デ・ニーロ・アプローチ 狂気のデ・ニーロ 編 | Get Up And Go !

Get Up And Go !

音楽を中心に、映画、文芸、スポーツ など・・・。

より高く! より深く! けれど優雅に・・・ 冗談も好きなんですけどね (*゚.゚)ゞ






やあ! (*^ー^)ノ
みなさん、映画観てますか? 最近のロバート・デ・ニーロって、狂気の男を演じないですよね。 コメディとか多いでしょ。 まぁ 肉体そのものを変化させて、イカれた男を演じるにはしんどい年齢なのかもしれませんが。

"デ・ニーロ・アプローチ" というのは、ロバート・デ・ニーロの役作りにおける方法のことです。 役に合わせて顔かたちや体型まで変化させ、そして役にあった雰囲気までもを作り上げるようとする演技法のこと。 『タクシー・ドライバー』 (1976) では、役に成りきるためじっさいにタクシーの運転手まで経験しています。

現在では、体重の増減ぐらいは多くの俳優がやることだし、珍しくもないでしょう。 デ・ニーロは、それを極端な形で行った俳優として知られています。 もっとも有名なのは、『レイジング・ブル』 (1980) という、実在のボクサーを描いた映画のために、筋肉の塊のようなミドル級ボクサーの身体を作り上げ、さらにボクサー引退後のブクブクに太った体までも作り上げてしまいました。 増量は25㎏であったそうです。 『タクシー・ドライバー』 で見せた裸体からの変化には、凄まじいものがあります。

ロバート・デ・ニーロは独自のアプローチによって、変幻自在にどういった役でもこなしてしまうわけです。 ギャング映画から恋愛もの、コメディもやればホラーも厭わず。 とにかく幅が広い。そういった中でも、狂気を含んだ役どころに、デ・ニーロ・アプローチの真骨頂ともいえる凄味があります。

ロバート・デ・ニーロの出演作は多く、すべてを観たわけではありませんが、あくまでも個人的な基準で 「狂気のデ・ニーロ」 をいくつか選んでみました。
(刺激の強い映像あり。 注意!)





第3位 叫び....叫び
アンタッチャブル (1987年・アメリカ / ブライアン・デ・パルマ 監督) 
これは大ヒットした映画であるし、ケビン・コスナー、ショーン・コネリー、アンディ・ガルシア、そしてデ・ニーロと役者も揃い、ギャング映画としてはなかなかの傑作であると思います。

ブライアン・デ・パルマの作品は、残酷でどぎつい場面もあるため、アメリカでは非難されることもあるようですが、僕はこのひとの作品のファンでほとんど観ています。 ヒッチコックの撮影技法を随所に感じさせますが、アイディアが豊富で飽きのこない画づくりなのです。

デ・ニーロは 『アンタッチャブル』 では、シカゴの裏社会の帝王、アル・カポネの役で出演しています。 クライム・ストーリーでは、悪役がどれだけ恐ろしく強烈であるかによって、作品の質が変わってくるんですね。 ここでのデ・ニーロは、実際のカポネに似せて、頭を剃りあげ丸く顔を太らせて登場しています。

史実をもとにして作られたと言うこの場面の、デ・ニーロの表情がほんとに恐いです Σ(゚д゚;)。 配下のものたちとの食事会、笑顔で「チームワークこそが大切だ」 と説いたあと、裏切った手下をいきなりバットで撲殺します。 真上から捉えたショットが、デ・パルマ作品らしい画となっています。






第2位....叫び 叫び 叫び
ケープ・フィアー(1991年・アメリカ / マーティン・スコセッシ 監督) 
ロバート・デ・ニーロと言えば、マーティン・スコセッシ監督の名前を最初にあげる人が多いかと思います。 『タクシードライバー』 (1976)、『ニューヨーク・ニューヨーク』 (1977)、『レイジング・ブル』 (1980)、『カジノ』 (1995) などなど。

『ケープ・フィアー』 もスコセッシ / デ・ニーロ コンビによる作品のひとつ。 ここで演じた復讐鬼を、もっとも恐ろしいデ・ニーロとしてあげる人も多いかと思います。 登場した時から、もう尋常ではない雰囲気が画面を支配します。

デ・ニーロが演じた復讐鬼は、かつて少女をレイプし投獄された男。 「もっと減刑ができたはずだ」 と弁護士を恨み、出所後にその弁護士と家族に対して、独善的な思考で恐ろしい制裁を加えます。 かつての犯罪が、あまりに酷い方法によるレイプであったため、弁護士は必要以上の弁護をしなかったのです。

刑務所で鍛え上げたという設定の鋼のような肉体と、そこに彫られた刺青が恐ろしい ∑(゚Д゚)。 背中に彫られた十字架の両端には、真実 (聖書))と 正義 (剣))が天秤にかけられています。 体じゅうに聖書からの引用も彫られています。 真実と正義の名のもとに、裁きを加えるラストには悪寒を覚えます ∑(゚Д゚)。






第1位....叫び 叫び 叫び 叫び
ディア・ハンター(1978年・アメリカ / マイケル・チミノ 監督) 
この映画のロシアン・ルーレットの場面は有名です。 初めて映画館で観た20代の頃、観終えた後しばらくのあいだ、何度もあのシーンが頭をよぎりました。 

ロシアン・ルーレットというのは、回転式拳銃の弾倉に一発だけ弾を込め、頭に当て引き金を引くという、究極の運試しゲームです。 度胸試しとも言えるのか。 アメリカのロック・バンド、シカゴのギタリスト、テリー・キャスが、ロシアン・ルーレットごっこで命を落としています。僕はそのことで、この世にロシアン・ルーレットという恐ろしいゲームが存在することを知りました。

ベトナムの戦場でベトコンの捕虜となったマイケルは、親友であるニックとのロシアン・ルーレット対決を強要されます。 虐待として行われたわけですが、周囲で笑うベトコンたちは金を賭けゲームとして楽しんでいるという異常な状況。 この場面、気の弱い方は正視できないでしょう。

ここでのデ・ニーロの笑顔は、デ・ニーロしかできない狂気の笑顔です。 あの笑い顔は頭に焼き付き、それ以後どの映画のデ・ニーロの笑顔を観ても、『ディア・ハンター』 でのあの場面が頭をよぎったりします。 この場面、デ・ニーロの凄みある狂気の演技だけでなく、ニックを演じたクリストファー・ウォーケンの笑顔にも、その美形の顔立ちゆえの狂気を感じます。 また、ゲームを仕切るベトコンの親分の表情も恐い! あの場面によって、戦争の狂気そのものを描いたということなのでしょうね。




ベトコンに 「弾を3発込めさせろ」 と訴えたマイケルは、機転によって窮地を脱します。


そして・・・
1994年、デ・ニーロ・アプローチは、ついに人間の枠を超えてしまいます ( ゚ロ゚)



番外編....ドクロ
フランケンシュタイン (1994年・イギリス・アメリカ・日本 / ケネス・ブラナー 監督) 
ここでのデ・ニーロも恐いことは恐いのですが、正直 「デ・ニーロさん、なにもそこまでやらなくてもいいのに」 と、はじめは思いましたよ。 役作りと言っても、もうこれは人間の役ではなくて、死体をつなぎ合わせて造った人造人間の役ですからね。

フランケンシュタインと言うのはその怪物の名前ではなく、それを造った博士の名前です。このあたりは、藤子不二雄先生のアニメも誤解を生む要因になっているようです。 当然 "フンガー、フンガー" なんて言いません (^o^;)

でも映画としてはただのホラーというわけではなく、美しさ、格調の高さをも感じさせる秀作であると思います。 コッポラが制作に関わっているわけですからね。 「名前もつけてもらえなかった」 と、デ・ニーロが演じた怪物の言うセリフがあるのですが、身体の中に残る人間的な部分と、その醜悪な容姿とのアンバランスさに悲しさを感じるのです。

"愛" であるとか "命" であるとか、あるいは "尊厳" であるとか、そういったことを観終えたあとに深く考えずにはいられない作品です。 『フランケンシュタイン』 というタイトルから、敬遠している方もいるかもしれませんが、これはお薦めの映画です。







他にも "おっかねぇデ・ニーロ" はいくつもあるでしょう。 例えば 『ザ・ファン』 (1996) で演じた、地元大リーグチームの選手を追いかける狂信的なファンとかね。 「いや、あの映画のデ・ニーロもおっかねぇよ!」 とか 「こっちのデ・ニーロにもチビったぜ!」 とかの意見がある方は逆に教えてください。 お待ちしています。 叫び