2001年9月11日。 あれからもうすぐ15年ということになります。 あの時 世界中に伝えられたニュース映像の衝撃度は大きく、忘れることの出来ないものです。 まだ数年前の出来事のようにも思えます。
夜10時過ぎのニュース番組で中継された映像で最初に知りました。 でもその時は 「テロ」 という言葉は頭に浮かびませんでしたね。 「飛行機がニューヨークの高層ビルに激突したのか!? すごい事故だな」 といった感じだったでしょうか。
しかし、ハイジャックされた航空機がアメリカ国防総省に突っ込み、さらにホワイトハウスを標的にした航空機もあったらしい、というニュースを聞いたときには、「これはとんでもないことになる」 と、戦慄を覚えたのをはっきり記憶しています。
現在、大事故・大事件のニュースを聞けば、誰もが即座に 「テロかも」 と思うのは、あれ以来のことでしょう。 「21世紀はテロによる戦争の時代」 と多くの学者、評論家が口にしましたが、あれ以来、現在も進行形で世界が変わっていっているのは確かだと思います。
あの時、ジョン・レノンの 「イマジン」 がアメリカのラジオ局で放送自粛となったニュースを、音楽好きの方なら憶えているでしょう。 クリア・チャンネルという、全米で1000以上のラジオ局を所有する企業の幹部が、"放送自粛リスト" なるものを作って、自社の各局に向けて自粛の要請を出したわけです。 国をあげての戦争ムードに水を差す曲はいかがなものか、ということなのでしょうか。
事件直後、当時のブッシュ大統領の対テロ戦争を支持した米国民は90%に上っています。 大リーグ中継など見ているとよくわかりますが、アメリカ人は「やられたらやり返せ!」 の国民性です。 特に仲間がやられた場合にはやり返さなければ 「あいつはチキンだ!」 となってしまうわけで。 昔 黒田(現広島カープ) がメジャーで投げていた頃、チームメイトへの危険球に対してブラッシュボールで報復し、チームメイトや味方ファンから絶大な信頼を得たのを思い出します。
自粛曲と言っても、クリア・チャンネルの影響力を考えれば、"放送禁止" に近いものと考えて良いのでしょう。 「イマジン」 のような平和を訴える曲というのは、戦争ムードにはそぐわないということだったのでしょう。 あるいは 「想像してごらん。天国などないのだと」 という歌詞も問題であったのかもしれません。 音楽には世界を変えるほどの力はありませんが、世の中のムード(雰囲気) を醸成するぐらいの力はあるので、やはり何か政治的な圧力があったのかな、と考えてしまいます。
当時 「イマジン」 の放送自粛はニュースとして伝えられましたが、その "放送自粛リスト" にある曲は150曲以上あります。
以下がその主な曲。
・JOHN LENNON / Imagine
・LOUIS ARMSTRONG / What a Wonderful World
・KANSAS/ Dust in the Wind
・BRUCE SPRINGSTEEN / I'm On Fire"
・U2 / Sunday Bloody Sunday
・THE BEATLES / A Day in the Life/ Lucy in fhe Sky with Diamonds
・SAM COOKE / Wonderful World
・DOORS / The End
・GUNS N' ROSES / Knockin' on Heaven's Door
・THE CLASH / Rock the Casbah
・CALORE KING / I Feel the Earth Move
・LED ZEPPELIN / Stairway to Heaven
・ROLLING STONES / Ruby Tuesday
・FRANK SINATRA / New York, New York
・SIMON & GARFUNKEL / Bridge Over Troubled Water
・JACKSON BROWNE / Doctor My Eyes
・VAN HALEN / Jump / Dancing in the Streets
(→ アメリカ同時多発テロ 放送自粛リスト)
直接的に平和を訴える曲ばかりでなく、惨劇を思い起こさせる "Airplane (飛行機)" や "Bomb(爆弾)" "Fire(火)" という単語の含まれた曲など、多岐にわたっています。
同時多発テロの後、アメリカはそれを契機にアフガニスタン侵攻、イラク戦争へと続いたわけですが、2003年のイラク戦争開戦直前まで戦争賛成一色のアメリカ国内にあって、反対を訴えるということは勇気のいる行為であったと思います。
ブルース・スプリングスティーン、ニール・ヤング、パール・ジャム、マドンナ、パティ・スミス、アヴリル・ラヴィーン 等が反対派でした。
僕自身は、「暴力は暴力しか生み出さない」 と最初から強く主張していたマドンナが特に印象に残っています。 マドンナに対する見方が変わったのは確かです。
NEIL YOUNG / Imagine (2001)
テロ直後の9月21日。 救援作業で亡くなった消防士や警察官への追悼コンサート 「America: A Tribute to Heroes」 が行われ、そこでニール・ヤングは、自粛曲「イマジン」 を歌っています。 数ある 「イマジン」 のカバーの中でも、これは特別な響きを持った 「イマジン」 と言っても良いのでは。 癒しの曲としてじゅうぶん機能していると思うのだけれど ・・・
ニューヨークを愛したジョンは、この曲をどのように聴いたのでしょうか