Deus Ex:Human Revolution(デウス・エクス):IGNレビュー日本語訳(1) | みらいマニアックス !

Deus Ex:Human Revolution(デウス・エクス):IGNレビュー日本語訳(1)

$みらいマニアックス !

大作について回る過剰な宣伝は、あまりにも太陽の近くを飛んだイカルスのように、しばしばそのタイトルを不安定なものにしてしまう。あまりにも多くを約束した挙句、結局はできることしかできずに空から墜落してしまうのだ。
Eidos Montreal氏は、本作、Deus Ex: Human Revolutionに多くのことを約束していたが、それがどれほど成功するか、ユーザの期待、もう十年以上昔の前作にアサインされたポテンシャルという熱い炎の中で燃え尽きてしまわないのか、それを予想することは困難だった。熱い期待は既にDeus Exの続編に火をつけ、すべての道理も言葉も越えてDeus Ex: Human Revolutionを責め立てた。だがダイダロス(※1)よりもずっとよいことだが、Montreal氏はDeus Exに正しく飛べるだけの翼、焼け焦げの跡もほとんどない真っ白な翼を与えたのだ。
(※1)訳注:イカロスの父。ロウで固めた翼を息子のためにつくった。

本作は、半ば閉じた蓋目を通して見たような未来を舞台にしている。ブレードランナーとロボコップの間のような未来、革命的な科学的発見のユートピアと、そこからとり残された人々のディストピアだ。主人公アダム・ジェンセンは、世界に広がる陰謀に巻き込まれていく。そこでは有用だが一方で危険なオーグメンテーション・テクノロジ(人体強化技術)が重要なキーとなっている。アダムの雇い主、そしてかつての恋人でもあったミーガン・リードは、人間の潜在力を完全に"ロック解除"することができる画期的な技術の最先端だった。しかしプレイヤーが"アレックス・マーフィーだ(※2)"とつぶやく前にリードは死に、ジェンセンは瀕死の重傷を負って手術台に横たえられ、選択の余地もないままに手、足、肺、そして目を取り付けられてしまう。 ポスト人間の時代、人間らしさの未来への衝突コースだ。
(※2)訳注:アレックス・マーフィー巡査。殉職後、ロボコップに改造される。

$みらいマニアックス !

本作の大部分はジェンセンのクエストによって進行する。世界中の主要都市のハブで展開するミッションを通じて、巨大な陰謀が次第に明らかにされていく。それぞれのハブではジェンセンの調査を通してメインとなるプロットが進行する一方で、ローカルサイドでミッションが追加される。これは他のRPGで批判されるようなお使いミッションではない。各ミッションは重層的なもので、様々な角度から調査することができる(しないこともできる)。考慮すべき視点はいくつもあり、行動の結果はしばしば予期しない方法でその後のミッションに影響してくる。このことは本作の全体を通じて、ある選択がなんらかの結果をもたらすという感覚をよく演出している。

プレイヤーから見て最もわかりやすいのは、チョイスするオーグメントという選択肢だろう。プレイする中で応用ポイントを獲得することで、プレイヤーは新しい能力のロックを解除したり、アップグレードすることができる。あるプレイヤーと別プレイヤーのプレイでは、オーグメントの選択で最も大きな違いが出る。多種多様な能力の中から、プレイヤーは自分のプレイスタイルによってオーグメントを選択しなければならない。端末をハッキングしだれかのアパートの隠された秘密を発見したいだろうか? だがその場合にはプレイヤー視力をアップグレードして壁の向こうを見たり、まっすぐに10フィートをジャンプしたりすることはできなくなってしまう。少なくともすぐには。

みらいマニアックス !

前作を思い出せば、Deus Ex: Human Revolutionでどんな行動をすることができるかがわかる。プレイヤーはすぐにゲームの用語を理解するだろう。一度ゲームの用語を覚えてしまえば、プレイヤーが解決策を考えることができた場合、考え付いた解決策はおそらく実際にやってみることができる。ステルスで解決してもよい、銃撃戦で解決してもよい、それらを組み合わせる余地は非常に幅広いものだ。

このゲームで、自分のプレイスタイルや特定のチョイスのために不利になってしまった、と感じたことはない。選択には長所も短所があったはずだが、いつも特にうまいやりかたを見つけたと思い、また自分をスーパーマンのように感じていた。Montreal氏は、プレイヤーをうまくおだてていろいろなことを試させるのが抜群に上手い。プレイヤーにとってゲームのルールを出し抜いているように感じるのは愉快なことだ。Deus Ex: Human Revolutionはプレイヤーに、まさにプレイヤー自身がそれに値するという、ある種特別な満足を与えてくれるのだ。本作はできそうなことは何だってやってみようという気にさせてくれるし、やってみたことはいつも多かれ少なかれプレイヤーを満足させてくれる。プレイしているのが冷たいサイボーグなのか、苦しめられているが共感の持てる元警官なのか、ステルスでいくのか直接のアクションでいくのか、プレイヤーの選択がゲームの行く末を決めるのだ。

$みらいマニアックス !

プレイヤーが体験するものは、考え抜かれ、まとまりのある演出に包まれている。Human Revolution は、未来的なサイバーパンク小説にインスパイアされてはいるものの、そのアイデンティティーはもっとずっと古いものだ。色彩の趣味には、気のめいるような未来の平坦な描写ではなく、ティツィアーノやレンブラントなどのヨーロッパの画家たちの作風をまとっている。建造物、ファッション、ボディアーマー、そして華やかに装飾されたオーグメント自体、どこでもイタリアのルネサンスに範をとったデザインをそこかしこに見ることができる。


[1] [2]