
Pop LiFe Pop FiLe #50

80年代はかなりの映画を観ました。 家庭用ビデオデッキが普及したこともその要因のひとつですが、2番館、3番館といわれた名画座が数多く残っていたこととも関係しています。それらの映画館は、ロードショー公開の終わった映画を2~3本組み合わせて格安で上映されていました。現在のように全席指定入れ替え制なんてものではなかったので、暇な時の時間つぶしにはうってつけの場所だったんですよね。ロビーでたむろしたり、同じ映画を何度も観たりしてね。
60年代映画、70年代映画、それぞれの時代の背景が当然 作品に影響を及ぼしているわけですが、80年代の映画と言えばまずはアメリカのエンタメ映画でしょう。 深刻なテーマにも思える作品でも、本質的には明るい作品が多いんですよね。それからヒット曲を生み出す機能も備えていました。人気アーティストとのタイアップですね。映画の一場面を切り取ってPV制作をしたり、そのヒット曲を含むサントラ盤がメガヒット・アルバムとなることも珍しくはありませんでした。81年のMTV開局が大きく影響しているのは言うまでもないことです。
というわけで今回は 映画が生み出したヒット曲・青春映画編 ということで。

JACKSON BROWNE / Somebody's Baby (1982)
ジャクソン・ブラウン最大のヒットとなったこの曲は、『初体験 リッジモント・ハイ』(1982) に収録されています。
80年代アメリカの、高校生たちを描いた学園コメディです。よくあるおバカでエッチな青春映画です。内容については、詳しくは憶えていません。若き日のショーン・ペンやフォレスト・ウィッテカー、ジェニファー・ジェイソン・リー等が出演していたことは、後に彼らが売れたさいに、「あ! あの映画のあの俳優だ!」と気づいたぐらいです。
映画館にダッシュで向かった理由はただひとつ。当時人気のフィービー・ケイツのトップレス姿が見たかったからです。大学時代、周囲にはフィービー・ケイツとソフィー・マルソーのファンが多かったんですよね。当時、イケメン・プロレスラーとして売り出し中の武藤敬司も、フィービー・ケイツのファンであることを公言していました。 お色気映画とも言える内容の映画ですが、カラッとしていて明るい映画です。やっぱり80年代の映画です。
いつも眉間にしわ、憂いを帯びた歌声でしんどい恋愛ばかりを歌っていたジャクソン・ブラウンが、なぜおバカな学園コメディのために軽快なポップ・ソングを書き下ろしたのか、その理由はわかりません。ジャクソンらしからぬこの曲、実は大好きです。
PATRICK SWAYZE / She's Like The Wind (1987)
1963年の夏、避暑地にやって来た17歳の少女は、ダンスのインストラクター、ジョニーと出会い恋に落ちる。
1987年公開の『ダーティ・ダンシング』。『ゴースト』で大ブレイクする以前のパトリック・スウェイジ主演の青春ラヴ・ストーリーです。ラヴ・ストーリーという枠には収まり切らないほどに、激しいダンス・シーンが印象に残る素晴らしい映画です。ヒロインのジェニファー・グレイも吹き替えなしでダンスシーンに挑んだそうですが、これがまた素晴らしい!
60年代が舞台の映画だけに、サウンドトラック盤には60年代ポップスが多く収録されています。 新録音にも素晴らしい曲が多く、サントラ盤は大ヒットしています。個人的な思い出として、87年には音楽ソフトの輸入業に就いていたのですが、このサントラ盤CDのアメリカ盤を、かなりの数量輸入してさばいた記憶があります。
サントラ盤は1988年のビルボード・年間アルバム売り上げの2位となる大ヒット。人気便乗とはいえ、一枚目に収録できなかった曲を集めた「MORE DIRTY DANCING」という続編アルバムまでリリースされています。こちらも年間チャート18位の大ヒット。
素晴しい曲が多い中で、主演のパトリック・スウェイジが歌う「She's Like The Wind」を選びました。2009年、57歳の若さで亡くなったスウェイジさん。 曲を聴いていると、映画での激しくエモーショナルなダンスシーンが蘇ってきます。
IRENE CARA / What A Feeling (1983)
80年代青春映画と言えば『フラッシュダンス』を外すことは出来ないでしょう。 そして80年代洋画が生み出したヒット曲、アイリーン・キャラの歌った「What A Feeling」も同様です。主演のジェニファー・ビールスとアイリーン・キャラの歌の組み合わせは、MTV系の青春映画のはじまりとしては奇跡であったと思います。
昼は溶接工、夜はナイトクラブのダンサー。プロのダンサーを夢見る女性のシンデレラ・ストーリーです。そして厳しい現実から這い上がるアメリカン・ドリームを描いた映画でもあります。 主演のジェニファー・ビールスは、それまでのアメリカ映画の女優の枠には収めることの出来ない魅力があったと思います。
評論家の中には映画を酷評する先生方がいたのも確かですが、僕自身は今でも好きな映画、忘れることの出来ない映画です。それは僕自身があの時代に青春の只中にあったことと無関係ではないと思います。当時、この映画に背中を押された人がどれだけいたでしょうか。それは、歌手になることやスポーツ選手になることばかりでなく、もっと現実的な夢を持った人たちも含めてのことです。
アイリーン・キャラさん、2022年に63歳の若さで亡くなっているんですよね。 彼女の "描いた夢が空を突き抜けていくような歌声" は,閃光の眩しさを感じさせるものでした。
