
『Power To The Pop』 は、BeatleDNA を受け継ぐ曲を集めたコンピレーショCDです。 今回は、後半 [Disc-2] に収められた90年代以降のビートリッシュな曲たちをいくつか抽出して記事にしてみました。
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Power To The Pop #1
90年代のブリット・ポップ/インディ・ロック以降の世代と言うのは、BeatleDNA と言う事で言えば、孫の世代です。 ビートルズの音楽は、ポップ・ミュージックの古典、名盤、マストアイテムとして聴いていたであろうことは、当事者であるその時代のアーティストのインタビュー記事や発言などによっても明らかです。 自信過剰の暴言男、リアム・ギャラガーも 「ビートルズとストーンズは別格だ」 と,殊勝に言ってますからね。
ただ、同じ "ビートルズの遺伝子を持った音楽" でも、70年代・80年代のアーティストたちとは、かなりの違いが見られます。音の組み立て方、組み合わせ方のセンスの違いを言葉にするのは難しいのですが、古い世代よりも多くの音楽を通過しているということによって、バリエーションは豊かです。
"ビートルズ" はパーツのひとつにすぎないと考えているアーティストもいるでしょう。それから、ビートルズの時代以降には、パンク・ロックが登場したというのも、音の出し方 (特にギター) に違いが出てくる要因でしょうか。
COTTON MATHER / Camp Hill Rail Operator (1997)
コットン・メイザー 。 いやぁ、メチャクチャかっこいい! ジョン・レノンみたいだ! ジョンが未来型のロックン・ロールを携えて、地上に降りてきた感じさえします。 テキサス出身とあるけれど、なんか土地とのイメージが合わないようにも思えますが。
97年のアルバム 『KONTIKI』 に収録。全編でジョンのような歌が聴けるアルバムです。音楽性も幅が広く、アコーステックな曲もあれば、サイケなナンバーもあり。これはお薦めです。 ノエル・ギャラガーがこのアルバムを絶賛したと言うのはよくわかります。
マイク・ヴァイオラの 「When I Hold You In My Arms」 は2007年発表の曲。 イントロなしでいきなり歌、という所はいかにもビートルズ的です。 それにしても21世紀になっても、このような正統的はビートリッシュ・ナンバーが生み出されているというのが、何とも嬉しいところです。
この曲の収録されたアルバム 『LURCH』 を聴くと、ポップス黄金時代を思わせるキャッチーなメロディが詰まっています。総じてポール色がやや強い、といった印象。 新世代のポップ職人のひとりですね。1月に 日本独自編集のベスト・アルバムが発売予定。 聴きやすさということでは、この人ですね。
MIKE VIOLA / When I Hold You In My Arms (2007)
ところで、皆さんはビートルズではどのアルバムが一番好きでしょうか。 『ABBEY ROAD』 がやはり一番多いのでしょうか。 これは僕が音楽ソフト業界で働いていた頃に感じた、あくまでも印象の話です。 正確に統計を取ったわけではないのですが、オアシス以降のブリット・ポップ、あるいはインディ・ロックで育った世代には、『REVOLVER』 をベストに挙げるひとが多いように思います。
キーワードは ”革新性" でしょうか。 あのアルバムにある革新性、実験性というのは、その精神も含めてひとつの見本なのではないかと。 特に90年代以降の "若い" 作り手たちにとっては。 そんなことを、この [Disc-2] の孫の世代のビートリッシュ・ナンバーを聴いていて思ったのです。
インド皇帝からそのバンド名を拝借したというクーラ・シェイカーは、ブリット・ポップのムーヴメントが盛り上がっていた1995年に、ロンドンで生まれたバンドです。
「Shower Your Love」 は、インド音楽をまぶした60年代風サイケデリック・ロックです。 インドの民族楽器を取り入れているところからも、インドへの傾倒は相当なものだとわかります。 いやぁ、でもこの曲、BeatleDNA を抜きにして名曲ですね。 聴き込んでいくにつれ、ずぶずぶとハマっていきます。 そのように作られています。
KULA SHAKER / Shower Your Love (1999)
今年公開された映画 『イエスタデイ』 は、もしもこの世にビートルズが存在しなかったら、というパラレルワールドを描いた映画です。 その世界に迷い込んだ主人公がパソコンで検索すると、オアシスは存在していないことになっています。つまりは、ビートルズがいなかったらオアシスも存在しなかった、と言いたいわけです。
だとしたらこの 『Power To The Pop』 に登場するアーティスたちは、すべて存在しないってこと? まぁ、そんな単純なものではないと思いますが、歴史に If があるとして、もしもビートルズが結成されなかったとしたら・・・。 現在のロックは、いやロックのみならずすべてのポピュラー・ミュージックの形はかなり違っていたのではないかと。 そのようには思います。
アルバムの最後を飾るのは 「Don't Look Back In Anger」。
ノエルが歌うオアシスの名曲です。そして本ブログ、今年最後の曲にもなります。
OASIS / Don't Look Back In Anger (1995)
みなさま今年はありがとうございました。
良いお年をお迎えください。
