
修正版を再度アップしていきます。レスターの物語(3)から修正版を掲載致します。
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1ヶ月の間、彼は坐り、絶え間なく自分自身を深く探った。最初に、彼は医師の命令に従おうと毎日大半の時間をベッドの上で休んでいたが、それを続けていられなくなった。彼の精神はじっとしているには働きすぎており、この新しい探求は、今まで彼が生きてきた中で、もっともワクワクするものだったからである。彼は他のプロジェクトでそうしてきたように、試す事と経験を通して熱心に自分を探索した。彼は自分自身で一問一答を行なった。最初に質問をなげかけ、答えが正当であるか否か確証するまで、可能な限りの答えを探った。このやり方を通して、彼は最初の大発見をした。初めて本当の答えを見つけたのである。
彼が自己探索を始め、幸福という事への答えを探してから凡そ1ヶ月後の事であった。 彼は既にいくつかの答えを排除し、もう1度自分自身に問いかけた。「幸せとはなんだろう?」と。
今回浮かんだ答えは「幸せとはお前が愛されている時に感じるものだ」この答えは単純なものに思えた。
彼は続けた。「OK.今お前は幸せだと言えるかい?幸せだと感じているかい?」
答えは「ノー」であった。
「分かった、それでは、お前は愛されていないという事だな!」というのが結論だった。
「いや、そうとは限らないぜ」と反論した。「家族はお前を愛しているじゃないか」
ここで彼は問答を止め、考えた。彼は病院で本当に具合が悪かった時の家族の心配した顔を脳裏に思い浮かべ、どこかに長期滞在し帰宅した時の家族の目に浮かんだ喜びを思いだし、「調子はどう?兄さん」と電話で話した妹のドリスの声を聞いた。その通り、彼は愛されていたのだ。それは間違いなかった。
そして、彼を愛した女性もいた。もし彼は求婚したら、すぐに彼と結婚したであろう女性を1人以上彼は思いだす事が出来た。なぜかというと、その女性達が彼に求婚したからで、彼がそれを断った時、その女性達との関係が壊れていたのである。
友人として彼を愛した男性もいた。小さい頃からずっと知っている男性、あらゆる困難を通り抜ける間、常に支えてくれた親友達、定期的に近況を伺って電話をくれる人、共に過ごして楽しんでいる友人、皆彼を愛していた。
このような愛がありながら、彼は幸せではないという事はショックだった。愛されているという事は幸せという事の答えではないという事が明らかになり始めた。彼はその答えを廃棄し、新しいアプローチを試みた。
「きっと幸せとは何かを達成した中にあるんじゃないか」彼はそう考えた。ラトガース大学の奨学生試験に通った時、ケルビネーター社が給料を上げてくれた時、最初にアパートを所有した時、ヒッチング・ポストをオープンした時、カナディアン・ランバー社の掌握した時を思い出していた。確かに彼は自分自身にプライドを感じていた。しかし幸せだったか?いや、それは彼が幸せと呼ぶものではなかった。
「それじゃあ、オレは今まで幸せな時があったんだろうか?もしあったとしたら、それはいつだったのか?」
最初の質問は簡単だった。もちろん彼は幸せな時があった。しかし、具体的にはいつだったのか?
彼はその事について考え始めた。彼が何年も前に仲間とキャンプに行った夏の日。その時彼は幸せだった。もちろん、四六時中常にそう感じていた訳ではない。それでは具体的にどんな瞬間幸せだったのか?彼の心に突然浮かんだのは、ある夏に友人であるサイがテントを張っているのを手伝った時の映像だった。レスターは彼を手伝い、お互いに笑い、自分達の友情関係に満足し、お互いに気分が良かった。その時は幸せだった。彼は思い出し笑いをしていた。今になってもその時の事を思うと気分が良かった。
「その他に幸せだった時はあっただろうか?」彼は問いかけた。次に彼が思い出したのは、友人のミルトンが大学の時に駆け落ちした時に感じた事であった。それは誰も知らる筈のない事だった。しかしミルトンは一番の親友であるレスターにだけは打ち明けたのだった。彼はその時とても幸せだった。それはミルトンが彼にだけ秘密を打ち明けたので特別に感じたからだろうか?彼は内省し、そうではないと分かった。特別扱いされたからではない。それはミルトンの顔の表情、彼の新妻について、如何に彼女を愛しているか語っている様、それらは大学を終るまで待てないというものだった。レスターは瞬間的に羨望からくる心の痛みを感じたが、しかし彼の友人の顔が愛で輝いているのを見て、レスターはミルトンのために幸せを間違いなく感じていたと分かったのだ。彼は何年も経って、目を閉じ、その情景を思い出している今でさえ、幸せが湧き上がってくるのを感じた。彼はその時まさしく幸せだったのである。
彼が過去を回想し続けている間、幸せな時を思い出すのがどんどん速くなっていった。彼はジュンの事を思い出し、車でデートに誘い、愛情で胸が躍りだし、彼女に会うのが待ちきれなかった事を思い出した。その時、彼は幸せだったのである。
それからネッティがいた。ああ、何て事だろう。彼は本当に彼女の事を長い間思い出さなかった。今でも本当は彼女について考えたくなかった。彼女にはあまりにも多くの心の痛みが伴っていた。しかし、彼女の事を思い出したのであった。彼は生涯その痛みから逃げ続けていたように思えた。そして彼は走り続ける事に疲れたのだった。我慢できる限界にきて、彼はもうこれ以上走る事が出来なくなったのであった。そこで、彼は無理をして見つめ、自分に問いかけた。
そうだ、彼はネッティと一緒にいて幸せだった。彼女との記憶が頭に浮かんだ。彼女をあまりにも愛しく思い、彼女の腕を掴んで抱き寄せようとした時の事、パーティーで彼女に思いがけなく出会い、一目ぼれした時の事。彼女の笑顔を思い出し、陽の光りで輝いている彼女の髪、一緒に勉強をしている時の彼女の真剣な表情、淡い花のような彼女の香り、彼女の笑い声、「愛してるわ、レスター」と夜に囁いた彼女の柔らかい声、そういう記憶が浮かんだ。
彼は椅子に深く腰をかけたまま、映像が流れ込み、彼の心をよぎるのに任せた。長く持ち続けた痛みも流れるままにさせた。彼の胸は、注意深く立ち上げ築いたダムを崩壊し、初めて失った恋人ネッティを思い嘆きの涙を流すまで痛んだ。哀しみは底なしの痛みと孤独感から立ち昇ってくるように思えた。何時間もそれは続くと思われたが、終った時、体力が尽き果て、弱ったように感じた。彼は可能な時に椅子からベッドまで這って行って、死人のように眠った。
続きます。

レスター・レベンソンさん 出典:http://lesterlevenson.org/、