子どもを虐待から守るために地域にできること | 和光市世代間交流会

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人から人へ伝えていく思い、世代から世代へ受け継ぐ生きることの価値・・・関係性を再構築していくために、地域でささやかな活動を続けています。

きょうは、世代間交流会としての活動ではないのですが、NPO法人こども・みらい・わこう として主催した「子どもたちを虐待から守る地域ネットワーク学習会」について書いてみたいと思います。

この学習会は、3週間続けて3回にわたり開催するものですが、11月13日(月)に、第1回 『子どもを虐待から守るために地域にできること』 を、国立保健医療科学院・中板育美先生を講師に迎えて行いました。

この講座では、こどもの虐待に対処するために知っておくべき基礎的な知識と、実働的なネットワークを構築していくために必要なことを、豊富な事例を交えて話していただきました。

中板先生のお話を聞いて、胸にずしりと受け止めたことは、いくつもありました。

私が乳幼児を育てていたのは、もう10年以上前です。2歳違いの男の子3人(下が双子)の子育てでしたが、正直なところ、つらかったという感覚はあまりありません。けれども、今子育てをしているおかあさんたちの閉塞状況は、多少なりとも理解できるし、親がどう変わったかということよりも、今の子育ての現実に寄り添うしかないのだと思います。子育て支援は、母親(父親)としての’あるべき’論を提起することではないし、どうすべきかを説くことでもなく、「決して責めない人、裏切らない人、安心できる人、見捨てない人」 としてそこに自分を「差し出す」ことなのだと、肝に銘じなければならないと思いました。

「どんな親であっても、最初から子どもを虐待しようと思う親はいない」 「親も変わっていける。どんな親であっても、子育てを通した自分らしい豊かさを感じることができるためのチャンスが保障されている環境を守ること」 ・・・行政・専門職・住民それぞれの立場で、できることをしていく実働的なネットワークが、この環境を支えていくということなのです。

これは、本当に重く困難な課題です。それぞれの立場で、覚悟を決めなければならないと思います。本気で、支えていくために必要なことの出来る人を見つけて、つないでいかなければなりません。形式的なネットワークでは役に立たない。「対応しました」ではダメなのです。

この課題を胸に重く受け止めて、帰宅したら、またもや虐待のニュースが流れていました。保育園に迎えに行けば、嬉しそうに駆け寄ってきた我が子、手をつないでしばしば散歩をした我が子を、暴行し瀕死の状態にして水路に遺棄した事件です。幼い子どもの最期の思いがどんなだったのかを思うと、本当にやるかたない気持ちになります。このような事件に接すると、それでも、人は変わっていけるだろうか、そのために地域にできることがあるのだろうか・・・と暗澹とした気持ちになってしまいます。中板先生の深く重い提起をしっかりと受け止めるためには、もっと多くのことを知り、感じ、考えなければならないと思っています。

けれども、虐待する家庭から子どもを分離して、当面の命の危機からは救えても、それだけではその子を本当に救ったことにはならないということは、理解できます。それぞれのケースで、とるべき道も違うでしょう。

中板先生のお話を聞いて、もっとも感銘を受けたのは、多くの悲惨なケースを見てこられた先生が、なお「人は変わってゆける。親も成長する。分離するだけでなく、たとえ低空飛行でも、親と子が一緒にいることを喜びとできるように地域で支えていくこと」を提唱されたことです。根源的な人間への信頼があり、そこにまた、この社会に生きる希望もあると思いました。