JIMI:栄光への軌跡 | Get Up And Go !

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『JIMI : 栄光への軌跡 (原題 JIMI : AL IS BY MY SIDE) 』 (2014年 イギリス)
● 監督・脚本 ジョン・リドリー
● 音楽 ワディ・ワクテル / ダニー・ブラムソン 
● 音楽スーパーバイザー クリス・モレール
○ 出演 アンドレ・ベンジャミン / イモージェン・プーツ / ヘイリー・アトウェル / アンドリュー・バックレー 他



話題となっているジミ・ヘンドリックスの伝記映画 『JIMI:栄光への軌跡』を観てきました。 ご存知のように、ジミ・ヘンドリックスは60年代のロック・シーンに彗星のように現れ、ロックの歴史に数々の伝説を残した天才ギタリストです。 そのジミ・ヘンドリックスを本格的な劇映画として描いたわけですから、ロック・ファンとしては観ないわけにはいかないでしょう。

これはドキュメンタリーではなく、ジミの生涯の一断片をドラマとして描いた劇映画です。 ジミ・ヘンドリックスを演じたのは、ヒッホップ・ユニット OUTKAST のメンバーであるアンドレ・ベンジャミン。 こういった伝記映画は、主人公が本物にどれだけ似ているかというのが、物語にのめり込めるかどうかの重要なポイントとなるわけですが、ジミに関しては見た目はもちろん、喋り方や仕草、全体の雰囲気などかなり似ていると思います。アンドレ・ベンジャミン自身、ジミをアーチストとして尊敬(崇拝)しているわけですから、役作りの面での力の入れようというのは、もう推して知るべしです。

キース・リチャーズとかクラプトンとか、その他実在の多くのロック・ミュージシャンも登場し、似ていると思えるひともいるし、? のひともいますが、主役がOKなのでもうOKですね。






映画では1966年から67年の、ジミがアメリカの無名箱バン・ギタリストから、ロンドンに渡って成功を掴むまでの時期が描かれています。 ニューヨークのクラブで、キース・リチャーズの恋人であったリンダ・キースによって "発見" され、元アニマルズのベーシストであったチャス・チャンドラーに紹介され、そして燻ぶっていたアメリカを捨て音楽家としての成功を求めてロンドンに渡るわけです。

こういったアーチストの伝記映画って難しくて、ファンにはそれぞれの中で作り上げたイメージがあるわけだから、どうしたって批判的な意見も出るわけです。 昔 オリバー・ストーン監督の 『ドアーズ』 が公開されたときに、批判的な意見を随分と聞いた記憶があります。






アーチストの生涯を2時間で描くのは無理があるわけだから、今回のようなある時期にスポットを当てて、そこを掘り下げてドラマ化するという手法には大賛成です。 やはり以前観た映画で、ビートルズの成功前夜を描いた 『バックビート』 という映画が、ジョン・レノンとスチュアート・サトクリフの友情を軸にしてビートルズのある短い期間を掘り下げて描き、好評を得たのを思い出しました。

今回の映画も 『バックビート』 同様、ひとりのアーチストの青春映画としての側面もあります。まぁ こういったアーチストの苦悩、葛藤を描いた映画って好きなんですね。これも個人的な感想ですが、アーチストの伝記映画としては昨年観たパガニーニの生涯を描いた映画 『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』 に近い印象を持ちました。 傲慢で奔放でありながら、とても繊細な面を持ち合わせたふたりは近いものがあるかなぁと。 描き方としてですが・・・




飛び入りしたジミの演奏に圧倒され、クラプトンがビビるシーン。 ジミ・ヘンドリックスのオリジナル音源は使用許可が下りなかったため、ギターはワディ・ワクテルの演奏によるもの。特徴をよくとらえたジミ風の演奏になっています。



それにしてもとても幸せな2時間でした。 ロック・ファンなら知っているエピソードが次から次に出てきて、今までは活字でしか知らなかったそんな伝説的なエピソードが映像つきで私たちに提示されるわけですからね。

チャス・チャンドラーがジミにアメリカ行きを誘うシーン。 エリック・クラプトンに憧れていたジミは、条件として 「クラプトンに会わせてくれるか」。 映像つきです。

ジミが到着したロンドンの街並みには、あの伝説的な壁の落書き "CLAPTON IS GOD" の文字が・・・。 映像付きです。

そして、初めて観たクリームのライヴにギターを持って飛び入りし、クラプトンを打ち負かしたシーン。 映像つきです。

そしてそして、ロック史に残るビートルズのアルバム 『サージェント・ペパーズ』 が発売されたわずか三日後に、客席にいるポールとジョージの前でそれをライヴ演奏するシーン。 映像つきです。 聴衆が総立ちとなったこのシーンには痺れます! 67年6月4日のロンドン・サヴィル・シアターでのこのライヴに、まだ10代であったピーター・バラカン少年は客席にいたそうです。
チクショー 羨まし過ぎるぞ! イギリス人!

あの頃の、ポップでサイケでお洒落で熱気に溢れていたロンドンって何て素敵なのでしょう! 画面の中に飛び込んであの時代にタイムスリップしたい気分でしたよ。 ビートルズがいてストーンズがいてクラプトンがいてジミ・ヘンドリックスもいたスウィンギン・ロンドン!
クソー! 羨まし過ぎるぞ! イギリス野郎!



ロックは体感するもの。 タブレットかなんかでちんまり楽しむよりも、できれば映画館での鑑賞をお薦めします。