囲碁将棋クラブ
紐育州部留久林五番街西入ル右翁恋通●×△番地。
京都風に住所を。
碁盤の目。
縦と横で場所がわかる。
Microsoft Excelのセル番号。
レーダー作戦ゲームで魚雷命中。
経度。緯度。
携帯を替えてもGPSはオフ。
自分の所在を赤の他人に教えるほどお人好しじゃない。
NYでは迷わない。
昭和の食卓にあり、ぼくの食卓にないもの。
先っぽが緑色のハッカで塗られた爪ようじ。
アジシオ。
そして味の素。
味噌汁にサッサ。
漬物にパラパラ。
とりあえずひと通り皿にふりかける。
文化の味。
魔法の白い粉を最初にふりかけるのは父親の特権。
夕飯の儀式のようなものでもあった。
無言。視線を集めるのは父の右手。
MSGといえば……。
ジョージ・ハリスンの一声で友人たちが集まった。
ボブ・ディラン、エリック・クラプトン、リオン・ラッセル、ビリー・プレストン、ジェシ・エド・ディヴィス……。
たぶん最初の大規模チャリティー・コンサートが開かれた場所。
ポップ音楽の殿堂.
スタン・ハンセンが人間発電所:ブルーノ・サンマルチノの首を折り、WWWFのベルトを手にしたリング。
千代の富士が土俵入りをした。
もちろんNY Knicksの本拠地でもあるスポーツの殿堂。
Madison Square Garden。
今、MSGと言えば危険な調味料Mono Sodium Glmateとしての方が有名で。
それでも、ぼくのなかでは殿堂が勝つ。
うちの食卓にあったのは「味の素」ではなく、
「ハイミー」でもなく、
「いの一番」
今でもあるのかなコレ。
きっと世間を斜に見てしまうのは親譲り。
さて、どっち?
カレー粉もハウスやSBではなく、「ハチ」というブランドだった。
ハチの絵が描かれていた
白コショウもそうだったはず。
とんかつソースはイカリ・ソース。
キューピー・マヨネーズは瓶入りで、次に味の素のものになった。
星型に切られた絞り口に子どもの心は踊る。
醤油は計り売り。
酒も計り売り。
いったいどっちに似たんだろう?
妹に問うと、間髪を開けずに指摘する「お●さんでしょ」
移築のために旧い建物を解体するとき、
昔から大工さんは柱に番号をふっていっていたらしい。
南から北へ「い、ろ、は……」
東から西へ「一、二、三……」
南東の端にある柱が<いの一番>。
そういえば子供の頃、映画館の木製椅子にも白ペンキで書かれてた。
<はー七>
将棋や囲碁の棋譜も、駒の、石の場所に住所をつける。
棋士の頭には棋譜が入っていて、どこまで歩いても苦にならないらしい。
生活が将棋。
将棋の生活。
9X9な生き方。
九九八十一。
理にかなってる。
「東京は疲れる」と京都出身の友達は言う。
東の京都は、京都とは違う。
東京では客に道を訊くタクシー・ドライバーも珍しくないらしいが、
その点ニューヨークは碁盤の目だから教えやすいし、覚えやすい。、
たまに一方通行を知らず、結果として遠回りになってしまうドライバー。
ハイゴチソウサマ。
一番居心地の悪いのがGPSをチラ見しながらハンドルを握る奴。
「えー、ご住所は?」
ドアを閉めた途端に飛んでくる言葉。
碁盤の目。
自分の場所がはっきりしているのはどこか安心感がある。
自分の場所。
秘密基地。
さて、ぼくは今どこに?
ききたくもあり、ききたくもなし。
中学時代の必須クラブは。
1年生ー囲碁将棋。
2、3年生ー時刻表クラブ。
座ってるだけ。
高校では、ゲートボール。
立ってるだけ。
何の脈略もなく、ただラクという2文字のために。
何も残らず、ラクだけが残った。
だれに似たんだろう?