「《ロゼオ・テンポラーレ》!」
空中からの連続蹴りで、最後のゴブリモンにデジコードが浮かんだ。
周りには30体以上のゴブリモンが倒れて、デジコードが浮かび上がっている。
私は顔をしかめながらデジヴァイスを取りだした。
「爽やかな風に乗せ、このデジヴァイスが美しくピュアな心に浄化する! デジコード・スキャン!」
ゴブリモン達はデジタマも残さずに消えた。
私は地面に降り立って、フェアリモンの姿のままデジヴァイスを操作する。
「……やっぱり、データが壊れてる」
今スキャンしたばかりのデータは『壊れたデータ』と表示されていた。信也がダスクモンをスキャンした時と同じ。拓也達の記憶から生まれたデジモンは、スキャンしてもデータが壊れているし、デジタマが残る事もない。
さっきのゴブリモン達もきっと、風のファクトリーの時の記憶から作られたんだろう。
昔戦った敵とまた戦うのは、あまりいい気分じゃなかった。
拓也達が心配だってこともあるんだけど……。
自分達の思い出のアルバムを勝手にのぞかれている気分で。
延々とループし続ける悪夢を見ている気分で。
ただデータを利用されているだけだって頭では分かっているのに、心は複雑だった。
「とりあえず、お城に戻ろうかな」
デジヴァイスから目を上げてつぶやいた。近くに人がいるわけでもないけれど。
「言い訳はそれだけかなー?」
「え? ご、ごめんなさいっ!?」
突然の怒りを含んだ声に、反射的に背筋が伸びた。
すぐに辺りを見回すけど、声の主は見当たらない。
そこでやっと、自分の耳が遠くの音をとらえていた事に気づいた。風のそよぎに乗って誰かの声が運ばれてくる。風上――森の奥から聞こえてくるみたい。
それに、落ち着いてみると私が怒られる理由はない。
そもそも聞こえたのは、聞き覚えのない女の子の声だ。
だとすると、誰の声?
私は進化を解いて、声の方に行ってみる事にした。
微かな声に耳を澄ませながら歩いていく。近づくにつれて、会話がはっきり聞こえてくるようになった。
「――や、空間の歪みができてたのは俺のせいじゃ」
「一也がこの場にいたらそっこーで制裁してもらうところなんだけどなー」
「すみません俺が悪かったです」
……最初に聞こえた声もそうだけど、内容が穏やかじゃない。
「葉月、それくらいにしといてあげたら?」
三人目の声が聞こえた所で、私は声の主達を見つけた。
木立の中に四つの人影があった。
二つはデジモン。
片方は少しオレンジがかかった赤色で、二足歩行のトカゲみたい。頭の三本の角と両腕の黒いラインが特徴的だ。
もう片方は妖精みたいなデジモンで、トカゲデジモンよりも少し背が高い。フェアリモンを赤毛にして緑の服を着せたら、大体似たような見た目になりそう。
残りの二つは人間。二人とも私と同じくらいの年だ。
まず、木の根元で土下座している男の子が一人。額が地面についていて、栗色の髪以外見えない。
その向かい側で仁王立ちしている女の子が一人。オレンジ色の髪が肩のあたりまで伸びている。男の子を見下ろす顔は全然笑ってなくて、彼女の周囲に緊迫した空気が漂っていた。
断言していい。最初に聞こえた声はこの子のものだ。
そして、私達以外の人間がいるという事は、この間と同じ――。
私が草を踏む音で、トカゲのデジモンが振り向いた。一瞬目を丸くして、慌てて他の三人に呼びかける。
「おい、巧、葉月! 人間だ!」
その声で、男の子も女の子も妖精のデジモンも、一斉に私に目を向けた。
それぞれの表情に驚きや安心や焦りが浮かんでいる。
「人間がいるって事は、俺達元の世界に戻ってきたのか!?」
「ねえ、D-トリガーって持ってないー?」
「俺達デジモンを見ても驚かないのか?」
「ここ何ていう所なの?」
ち、ちょっと……。
四人が口々に言うけど、そんなに一気に聞かれても答えきれない。
「
結局、最初に言った言葉はこれだった。
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はい、コラボ第二弾はパラレルさん宅の「デジモンメモリーズ」です!
……巧の扱いこれでいいのでしょうか? 若干心配。巧が土下座する羽目になったのは私のせいではないですけれどね(苦笑)
キャラの言葉づかいや描写が違う、という所があれば指摘してください。
最後の泉のイタリア語は正しいか自信ありません。イタリア語で「visiters from the different world」という意味になっているはずなんですが。イタリア語分からない人間が、ネットの翻訳サイト使っただけなもので(汗)
P.Sやっぱりイタリア語の部分改訂。これでも自信はないわけだが。
第84話から第91話までのコラボ先リンク