『祖國と靑年』5月号の巻頭言のタイトルは、
「先島諸島の住民避難と台湾の法人保護の課題」
である。
昨今、台湾有事の可能性が指摘される中、それに備えた日米共同の具体的な対話もなされている。
国民の生命と財産を守るのは、「国家の最大の責務」である。
すなわち、もし有事が起きた時、住民をどのように避難させ、保護するかは喫緊の課題であり、今年の3月には先島諸島防衛の一つとして、住民避難の図上訓練が沖縄県庁で行われた。
国内の住民保護と同様に重要なのが、海外、特に台湾における「在留邦人・米国人の保護」だ。
しかし、現地の方は、いざという時にどうすればいいのか、台湾における日本大使館にあたる公的機関の公益財団法人日本台湾交流協会に尋ねても、はっきりとした回答を得られないという。
以下、巻頭言より引用。
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現在、政府や自民党で台湾在留邦人の保護について見当され始めているが、問題が山積している。その一つは在留邦人の家族の問題である。
例えば、台湾で生活を営んでいる男性が有事の際に日本への退避が出来たとしても、妻や両親が台湾籍(中華民国籍)であれば、一緒に退避出来ないとされている。
台湾は家族を非常に大事にする国民性であり、妻や両親を置いて自分だけ国外退避することなど投擲できない。
また子供の殆どは日本と台湾の二重国籍であるため、その受け入れが日本に可能であるかも定かになっていない。
そもそも台湾の在留邦人2万名の中に、二重国籍を有する子供の数は入っていない。
されに受け入れ先は九州となっているが、生活基盤や拠点の確保の検討は十分ではない。本国九州は輸送距離などの課題もあることから、一時退避の場所として、日米はフィリピンとの調整を水面下で進めている。
そして、先の先島諸島の住民輸送を含め、どこまで台湾の在留邦人および家族の輸送が可能なのかといった懸案事項は尽きない
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現実というものは、知れば知るほど厳しいことを痛感させられる。
なぜ、このような課題がこれまで検討されず、放置されてきたのか。
巻頭言では、こう指摘されている。
「戦後レジームの象徴たる憲法9条の産物であり、わが国が戦後一貫して『戦争のことは考えない』としてきたからに他ならない。九条思想が今の様々な不安と矛盾の元凶であることが改めて思わされる」
その通りである。
もはや、「九条改正か否か」といったイデオロギー的な段階ではない。
我が国を守るために、今、何を知り、何を考え、どう判断すべきか。
時代は、イデオロギーを抜きにした「現実的な議論」を要請している。