七色遠景 -19ページ目


すべてを焼き切りたい思い


すべてを焼かれた自分

白い磁器の中で

燃える青い焔が

黒い漆器の中で

燃える赤い焔が

絶え間なく焼き尽くす

すべての世界を

膨大な靴を焼き尽くす匂い

膨大なフィルムを焼き尽くす匂い

鼻腔の粘膜に張り付く匂い

生と死を繋ぐ細い管を

見据えながら

焦げ臭い枕に

突っ伏していた夜

髪の毛の焼かれる匂い

骨の焼かれる匂い

誰をも許さない思い

誰をも裏切る決意

すべてを焼き切りたい思い

すべてを焼かれた自分



愛と勇気だけが友達さ


「愛と勇気だけがともだちさ」は、
アンパンマンのオープニングソングの歌詞なんですが、
これは大人でも充分聞き応えのある、
むしろ大人でなければ分からないような歌詞がちりばめられています。

「何が君の幸せ? 何をして喜ぶ
分からないまま終わる そんなのは嫌だ」

という一節なのですが、
この詩が上手く出来てるなぁと思うのは
「何が君の「幸せ」=何をして喜ぶ」
という幸せの定義を最初にしてくれているところです。
いきなり幸せについて語られても、で、幸せってなんなのさ?と思うけど、
「何をして「喜ぶ」」ことこそ幸せなんだと。単純にして明確。

そして、「分からないまま「終わる」」っていうのは「人生の終わり」でもあるのかと。

つまり、幸せ(何をしたら喜べるのか)を知らないで死ぬのは嫌だと。
これが分からないまま終わる人って、結構多いのではと思います。
うちの母にも物心ついた頃から、
あなたはああしてこうすれば幸せになれる、と教わってきたわけですが、
案外、そういうステレオタイプだけでは幸せになれないものなんですよね。
人から褒められる生き方、名誉な生き方であっても、
積み重なる日々を喜べないと
多分それが「何をして喜ぶ」ことと繋がらないからじゃないかなって思います。
必死で頑張って、親や周囲の興味は一時的に引ける結果になっても、
周囲の喜びが自分の幸せに繋がらないこともあって、
どこかその褒められる何か、の先に淡々と続く毎日が虚しかったような。
わたしは学生時代までいつも、
自分より他人に褒められる生き方を取って来てしまったので、
(今はすっかりそんな生き方から、ドロップアウトしてしまいましたが)
「分からないまま終わる」怖さを知っているが故、
考えさせられてしまうのです。

ちなみに、アンパンマンのパンを分けることは、キリスト教由来だと思いますが、
一つのパンを二人で分けることは、「copan」=「友達」という意味があるそうです。

愛と勇気だけじゃなくて、パンを分けた友達がいっぱいいるんですね、
アンパンマン。それゆけ!

(2003.8.14)

リスの実


冬になると 


丘の上のおおきなその木には


丸くなったリスが


いっぱいいっぱいなっている

リスの木を ゆさゆさゆらすと


実ったリスがいっぱいおちてくる

リスの実を一つひろって


それから

たくさんあつめて


スカートにいっぱいのっけて

おもいおもいと


スカートの上でころころ転がしながら

おうちに帰る


たくさん取れたリスの実を


ふとんにならべると

おおきなしっぽに顔を埋めていた


リスがもぞもぞうごきだす


ひろってきたたくさんのリスたちと

いっしょにねむる


ねているときにふまないように

リスたちはすこしたかいところにならべて


ふとんをこしらえる

リスはさむいから


またリスの実にもどって

丸くなってねてしまう


窓辺にならんだリスたちは


月のひかりをあびて

すやすや寝息をたてている



春まで寝息をたてている



カナリアと少女



赤いモヘアのセーター


ショートボブの黒髪の少女

その手の中に黄色いカナリア

がらんとした空いたままの部屋の

焦げ茶色の板張りの床

少女は細い体を曲げて

白い壁に背中をつく

手の中のカナリアを眠らせようとする

白い空

木枯らし吹き込む

出窓の向こうから

パトカーのサイレン

少女は何も

思うつもりは  なかったのに

少女の手から

小さなカナリアが

羽ばたいて

窓から飛び出してゆく そのまま消える

少女は初めて  鳴き声を聞いた

白い空


その時  少女は


髪も掻き上げず

俯いたまま

思ってしまったことに

気がついた


猫キック


飽き足らない


くじらの絵を描いて呑み込む

飽き足らない

足の指をすべて伸ばして開いて

各自勝手に動くきのこみたいで

飽き足らない

電話のメモリ数字の羅列をボタン一つで全消去

飽き足らない

いつか深夜TVで見たタイのゲイのキックボクサーみたいに

首から原色の花輪下げて

しっぽの長い猫みたいに軽やかに舞って

ミニスカートの中に黒のボクサーパンツ履いて

出来れば この赤外線センサーの自動扉が開く前に

ニ三発 ハイキック お見舞いしてやりたい