
『ミスター・ベースボール』(1992年 アメリカ映画)
● 監督 フレッド・スケピシ
● 音楽 ジェリー・ゴールドスミス
○ 出演 高倉健/トム・セレック/デニス・ヘイスパート/高梨亜矢 他
11月10日に亡くなられた俳優・高倉健さんを偲んでの映画記事をと考えていたのですが、自分ごときに東映の任侠映画の頃の高倉健さんについてはとても語れないし。 世代的には 『幸福の黄色いハンカチ』 ぐらいからでしょうか。 その作品はテレビ放映時に観たのですが、同じ山田洋次監督作品の 『遥かなる山の呼び声』 (1980) は、映画館で観た記憶があります。
いちばん好きなのは 『新幹線大爆破』 (1975) ですかね。 日本のカルトムービーの傑作として一部の映画ファンにはずっとに支持されて来た映画です。 だからこの映画についての記事にしようかとも考えたのですが、この映画も健さん主演の異色の名作として、もう有名になってしまったので今回はパス。
で、現在ではあまり語られない映画 『ミスター・ベースボール』 にしました。 高倉健さんが亡くなられて、多くのメディアで特集が組まれていますが、この作品についてはほとんど語られていません。 高倉健さんの出演映画の中では異色、というより珍品の部類かもしれませんが、単純に娯楽映画として面白いです。 コメディとして笑えます。
1992年のこの映画は、日本で撮影されてはいるのですがアメリカ映画です。 そういう意味では89年の 『ブラック・レイン』 と同じです。 高倉健・映画出演200本目の作品は外国映画となったわけです。フレッド・スケピシという監督から熱心な出演依頼があったようです。 日本とアメリカの文化・習慣の違いを、野球を通して面白おかしく描いているのですが、典型的な "日本の男" として高倉健さんを監督が選んだのは、『ブラック・レイン』 での強い印象からというのもあったはずだと思います。
Mr.Baseball (1992)
ドラゴンズファンは涙 (T_T)。懐かしのナゴヤ球場でも撮影されています。
ストーリー

ニューヨーク・ヤンキースの強打者ジャック・エリオット (トム・セレック) は、打撃不振に加え私生活でのトラブルも重なり、チームから放出されることに。 移籍先となったのは日本の球団・中日ドラゴンズ。 チームの監督は、かつてスラッガーとして鳴らした内山監督 (高倉健)。
当初は大リーガーとして格の違いを見せつけ快調な打撃を見せていたジャックも、すぐに弱点を見抜かれ、日本の投手たちのシュート攻めにあい、三振の山を築くスランプに陥ってしまいます。
内山監督の敷く厳しい日本式の管理野球にも馴染めず、悪戦苦闘の日々。 やがて監督の娘で球団のビジネス面を担当していたヒロコ (高梨亜矢) と恋愛関係となり、精神面で少しづつ変化をしていきます。 内山監督とも和解し、監督の日本式トレーニングを受け入れ、基礎体力作りからやり直しての鍛錬の日々。
打撃が復調したジャックは、チームメートから "ミスター・ベースボル" として尊敬される存在となり、チームにガチガチの緊張を強いていた内山も、アメリカ式の野球を取り入れ変化していきます。 そしてクライマックス! 結束したチームは、宿敵・ジャイアンツとのペナントを賭けた大一番へ!


この映画の可笑さって、日本とアメリカの野球の違いを誇張して描いている所なんですね。 そして面白さは、昔の日本の頑固親父を思わせる高倉監督(ここではそう呼びますね) と、陽気なアメリカ人・ジャックという違う文化を持つふたりが、ケンカしながらもやがてはお互いを認め合うというところにあるのです。
中日球団が制作に協力し、当時の中日監督・星野仙一氏が、高倉健さんにアドバイスもしたそうです。 たしかに、健さんがベンチで選手を怒鳴りつけたり、物に当たったりする場面などは、ドキッとするほど星野監督に似てたりします。それから漫画・巨人の星に出てきた星一徹を思わせるところもあります(星一徹も中日OB!)。
しかし、高倉監督が真剣になるほどに、アメリカ人・ジャックとの違いが際立ってしまい笑ってしまうのです。「おめぇら、遊びじゃねぇんだ! 集中しろ」 なんて言ってるそばで、ジャックはチームメートの雰囲気を和ませようと、ベンチ内で悪ふざけとかするのです。 ジャックが高倉監督を訪ね 「選手生命は短い。 もっと楽しんでの野球をやらせてやれ」 なんて進言したりする場面もあります。

この映画が公開されたのは1992年。 野茂英雄が大リーグで成功する前の話です。 野茂に続いてアメリカに渡って活躍した長谷川滋利投手が、自らの著書 『適者生存』 の中でこの映画について少しだけ触れています。
アメリカではシーズンに入ると、必ずといっていいほどこの映画がテレビ放映されるのだそうです。 そしてその翌日になると 「昨日 『ミスター・ベースボール』 を見たんだけど、日本ってのはベースボールをするには大変なところだな。 俺は絶対にいきたくないな。」 と、チームメートが言いにくるのだそうです。 そのたびに長谷川は 「今はあんなことないから。 日本も変わっているんだから」 と説明しなければならないのだそうです。 これも笑える話なのですが。
この映画は ヒューマン・コメディなので結末は当然ハッピー・エンドなのですが、最後のほうで映画全体からするとちょっと浮いてしまっているように感じる場面があります。 高倉健さんが娘の住むマンションを訪ね、ぶっきらぼうに、けれど優しさを感じるあの話し方で娘に語りかける場面です。 この場面だけまるで "高倉健劇場" になっていて、「こんな場面を作るとは、スケピシ監督もきっと健さんファンに違いない」 なんて思わせる場面なのです。
女性でなくても 「うわっ 高倉健って素敵だなぁ」 なんて思ってしまうはずです。
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