した。

 俺もつられて森に視線をやる。三つの月に何となく照らされた森は、薄暗くて林間学校を思い出す。
「さっき断片的に聞いた話だと、ここも一つのデジタルワールドなんだよな。でも名前の割にデジタルめいてはいないみたいだ」

「はい。あれ、龍輝さんとこのデジタルワールドとは違いますか?」

 龍輝さんの質問にはっきりと頷く。続けての俺の質問に、龍輝さんは困ったように眉を下げた。

「俺はまだデジタルワールドに行った事がないんだ。ドルモンと初めて会ったのも家の近所だったし」

 自分の名前が出て、ドルモンが顔を上げた。両手の上のポテチの袋は、きれいになめつくされている。

 ん? 家の近所で初めて会って、まだデジタルワールドに行った事がないって事は……。

「じゃあ龍輝とドルモンは、会ってからずっと人間の世界にいるの?」

 泉ちゃんが大きな目を更に見開く。

 ドルモンが元気よく頷いた。

「ドルモン、いまはリュウキのおうちにすんでるの~」

「いいなー、デジモンと一緒に暮らせるなんて。私達なんかデジモンに会いに来るだけで一苦労なのに」

 泉ちゃんが肩の力を抜いて、うらやましそうに龍輝さんとドルモンを見た。

 確かに、俺達の世界じゃデジモンが人間世界に行くなんて滅多にない。行っても地下のターミナルまでだ。それ以上進んだら、デジモンの存在自体が世界に悪影響を及ぼして、その内人間世界は崩壊してしまう(ボコモン談)。ルーチェモンをすんでの所で食い止めた時は、俺もみんなも必死だったよな。


 そこまでではないにしても、やっぱり人間世界にデジモンがいるって不思議な話だ。

「何でそんな成り行きになったんですか? もしかして、世界の危機とか?」

 推測を口にすると、図星だったらしい。龍騎さんとドルモンの顔が引き締まった。

 龍輝さんがズボンのポケットから小型の機械を取り出した。俺達の前で手を開いて見せてくれる。

 それは手のひら大で、正方形の四隅を指で潰したみたいな形をしていた。色は透明な濃い紫。

「これはデジヴァイス。デジモンテイマーの、つまりデジモンと共にあって、デジモンを育て強くしていく者の証らしい。俺はドルモンを強くして……簡単に言えば、デジタルワールドの救世主に育て上げる責務を負っているんだ」

 俺達のデジヴァイスとは見た目が違うけど、意味する所は似てる。

 デジタルワールドを守るために選ばれた人間が手にする機械。


 俺は自分のデジヴァイスを出して、龍輝さんのように見せた。

 龍輝さんは一瞬目を細めてから、納得したように俺の顔を見た。

「この世界のデジヴァイスなんだね」

「はい。俺達も今、この世界を守るために戦ってるんです」

 泉ちゃんもデジヴァイスを持った腕を伸ばしてくる。三つの「デジヴァイス」が並んだ。
「これもデジヴァイスなの~?」

 ドルモンが俺のデジヴァイスに目鼻を近づける。珍しがっているみたいだ。

 そんなドルモンをしみじみと見てから、泉ちゃんが小さく笑い声を立てた。

「何か重いよね。改めて『世界を救おう』なんて思っちゃうと」

「初めてデジモンに会った時は、そんな事ちっとも考えてなかったのになー」

 俺なんかデジヴァイスは放っておいて、帰りたい一心でチョコばらまいてたんだから。今考えると自分で笑える。

 自分のパートナーに軽く手を触れながら、龍輝さんもふと微笑んだ。

「俺もだ。ドルモンと初めて会った時は好奇心だったり、慰めたいって思いだったり。大それた事になるなんて思ってもみなかった」

 そうなんだ。最初は使命とか救済とか考えてなかった。でも。

「自分のやりたい事とか放っておけないデジモンとか、そういうもの選んでたら、いつの間にかでかい話になっちゃったんですよ、多分」

 俺の冗談交じりの言葉に、龍輝さんも頷いてくれた。

「もしかしたらデジヴァイスは、選ばれた者の証じゃないのかもしれないな。むしろ選んできた、選んでいく者の証なのかもしれない」


 デジヴァイス観察をしていたドルモンが、急に大きな口を開けた。

「ドルモン!」

 俺が反応するより早く、龍輝さんがドルモンの首根っこをつかんで引き戻した。もしかして、今……。もう遅いけど、慌ててデジヴァイスを持った手をひっこめる。

 当のドルモンは目じりを下げて、泣きそうな顔で龍輝さんを見上げた。
「だめ?」

「駄目だ。何でも口に入れるなってずっと言われてるだろ?」

「わかった~」

 ドルモンが泣きそうな顔のままうずくまる。視線は未練がましく俺のデジヴァイスに注がれている。

 やっぱり、デジヴァイス(と俺の手)をかじる気だったのか……。冷や汗が手の平に伝いながらも、反射的に動いてくれた龍輝さんに対して感謝と尊敬を感じた。パートナーデジモンの事良く分かってるし、ドルモンの方も龍輝さんの言いたい事を分かってる。

「デジモンテイマーか……」

 泉ちゃんがまたうらやましそうな顔をする。その顔で俺の方を向いた。

「もしかして、私達みたいなパートナーのいないタイプって変なのかな? 来る人来る人みーんなデジモンと一緒にいるじゃない」

 そう言われてみれば。どうなんだろう。

 深く考える前に、森の奥で何かの動く気配がした。




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はい、皆様のご想像通りの龍輝&ドルモン、純平、泉組でした。

純平は中2だし、年上にはちゃんと敬語使ってそうな気がします。三歳上なら特に。という事で龍輝相手にはさんづけ&敬語です。

泉は……というか純平以外のメンバーはあまり敬語使ってるイメージがなくて(苦笑)