<Abstract>
We wanted to study the present-day teaching of mathematics from the historical and cultural point of view. Recently the media has reported that Japan ranked lower than before in the world's elementary-level mathematics achievement test. Therefore, we decided to find out the causes.
We supposed that the competency in mathematics of senior-high-school students is related to arithmetical competency cultivated when they were in elementary school; accordingly we focused on the process of teaching arithmetic in elementary schools today. Our hypothesis is that the main cause of the decline in arithmetical competency is the increase of the number of the students who dislike arithmetic. In this study, this hypothesis is examined from different points of view, including comparisons with the way of teaching in the past, and with how it is done in other countries. Some issues and possible solutions are discussed after distilling the problems of how arithmetic is taught in Japan today.
<要約>
私達は、数学について、「歴史的、文化的、現代的に調べてみたい!」と思った。そこで、今日さまざまなメディアで、日本の算数学力の順位が下がっているといわれているのでその原因について調べてみることにした。私達は、高校での数学の能力は小学生のころに培われた算数能力が関係しているのではないかと考え、学力が低下していると言われる現在の算数教育の在り方について着目した。本研究では、算数の学力低下の最大の原因は算数嫌いの増加によると考え、過去との比較・他国との比較なども含めさまざまな視点から調査研究を行い、現在の日本の算数教育における問題を明らかにし、これからの課題や解決策を考察している。
・研究の流れ
算数教育、算数学力についての現状を確認し、「歴史的、文化的、現代的」というテーマに基づいて、過去の算数・数学の学習状況について、塵劫記に注目して調べ、今の教育との相違点や生かすべき点について考える。また、市内の小学校先生方に、アンケート調査にご協力いただき、現在の教育や、これからの教育についいての考えを深めた。
・学力低下の現状
OECD(経済協力開発機構)のPISA(学習到達度調査)によると(右図参照)、日本の順位は、2000年、2003年、2006年と毎回順位・平均得点ともに下がってきていることが分かる。
また、文部広報(平成12年)の数学に対する意識調査によると、中学2年生の数学が「好き」「楽しい」という意識が4年間で減少し、また、世界平均に比べ、日本の平均値がかなり低いことが分かる。
マスコミなどの報道も踏まえた上で、この現状より、日本の現在の算数・数学の学力低下には、算数・数学嫌いの増加が大きく影響していると考える。そこで、当初の研究テーマである「歴史的、文化的、現代的に算数・数学を深める」をもとに研究を行う上で、比較的やりやすいであろう小学校の算数教育について研究することにした。
・日本の数学の歴史
日本の数学は、紀元前200年頃の「周髀算経」、100年頃の「九章算術」など、中国から伝えられたものが最初で、大和時代にまでさかのぼる。
奈良時代になると、大宝律令により大学寮の制度がしかれ、中国の九つの算経を学ぶことになっていった。
平安時代には、実用計算が主となり、貴族の間では「九九」がメインになっていった。万葉集には九九を取り入れた和歌が多数ある。
室町時代に入ると、九九と算木による簡単な計算程度の教養で十分であったと思われる。
安土・桃山時代になると、商工業が盛んになり中国から伝わった「ソロバン」が改良され、広く使われるようになっていった。
ソロバンが一般庶民に普及するとそれに伴う計算方法や練習問題を記した書物が必要になってき、江戸時代には多くの数学書が刊行された。その中の一つが塵劫記である。塵劫記については後に述べるものとする。
航海するには天文学と天体観測のための数学の知識が必要であり,日本に来航したポルトガル人宣教師達もそれらの知識を身につけていた。また、中国からは漢訳されたヨーロッパの数学書などが日本に輸入され、今日用いられている多くの数学用語はこれらの漢訳数学書からのものである。幕府が長崎に海軍伝習所を開設するなど様々な教育所ができた。
幕府は洋算を多用し始め、国家の最高機密であった造船工学をはじめとして科学技術書は西洋数学によって書かれていることから「洋算」が主流となり,「和算」は明治初期に学校教育からはずされ滅亡の一途をたどることとなった。
・塵劫記について
江戸時代に入り、ソロバンが一般庶民に普及してくると、それにともなって計算方法や練習問題を記した書物が必要になってきた。そこで、一般庶民の需要に応えるべく、多くのテキストが刊行されたのである。
そこでベストセラーかつロングセラーとなったのが、江戸時代前期に和算家・吉田光由が、明の算書「算法統宗」をもとにして書いた「塵劫記」である。1627年に発行された塵劫記は、数の桁の名称や単位、掛け算、九九などの基礎知識のほか、面積の求め方などの日常生活の密着した身近な題材をもとにしており、一冊で当時の生活に必要な算術全般を網羅できたという。挿絵やゲームを載せることで、親しみやすいように書かれており、商人・職人から武士まで幅広く人気を得ることができた。
また江戸時代の多くの学者に影響を与えたことでも知られており、後に和算の大家となった関孝和や儒学者の貝原益軒なども若いころ『塵劫記』を用いて数学を独習していたことがわかっている。
また、1641年に著された新篇塵劫記の最後に、光由は12題の回答の付いていない難しい問題を載せた。これが、継承遺題とよばれるもののはじまりである。その後、多くの和算家がさらに難しい問題を載せていき、これが和算の進歩に大きな役割を果たした。★つづく
・アンケートについて
現場で働いている先生方の生の声を聞くために、和歌山市内11校51名の先生方に3年制以上の現在の算数教育事情についての4つの項目についてアンケートを実施した。
① 小学生はどの単元が嫌い・苦手ですか
割合が苦手な主な理由は、
② 児童が算数に興味を持つために授業で
工夫されていることは何ですか
・物を使い、視覚に訴える授業にする
・問題の内容を身近な内容に置き換える
・積極的に発表させる場を作り、自身をもたせ、褒める
このように、先生方は様々な工夫を凝らして授業をしています
③ 児童に算数に興味を持たせるために
苦労することは何ですか
・学力差がある中での他人数(30人以上)への授業
・視覚にうったえる教材作り
・時間が限られている
・苦手意識が強い子に、意欲を持たせる
④ 算数嫌いの児童は多いですか
・少ない(45%)
・多い(11%)
・問題や学年による(17%)
・その他(17%)
世間の通説では、「算数嫌いが増加している」といわれており、私たちもその仮定のもとに研究を進めていたが、このアンケートの結果より、実際のところ算数嫌いは増加していないということが分かった。また、文部科学省の調査でも算数嫌いは少ないという結果が出る。このようにして、私たちの「算数の学力低下は算数嫌いの増加である」という仮定は間違っていたことがわかった。
しかし、算数好きを増やすことに意味はあると考えたので、このまま研究を進めることにした。
・まとめ
算数嫌いは増加していないということがわかった。この理由について考えた結果、次の3つの原因が考えられる。
① 小学校の間は四則演算など比較的日常に密着した内容である
文章題として応用されない限りそうそう嫌いにはならない。
② 小学校の先生方は生徒にわかりやすいように授業を工夫している
アンケートで分かったように、「具体物を使い視覚に訴たえる」「問題を身近な場面に置き換える」など、先生方は生徒に分かりやすいように授業を工夫されているため、算数を嫌いになる生徒は少ないと思われる。
③ 受験のための勉強ではない
小学校での勉強は比較的、中学や高校での数学のように受験のための勉強ではないため、強制感・勉強への抵抗感が少なく、自主的に学習に取り組むことができるからだ。
以上より中学高校での数学の内容は、方程式・三角関数・微分積分など算数に比べ非日常的なものが多く、マスコミなどで言われている数学嫌いの増加やそれに伴う学力低下についてはやはり、中学校以降の教育が原因であるのではないだろうか。
よって数学の学力を上げるには、中学校の数学の授業を改善することが必要である。
また関連して考えられる学力低下の原因としては、ゆとり教育による学習内容削除・簡略化、教育時間の減少、自主学習時間の減少、家庭環境、娯楽物の急増、いじめ、受験競争を強制されることで発生する勉強への意欲の低下などが考えられるため、今後これらに対する対策が必要である。
これからの課題
「割合」について、外国の教え方を調べる。





