ザ・コミットメンツ | Get Up And Go !

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7月31日に、イギリスの映画監督アラン・パーカーさんが亡くなりました。長く病気を患っていたそうです。76歳でした。





振り返ってみると、アラン・パーカー監督の作品はほとんど観ていて、好きな映画が多いのです。映画館で観ることの出来た 『バーディ』(1984)。『エンゼル・ハート』(1987)。『ミシシッピー・バーニング』(1988)。『ザ・コミットメンツ』 (1991) などは特に印象に残っています。 青春音楽映画から社会派作品まで幅が広いのですが、ずっと記事にしたいと考えていた『ザ・コミットメンツ』は大好きな映画であるし、このブログとは相性が良さそうなので。





ザ・コミットメンツ(原題: THE COMMITMENTS)( 1991 / イギリス・アイルランド )
● 監督:アラン・パーカー
● 原作 : ロディ・ドイル
〇 出演:ロバート・アーキンズ / アンドリュー・ストロング / アンジェリナ・ボール / マリア・ドイル・ケネディ / グレン・ハンサード / ジョニー・マーフィ


ストーリー 本
物語の舞台は、アイルランドの首都ダブリン。 ソウル・ミュージックを愛する青年ジミー (ロバート・アーキンス) は、本格的なソウル・バンドの結成を目指し、同じ志を持ったデレク (ケネス・マクラスキー) とアウトスパン (グレン・ハンサード) の協力を得て、自らはマネージャーとなって自宅でオーディションを行い有志を集める。

性格に問題はあるが、抜群の歌唱を誇るデコ (アンドリュー・ストロング)。 エルヴィスやオーティスとも共演歴があると自称するトランペッターのジョーイ (ジョニー・マーフィ)。 家から祖母のピアノを運び出して参加したスティーブン (マイケル・アーニー) など、個性的なメンバーが集まる。 女性コーラス3人も加わりバンドとしての形が整い、バンド名を "ザ・コミットメンツ" と名付けいよいよ活動を開始する

最初バンドはまとまりもなくバラバラで惨憺たる出来。それでも目標に向かって進むバンドには結束も生まれ、ライヴを繰り返すうちに聴衆を魅了するほどに成長し人気は高まっていく。やがてはレコード会社からの契約の申し込みも来るのだが、もともとが個性的であったメンバーの間には衝突も生まれ、バンドは崩壊へと向かっていく。





カチンコ
数ある青春音楽映画の中でも、この映画がちょっと違うのは、主人公たちの夢を掴むための手段がロック・バンドではなくソウル・バンドであるということ。それから、どんよりとした空の下のアイルランドが舞台であるということでしょうか。

アメリカでもイギリスでもなくアイルランド。 アイルランドという国の抱えていた様々な問題をここでは語りませんが、この時代は基本的に貧しい。その貧しさが映像の背景から伝わってきても、この映画には軽やかでさわやかな感動があります。アメリカ映画のような押しつけの感動とは違った感動を生んだのは、ほとんどが無名のキャストによって構成された作品という事もあるのかも知れません。 言葉では上手く説明できないのですが、映画の中でのセリフに 「アイルランド人はヨーロッパの黒人だ」 というのがあっても、そこに悲壮感はないのがこの映画の良いところでしょうか。




同じ電車に乗ったメンバーたちが歌うのは、"行き先なんてどこだって構わない。東でも西でも" と歌う「Destination Anywhere」。 映画の中でも特に好きな場面です。


THE COMMITMENTS / Destination Anywhere
オリジナルはマーヴェレッツ68年のヒット。 ソウルの名曲カバーで構成されたサントラ盤も薦めます。


劇中のバンド、ザ・コミットメンツを演じた役者たちは皆 楽器演奏の経験を持つひとたち。 あるいはプロのミュージシャンとして活動している人たち。 この点も、音楽映画としてはリアリティを生んだ要因となっています。

演奏されるソウルの名曲たちは、多くの部分は彼ら自身の演奏のようですが、これがとても素晴らしい! 音楽映画として人気を集めることが出来たのは、これも大きな要因だと思います。




THE COMMITMENTS / Treat Her Right


圧巻はラストのライブシーン。 演奏されるのはオーティス・レディングの持ち歌として有名な「Try A Little Tenderness」。 とりわけ、デコを演じたアンドリュー・ストロングの歌唱は特筆に値し、この映画を最も盛り上げることとなったハイライト・シーンです。 監督のアラン・パーカーも一番のお気に入りの場面だとか。



THE COMMITMENTS / Try A Little Tenderness


ところでこれは公開当時では語れないことなのですが、バンドのギタリスト、アウトスパンを演じたグレン・ハンサードは、ずっと後の2007年、やはりダブリンを舞台にした音楽映画 『ONCE ダブリンの街角で』で、生ギター1本でストリートに立つ売れないシンガーソングライターを演じることとなります。

「ザ・コミットメンツ」のエピローグとなる場面、アウトスパンがやはり生ギター1本でストリートで歌う場面が映し出され、最近この映画を再び見て思わず笑ってしまいました。もしかしたら『ダブリンの街角で』 の監督、ジョン・カーニーは、アウトスパンの後日談としてこの場面から繋いだのかな、なんてね。これは余談ですが。
(◡ ω ◡)