朝霧に覆われた木のエリア。
森の中を音を立てないように進む人影があった。人影は計六つ。
「霧が出て助かったな。おかげで敵に気づかれなくて済む」
巧が言うと、リオモンが軽口を叩く。
「その代わり俺達も右も左も分からないけどな!」
気楽そうな言葉に最後尾の輝一が苦笑する。
ただでさえ方向感覚を失いやすい森に霧が出ているから、目的地を探すのは一苦労。
でも安心していられるのは、優秀な「レーダー」がいてくれるから。
私は先頭を歩く二人を見た。
ピクシモンが立ち止まる。葉月が横に並んで、自分のパートナーに小声で聞く。
「どう? 近づいてる?」
「ええ。妙な森の気配はこのすぐ先よ」
小声での答えに、全員の気が引き締まった。
私達の体験と古代の記録を合わせると、ケレスモンが植物を使うデジモンである事は間違いなかった。ただ、彼女と共に現れたあの島の事は記されていなかった。
そこで「森に違和感がある」と言うピクシモンの感覚を頼りに調査隊を組むことにした。もし敵の作戦が分かればその場でつぶす事も考えつつ、メンバーを選んだ。
葉月・ピクシモンに、仲間で連携も取りやすいだろう巧・リオモン。一度ケレスモンと戦っている私。ダブルスピリットできる三人のうち、一番小柄で森の中での戦闘がしやすい輝一。
今の所は敵の影もなく順調。ここからは敵陣だ。
巧と葉月がDートリガーを、私と輝一がデジヴァイスを出す。
「それじゃ、作戦通りに」
私の言葉で動き出した。
「超進化弾」
「リオモン進化――ヴルムモン。超進化」
「リントヴルムモン、推参」
「ピクシモン進化――エルフモン。超進化」
「ドライアモン、降臨」
リオモンがサイボーグ化した二本足のドラゴンに、ピクシモンが緑の髪の神秘的な精霊に姿を変えた。
「スピリット・エボリューション!」
「シューツモン!」
「ダブルスピリット・エボリューション!」
「ライヒモン!」
巧はリントヴルムモンの肩に乗り、葉月はドライアモンに抱えられて、島へと飛び込んだ。
着地してすぐ、私も違和感に気づいた。風もないのに木々がざわめき、それが話し声のように聞こえてくる。
「――ニンゲン?」
「シンニュウシャ――」
「メディウム――シラセヲ」
ケレスモンに私達のことを知らせるつもり?
「そうはさせない」
木々の話に割り込むように、ドライアモンが一歩前へ。
「ガイアシンフォニー」
音楽が聞こえたのは一瞬で、気づけば木々のささやきは聞こえなくなっていた。
「木々の意識を封じたけど、長くはもたないわ。強い大地の力が働いている」
ドライアモンが厳しい表情になる。
「なら急がないとねー。力の源は?」
葉月の質問にはまっすぐ島の中心を指差す。
私達はその方向へと駆け出した。
「なんか生ゴミみたいな臭いしねえか?」
巧が顔をしかめた通り、鼻を突く臭いが強くなってくる。進むにつれて原因が分かった。
至るところで果物が腐っていたのだ。
地面に落ちて、あるいは木についたまま、土気色にしなびている。
誰かがうっかり踏むたびに臭気があふれて、吐き気がした。
「何故こんな事に……」
全員の気持ちを代弁するライヒモン。森は明らかに普通の状態ではなかった。
その理由は、中心に辿り着いた時に分かった。
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食欲不振になりそうな場面で終了。
あと2話で終了予定です。(あれ、こんなセリフ前にも言ったような(汗))
ドライアモンの技は設定にあったのを勝手に解釈して使ってしまいました。おかしかったら指摘してください。
では。
信也「なあ、俺の出番は?」
さくしゃは しんやの まえから にげていった!