ニューヨーク狂人日記 -60ページ目

Stickey Fingers



同じ道。同じ店。同じノート……。

浮気はしない。

変換すると、退屈と出てくるかもしれない。


気まぐれに曲がったり、シマを変えてみたり、携帯にメモを取ることもたまにはある。

変換すると、居眠り猫?



久しぶりの浮気。

いつもとは別の焼き鳥屋へ行ってみる。


ベトベトした映像だった。

あっちと同じ素手なのにベトベト。


手が汚れてるとか。

握手をしてみたとかじゃない。

画がベトベトしてる。

動きそのものがどこかベトついていて、

そこから不潔がただよう。


表面上の彼にはそれほど罪はなく、

それは内部からにじみ出てくるものなのか。

技量が劣っているために流れが美しくないのか。

動きに性格や、生き方が出てしまっているのか(失礼)。

それとも、ぼくの中にあるヒイキという感情が見せる虚像なのか。


とにかく、彼が動くたびに「ゲッ」と心のカエルがふみつぶされてゆく。



公園横の見慣れた風景。

石焼オーヴンのピザ屋さん。

視線が流れて、戻って、止まる。

どこかで見たことのある、見慣れないもの。

窓ガラスに貼られた大きなステッカー。

白地にブルーで大きなAがひとつ。

新聞記事でしか知らなかったステッカー。

初めて見る現物。

興味がないから見落としてだけかもしれないが。


保健所の検査でいい点数をとったらしい。

A。B。C。

いやでも飛び込んでくる時代になる。

あの店は?

あの店は?

人間がきめること。


レストランなんてそんなもんだと思ってたし、

思いは今も変わらない。

それでも通知表を差し出されると

「なんだ、こいつボンクラか」

母親は思ってしまうのだろう。


言われてみれば、

ここ2年ほど料理人の手元を気にしてる自分を見つけることがある。

うすい手袋。

「なんだかめんどくさそうだなー」

から、少しずつ変化していっている。

10年前からは信じられない自分だけれど。



敏感という小川に流れる笹舟のような自分。




Sticky Fingersくんの店では、結局、焼き鳥を食わなかった。

君の手が汚いというわけではないけれど。

ニューヨーク狂人日記

『ボヤキTV』ライナーノート:《たばこ》

《できちゃった婚》
旧い言葉だ。
「しようがないな……」
アサリの酒蒸しにぱくついている最中にガリっ。
そんな顔をしているお父さん。
(1年前、あんなに頼み込んでも話しさえ聞こうとしなかったのに)

タバコ税もそんなもの。
役人は前例が好きだけれど、無理を通すのもお好き。

《まだ懲りない!? 境せいき、喫煙容疑で身柄拘束か!?8度目》
税金をオネダリされるより、こんなニュースの方が楽しい。
どうせなら禁煙法、禁酒法を作ればいいのに。


タバコ税は経済問題。
健康問題じゃない。
日本でもこれからどんどん上がります。
自衛隊の海外派遣の記事を見ても何も思わないこの頃。


グレイハウンド・バスから降りてすぐに買ったLUCKY STRIKE。
排気ガス臭のこもるバスターミナルの売店で。
$1.00也。
それでも他州より20¢高かった。
今じゃ$13.00 。
$1.00だった地下鉄は24年で$2.25になった。


「勝手に吸っといて。誰の税金で医療費まかなってると思ってんのよ!?」
はい、私も、税金があんたらのガキに、子供手あてに行くのはいやです。
不毛な会話・考え方はやめよう。



メーカーはともかくタバコ農家は?
前財務大臣は「あ、あとから考えます」と言ってたけど。
考えました?
辞めちゃいました。

タバコ屋はタスポでつぶれ、
コンビニには値上げで影がさす。
アメリカの真似は大好きなんだけど、
負の部分もついてくることをお忘れなく。
材木を輸入すると虫がおまけについてきます。
いつもそんなところでオロオロしてる。

次はなに?
やっぱり。


こんだけ吸って、税金納めても顕彰されるはずはなく。
脱煙。
まで、あとわずか。
只今在庫処理中。

『ボヤキTV』ライナーノート 《大相撲》

8月も30日。
夏ももう終り。
この夏、どれだけの人がカッパのいたずらに巻き込まれたんだろう?

《カッパ捕獲許可証》というのがある。
岩手県遠野市では、これなしでカッパを捕まえることは不可。

笑う人もいるだろうが、
国技と呼ばれる、信じている大相撲はこれ以下。
比べられたカッパ君も迷惑だろうが。


現金とはよくいったもの。
NHKの放映自粛が決まると懸賞金も激減し、
呼び出しさんの背中は補欠になれなかった高校球児。
世間体だけじゃない。
だれも通らない道でビラ配りするアホはいない。

国営、そして公営ギャンブル化のことはボヤキTVでも言ったけど
手始めにNHKと手を切るといい。
お互いのために。

放映権は入札で決める。
オリンピックやワールドカップみたいに。
自分たちの人気の程度がわかるから。

スポンサーを開拓してみる。
お茶漬けとかまぼこでは食事もすすまない。
懸賞金を出す方も「NHKだから」というウマ味もあったわけで。



「どうして俺はこんなにもてないんだろう?」
考えてみればわかるから。

「なんで外国人力士ばっかりなんだろう?」
考えてみればすぐにわかるから。



大相撲に近いものを探すとしたら……。
いたいた。
離婚したての高相さん。
のりPの元旦那さん。
お仕事のほうは、自称プロサーファー。

帰ってまいりました。『ボヤキTV』

母さん、ぼくのあのドーナツ盤どうしたでせうね?
ええ、初売の日に銀座通りの太陽レコードで買ったあの盤ですよ。
母さん、あれは好きなEPでしたよ
ぼくはあのときずいぶん嬉しかった




最初に買ったレコード、ドーナツ盤はどこへ行ってしまったんだろう。

ミュージシャンによっては
「表現しきれない」
EPレコードを拒み続けている人もいた。
よくわかる。
好きなミュージシャンに限ってそんなことを言ってたし。
「アルバムじゃないと表現しきれない」
今思えば、それもよくわかる。

でも、ステーキを食いたいんだが、うちは切り落とししか買えないんだ。
貸しレコード屋なんてなかった。
FMをエア・チエックしていたあの頃。
FMレコパル。
週刊FM。


3分あまりに自分を詰め込むというのはたいへんだ。
今回つくづく思いました。
詰め込むこともまた芸なんだ、と。

伐り捨てて。
斬り捨てて。
切り捨てて。

瞬時に結晶を作ることができれば。
短歌・俳句……。

最近、なんか拘束されるのが好きになってきた。
アブナイ。

切る快感。
切られる快感。

3分余に自分を詰め込む。
詰め込みきれない。




そんなわけで、久々に『ボヤキTV』が復活しました。
今回から、ドーナツ盤ほどの長さです。
自分で見るのはおぞましいけど、勇気のある人は見てみてください。





時をしる

N20100826時を知る

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腕時計を忘れてきてた。
ページをくりながらそんなことに気づく。

仕事場へはいつもの時間に行きたい。
早くでも、遅くでもなく。
交換したばかりの携帯は充電中。

昔のように街に時計はあふれてない。
時計台も、大きな電光掲示板も見あたらない。
オープン前のスープ屋の壁にも時計はない。
時計を探してうろうろしたくはない。

ほんとうにぼくらは豊かになったんだろうか?

まだ来ない。
名前も、声も知らぬ知り合いが。
毎朝、同じ時刻にやってくる男。
同じ椅子に座り、
クロスワード・パスルを埋めてゆく。
1本のたばこを愉しみながら。

まだ来ない。
今朝は肌寒く、ぼくも放出品の上着をはおっている。

とうとう来なかった。
仕事場へ行ってみると、思いのほか正確だった体内時計。



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Happy Hourの憂鬱


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数字は残酷だ。夢をいとも簡単に引き裂いてしまう。

遅刻しそうな時。
信号が点滅をはじめた時。
頬に雨があたった時。
…………
様々な、それそれの理由で早足になる人々。
日常である人もいる。

ぼくの場合は、唯一、Happy Hourが気になる時。
早足。早足。早足。


やっと手にしたビアグラス。
心も、心臓も落ちつき、ひと口目を流し込む。
グラスの角度をあげながら静止してしまった。

カウンター奥に下げられている大きな黒板。
視線は画鋲でとめられたように凍りついた。
様々な銘柄、値段の中に埋もれた二桁の数字に。
これまで何の疑いもなく飲んできた。
「Draft」の右横にあるのは「14oz」という文字。
16ではなくて。

いったい今までの幸せはなんだったんだ。
慌ててあと一杯頼むことに。
時刻は午後7時58分。

Lonesome Cowboys:脱煙

「ざまあみやがれ」
きみに贈ろうこの言葉。
捕らぬタヌキの皮算用。目論見がはずれたね。
「金がほしいんだ」
ハナから言っちまえばよかったのに、
ごたく並べたりするからこのざまだ。
理由はひとつだけでいい。


1箱1$12のタバコに含まれる税金。
NY収税=$4.35
NY市税ー$1.50
連邦税=$1.00
消費税=$0.42
タバコ代=$4.73

NY市でに実勢価格は$12.00~$14.00


NY州タバコ税は2010年7月1日から60%引き上げられ、$2.70が$4.35へ。
州政府は290~440millionの年収アップを皮算用。。
月換算で24~36million。
が、フタを開けてみると……。
前年同月比でたったの6milionのしか増えてなかった。
多くの人が禁煙、断煙、脱煙。
州境近くの人はボーダーをまたいでお買い物。
インディアン居留地で買う人もいる。



ラスベガスのホテルでは、カジノを通らないとチェックイン・カウンターにたどりつけない。
ただでまんじゅうをくれる草津温泉では、「お茶は店内にございまーす」。
タバコを買う人が少なくなった今、多くのコンビニでは売上が下降中。
「あ、アイス」
「ホットドッグもね」
「ガムとチョコバーと、それと雑誌も」
レジ列の誘惑。



「さて、落しどころを見あやまったお役人様。どうすんの?」
興味津々で見ていた。
西部劇をはじめることになるかも。
「ショットガンをぶっ放せ!」

パターソンNY州知事に耳打ちをするやつがいる。
侵略者に追い詰められたアメリカ原住民。
ネィティブ・アメリカンに特権として「与えられた」不毛の土地、カジノ経営権と非課税のタバコ。
そんなアンタッチャブルに手をつけようと。
世界17位の富豪であるブルームバーグNY市長はささやく。

そんなら、軍人特権の非課税タバコにものっけなくちゃね。


さぁ、西部劇の始まりだ。
みんなが好きな勧善懲悪。
正義はわれにあり。
だれもが、どこかで弱者を探し、悪者を必要としている。



(NY州でのこの10年ででのタバコ増税は691%)





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度重なる値上げで、最近は値段表記したサインも少なくなった

囲碁将棋クラブ


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紐育州部留久林五番街西入ル右翁恋通●×△番地。
京都風に住所を。

碁盤の目。
縦と横で場所がわかる。

Microsoft Excelのセル番号。
レーダー作戦ゲームで魚雷命中。
経度。緯度。
携帯を替えてもGPSはオフ。
自分の所在を赤の他人に教えるほどお人好しじゃない。
NYでは迷わない。



昭和の食卓にあり、ぼくの食卓にないもの。
先っぽが緑色のハッカで塗られた爪ようじ。
アジシオ。
そして味の素。

味噌汁にサッサ。
漬物にパラパラ。
とりあえずひと通り皿にふりかける。
文化の味。
魔法の白い粉を最初にふりかけるのは父親の特権。
夕飯の儀式のようなものでもあった。
無言。視線を集めるのは父の右手。

MSGといえば……。
ジョージ・ハリスンの一声で友人たちが集まった。
ボブ・ディラン、エリック・クラプトン、リオン・ラッセル、ビリー・プレストン、ジェシ・エド・ディヴィス……。
たぶん最初の大規模チャリティー・コンサートが開かれた場所。
ポップ音楽の殿堂.

スタン・ハンセンが人間発電所:ブルーノ・サンマルチノの首を折り、WWWFのベルトを手にしたリング。
千代の富士が土俵入りをした。
もちろんNY Knicksの本拠地でもあるスポーツの殿堂。

Madison Square Garden。
今、MSGと言えば危険な調味料Mono Sodium Glmateとしての方が有名で。
それでも、ぼくのなかでは殿堂が勝つ。


うちの食卓にあったのは「味の素」ではなく、
「ハイミー」でもなく、
「いの一番」
今でもあるのかなコレ。
きっと世間を斜に見てしまうのは親譲り。
さて、どっち?
カレー粉もハウスやSBではなく、「ハチ」というブランドだった。
ハチの絵が描かれていた
白コショウもそうだったはず。
とんかつソースはイカリ・ソース。
キューピー・マヨネーズは瓶入りで、次に味の素のものになった。
星型に切られた絞り口に子どもの心は踊る。
醤油は計り売り。
酒も計り売り。
いったいどっちに似たんだろう?
妹に問うと、間髪を開けずに指摘する「お●さんでしょ」

移築のために旧い建物を解体するとき、
昔から大工さんは柱に番号をふっていっていたらしい。
南から北へ「い、ろ、は……」
東から西へ「一、二、三……」
南東の端にある柱が<いの一番>。

そういえば子供の頃、映画館の木製椅子にも白ペンキで書かれてた。
<はー七>
将棋や囲碁の棋譜も、駒の、石の場所に住所をつける。
棋士の頭には棋譜が入っていて、どこまで歩いても苦にならないらしい。
生活が将棋。
将棋の生活。
9X9な生き方。
九九八十一。
理にかなってる。

「東京は疲れる」と京都出身の友達は言う。
東の京都は、京都とは違う。

東京では客に道を訊くタクシー・ドライバーも珍しくないらしいが、
その点ニューヨークは碁盤の目だから教えやすいし、覚えやすい。、
たまに一方通行を知らず、結果として遠回りになってしまうドライバー。
ハイゴチソウサマ。
一番居心地の悪いのがGPSをチラ見しながらハンドルを握る奴。
「えー、ご住所は?」
ドアを閉めた途端に飛んでくる言葉。


碁盤の目。
自分の場所がはっきりしているのはどこか安心感がある。
自分の場所。
秘密基地。

さて、ぼくは今どこに?
ききたくもあり、ききたくもなし。


中学時代の必須クラブは。
1年生ー囲碁将棋。
2、3年生ー時刻表クラブ。
座ってるだけ。

高校では、ゲートボール。
立ってるだけ。

何の脈略もなく、ただラクという2文字のために。
何も残らず、ラクだけが残った。



だれに似たんだろう?

居心地が悪い


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月のものがこない。
来るものがこない。
来るべきものがこない。

いつの間にやら毎月恒例となった原稿督促のメール。
カレンダーには赤丸をつけ、
「書かなきゃな」とは思ってるのに。
借金にしろなんにしろ、
督促はそれほど気持ちのいいものじゃないけれど、
来ないとなるとどこか寂しい。

避妊を忘れてしまったあの夜。
翌月の予定日。
こない……。
女の子はこんな気持で過ごしているのかな?


3日で届くはずだったPriority Mail。
居心地の悪い日々を過ごし、届いたのは8日目。

「遅いな……」
「それにしても遅すぎだよな」
確認のメールを出すも梨のつぶて。
「当方の手違いで……」
やっと貰ったメールの2日後、給料のチェック(小切手)が届き胸をなで下ろす。
別のところで、これまで2回逃げられてるから。


「来週の金曜日か土曜日にうかがいます」
「あ、来る前に時間の連絡してね。だいたいでいいから」
「はい、その日のお昼ごろまでに一度、電話しますね」
こんなやり取りをほぼ毎週。
もう2ヶ月の間続けている。
配達はおろか、電話のあったためしはない。
営業禁止を食らったクリーニング屋から戻ってこない洗濯物。
怒りに変わりつつある居心地の悪さ。


「遅いなー」
10分以上前に頼んだのに。
ビールのおかわりがやってこない。
忙しそうに通り抜けていく店員くん。
そろそろ手を上げてみようか。



来て欲しくないものがなかなかこないこともある。
来るとはわかっているのに、いつか。


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THIS IS IT


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飯にしよう。
料理をテーブルに運び、ビールはもう抜いてある。
「ん……」
反応なし。

その日はいつも突然に。
何の兆しもなくやってくる。
あちらに飢える人がいて、こちらで衝突が起こり。
半島のあの国のように、実のところは内側で何かが起きてはいるのだろう。
でも気づかない。
わずかばかりに漏れてくる音で像を組み上げるだけ。
それすらもアンテナを立てておかなきゃ、
砂漠の砂のように指間から落ちる。
こんな小さなことに現代社会を見ようとするのは考えすぎか。



VCRのリモコンが壊れた。
電池を替えても、叩いてみてもウンともスンとも。
もちろんリモコンが鳴くはずはないが、
VCRも鳴かない。
鳴かせることが出きない。
リモコンなしで出きることと言えば……。
電源のON/OFF。
再生。
巻き戻し。
早送り。
停止。
チャンネルの移動。
テープの取り出し。

30年以上前のラジカセですらこれ以上の機能はあった。
可能性というよりも、埋没するそこにあるたしかな機能。
銃の弾を撃ち尽くしてしまった兵士のように。
シャッターの下りた薬局前、注射器を持たぬ麻薬患者のように。
トイレに水没した携帯電話をながめる男のように。
副にあやつられる主。
副なしで生きていくことの出きぬ主。

付属物が主を超えようとしていく。
暴走するカルト教団のように。


さてどうしよう?
毎日1時間だけのテレビ。録画で見るニュース。晩飯の友。
それだけのためにリモコンを買うか?
中古のVCRを探してみようか?
いっそのことケーブルテレビをやめてしまおうか。
1時間のために月々$40。
ついでに電話もやめようか。
ほとんど鳴らないし、かけることもない。
こちらも月々$40。
安心の対価。

ここにもまた、副にあやつられる主祭がひとり。