カナリアと少女 | 七色遠景
赤いモヘアのセーター
ショートボブの黒髪の少女
その手の中に黄色いカナリア
がらんとした空いたままの部屋の
焦げ茶色の板張りの床
少女は細い体を曲げて
白い壁に背中をつく
手の中のカナリアを眠らせようとする
白い空
木枯らし吹き込む
出窓の向こうから
パトカーのサイレン
少女は何も
思うつもりは なかったのに
少女の手から
小さなカナリアが
羽ばたいて
窓から飛び出してゆく そのまま消える
少女は初めて 鳴き声を聞いた
白い空
その時 少女は
髪も掻き上げず
俯いたまま
思ってしまったことに
気がついた