大輔がプラットホームから飛び出してすぐに、右手の方から地響きが聞こえた。
見ると、鉄塔が緑色の炎に包まれていた。骨まで揺るがすような音とともに、次々と崩れ始める。
「いきなりなんなんだよ!?」
大輔の後を追ってきた拓也が目を丸くする。
「ただの火事でもなさそうだな!」
大輔の言葉を証明するように、炎の方から悲鳴が近づいてきた。
「助けて~!」
走ってきたのは二人のデジモン。どちらも大輔の見たことのないデジモンだった。
身長はブイモンと同じくらい。二人とも二本足だが、片方は白い肌でピンクの腹巻きをしていて、もう片方は狐のような外見に股引きをはいている。
大輔はすぐに二人に駆け寄った。
「一体どうしたんだ!」
二人は大輔を見てぽかんと口を開けた。その場で足踏みする。
「まさか、人間……?」
白い方がつぶやく。
大輔はすぐに答えた。
「当ったり前だろ。それより、何があったんだよ?」
「おお、そうじゃった。ケルベロモンが襲ってきたんじゃ~!」
白い方が瞬時に大輔の後ろに隠れた。狐の方は拓也の後ろに。
大輔は炎が上がる向こうに目をこらした。
黒い、犬か狼のようなデジモンがこちらに歩いてくる。これがケルベロモンというやつらしい。
「おい、ケルベロモン! 向こうの火事もお前のしわざか!」
大輔がどなると、ケルベロモンは鼻を鳴らした。
「だったらどうした。俺はここにあるというお宝を手に入れにきただけだ」
「宝のためだけにこんなことを……?」
拓也は呆然と怒りの入り混じった表情でケルベロモンをにらんでいる。
一方の大輔は既にデジヴァイスを握ってパートナーを見ていた。
「ブイモン! こいつ話が通じそうにねえ。大人しくさせてやろうぜ!」
「おう!」
大輔がデジヴァイスをブイモンに向けた。
「デジメンタル・アップ!」
「ブイモン、アーマー進化!」
炎の中から鎧に包まれたこぶしが、額から伸びた一筋の刃が突き出す。
「燃え上がる勇気、フレイドラモン!」
拓也、二体のデジモン、ケルベロモンの目が見開かれる。
「チ、チビモンがまた変身した!?」
拓也は「進化」そのものについていけていない。
デジモン達はまた別の理由で驚いていた。
「こ、これはアーマー進化じゃマキ!?」
「ばかな、デジメンタルはとうの昔に滅んだはず!」
冷静に考えれば大輔の知識と食い違いがあったのだが、臨戦態勢の大輔は細かいことなど気にしない。
「今だ、フレイドラモン! 一気にやっちまえ!」
フレイドラモンの手が炎に包まれる。
「《ナックルファイア》!」
放たれた火球がケルベロモンのあごを捉え、吹き飛ばす。
ケルベロモンは二回転して地面に着地した。
「炎同士の戦いで負ける俺ではないわ! 《ヘルファイア》!」
ケルベロモンの口から緑の炎が吐き出される。
フレイドラモンは一歩も動かずに手の爪を振り上げる。
その爪はたやすく緑の炎を切り裂いた。
「いける!」
「いっけえ、フレイドラモン!」
拓也と大輔の声が重なった。
フレイドラモンが全身に炎をまとった。
ケルベロモンに向かって地面に水平に跳ぶ。
「《ファイアロケット》!」
額の刃がケルベロモンを捉えた。
「うわぁぁぁぁぁぁ~……」
その勢いのまま、ケルベロモンは空のかなたに吹き飛ばされていった。
フレイドラモンもブイモンに退化する。
大輔がブイモンの元に駆け出した。
「よくやった、ブイモ」
その横を高速で駆け抜ける人影が3つ。
「すごいな、今の! 一体どうやったんだ!?」
拓也がブイモンの頭を何度も叩く。
「かっこよかった! ヒーローみたい!」
さっきの泣き顔はどこへやら、友樹はブイモンの手を握って勢いよく振っている。
「いやあ、『ブイモン』をこの目で見られるとは思わなかったマキ。しかもアーマー進化までのう」
白いデジモンがブイモンのしっぽを突ついている。
もみくちゃにされるブイモンに、大輔は近づくタイミングを失った。
―――
はい、久々のユナイト更新です。
大輔たちがこれ以上ない勢いで原作ブレイクしにかかっている……。