(東京都杉並区荻窪 すぎなみ詩歌館(旧・角川源義邸)))
なでしこや歌神に侍すさとめぐり
(なでしこや うたがみにじす さとめぐり)
角川源義
今日は荻窪の「青丹会」。
雨が降ったりやんだりの不思議な天候だった。
句会前、句会場のすぎなみ詩歌館(旧・角川源義邸)の庭を回ったら、蛍袋の花が咲いていた。
雨に濡れて美しかった。
今日はめずらしく最高点、まあ、清記に誤記があり、私が訂正をお願いしたので、私の句だとわかってしまい、気を遣ってくれたのかもしれない。
まあ、芭蕉を敬愛する句だから、そんなことがなくても僕の句と分かったかもしれない(笑)。
すぎなみ詩歌館のギャラリーというのだろうか、一室に源義先生の色紙が飾られていた。
ロダンの首泰山木は花得たり
(ろだんのくび たいさんぼくは はなえたり)
源義先生の代表句で、「二句一章」の代表句と言われている。
この句の解釈については以前、書いたことがある。
「花咲けり」ではなく「花得たり」に力強さがあり、「泰山木」(源義邸新居祝い)を贈られたことへの感謝があり、俳句・仕事・研究に邁進する源義の充実ぶりが示されている。
(文字摺草)
(撫子)
「文字摺草」「撫子」の花も咲いていた。
「撫子」は「初秋」の季語だがもう咲いている。
緑に覆われた中の「文字摺草」「撫子」の「紫」は実に美しい。
上記の〈なでしこや…〉の句だが、「侍す」とは「仕える」ということ。
「撫子の花」を愛でながら、歌の神に仕えながら、里巡りをしている、ということだ。
源義は「古代学」「民俗学」の研究者でもあった。
それゆえ「神」を詠んだ句が多い。
神の井やあかねにけぶる冬木の芽
かなかなや少年の日は神のごとし
お旅社に神おはさねば露けしや
御旅社に諸神泊つや小六月
歩行神に憑かれ旅すか青芭蕉
つかつかと神渡りくる鵙の雨
神留守の濤たかぶらす波ころし
銀杏落葉は女神のしとね湖ほろぶ
待春や鶴見岳の女神出でて舞へ
四月の雪女神に詣で余生感
神に嫁す朝ほととぎす声かぎり
その他にも多くの作品がある。
実際、源義先生の第三句集は『神々の宴』という名で、「古代復活」を詩業とし、折口学(折口信夫の民俗学)を俳句によって為そうとしていた。
源義先生は「俳句は述志の文学」とおっしゃっている。
もちろん「志」や「主張」を直接述べるのではなく、「季語」や「もの」に託して詠うのである。
私もそういう俳句を作りたいものだ。
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