ルーツ・オブ・エルヴィス | Get Up And Go !

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「Roots Of Elvis Presley」。あるいはそれに類するタイトルのアルバムは、以前からいくつか商品化されています。 エルヴィス・プレスリーの音楽的ルーツを探ろう、というわけですね。

今年7月に公開された映画 『エルヴィス』 は、エルヴィスの音楽のルーツとも言えるバックグラウンドもしっかりと描かれていました。いわゆるプア・ホワイト(貧しい白人層)と呼ばれる家庭で生まれたエルヴィスは、メンフィスに移住後もやはり貧しい黒人たちの住む地域で育ち、そこで聴いたR&Bやブルース、ゴスペルが、自らの中に血肉化していったわけです。 その部分が映画としてきっちりと描かれていたんですね。

エルヴィス・プレスリーの音楽的ルーツは黒人音楽だけではないし、ここで数曲紹介したところで、彼の音楽的ルーツの全貌を知ることなど出来ませんが、映画を観た方も観ていない方も、「エルヴィス・プレスリーは、こんな音楽を聴いて育ったのか」ということで聴いていただければと思います。


Big Mama Thorton / Hound Dog
エルヴィス・プレスリーの歌唱で有名な曲なので、この曲のオリジナルがビッグ・ママ・ソートンであることを知らない人は多いようです。 ビッグ・ママの体格どおりの堂々の歌いっぷり。いかにも声量がありそうです。 映画『エルヴィス』にも登場します。

この映像は良く知られています。ギターは若き日のバディ・ガイです (60年代の映像と思われる)。 300ポンドの巨漢シンガーも、後年は別人のように痩せられていて、これもまたびっくりです。「ハウンド・ドッグ」は、1957年にR&Bチャートで1位のヒットとなりますが、エルヴィスがカバーしたことによってさらに有名になったそうです。





Arthur Gunter / Baby, Let's Play House
映画の中ではハイライト・シーンとも言える場面で、この曲は登場します。「ルイジアナ・ヘイライド」で、観客たちがこの若造は一体なんだ? と、静まり返って品定めをした次の瞬間に、ピンクのスーツで腰を振りながら黒人のように歌い、会場が熱狂に包まれるという場面で登場する曲です。

そのオリジナルがこんなにショボい曲なの、とガッカリしないでくださいね。 アーサー・ガンターというブルース・シンガーは、さらっと飄々として歌うのが持ち味のひとなので。ナッシュビルという、カントリー・ミュージックの聖地とも言える土地をベースにして活動していたがゆえ、あっさり風味の音楽になったのかも。ブルースにもいろいろとあるんですね。

1955年にヒットしたこの曲を、エルヴィスはサン・レコードですぐにで録音。作者のアーサー・ガンターは名前を残すことに。





Arther "Big Boy" Crudup / That's All Right
1946年に録音されたこの曲は、クルーダップの歌とギターに、ベースとドラムのリズム隊がついたトリオ編成です。ギターなどはけっこう雑にも聴こえますが、それがワイルドさにもつながり魅力にもなっています。そしてこの曲こそが・・・

1954年7月5日。 エルヴィス・プレスリーはサン・レコードのスタジオでこの曲を録音しています。「ザッツ・オールライト」はエルヴィスのデビュー曲なので、ロックの歴史においても記念すべき日であるわけですね。映画の中では、少年時代のエルヴィスが、ジュークジョイント(黒人たちの酒場、社交場)でのクルーダップの歌に聴き入るなんて場面で登場します。

この曲は後に、エルヴィスに憧れたロッド・スチュワートやポール・マッカートニー等によってもカバーされています。






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先週3日の土曜日、いつも聴いているラジオ番組「山本さゆりのミュージックパーク」(ラジオ日本:土曜20:00 - 21:00) の中で、エルヴィスの「イン・ザ・ゲットー」 を、対訳付きで曲紹介するコーナーで取り上げてくれました。70年代・80年代と洋楽を聴いてきた方なら、”山本さゆり" という名前を文字として見たことがないという人は、まずいないでしょう。DJ、音楽評論家だけでなく、アルバムの英詩の和訳を相当数されて来た方です。

「イン・ザ・ゲットー」 は好きな曲なので、このブログでも以前記事にしたのですが、山本さんの対訳でどうしても聴きたくてリクエストしたのです。 山本さん自身も「私も映画を観て、最後のエンドロールのところで "イン・ザ・ゲットー" が流れている間に、いろいろなことを思い出しました。マック・デイヴィスのこの曲をエルヴィスが取り上げたというのは、黒人が住む貧しい地域に彼も住んでいろいろな辛苦を舐めてきたのだろうなと。そう思いました」と仰っていました。

「イン・ザ・ゲットー」 の舞台はシカゴのゲットーですが、そこで生まれ育った貧しい少年の悲しいストーリーを曲にしたものです。何を言いたいのかと言うと、エルヴィスは成功を掴み大スターとなった後でも、貧しかった少年時代のことを、自らのルーツを、忘れることはななかったということです。

映画では波乱万丈のストーリーの後の、エンドロールでこの曲が流れましたが、その時、『エルヴィス』 は信頼に値する映画だと確信しました。