「ハルカの国 星霜編」の感想 | SEAWEST blog

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同人ゲーム制作サークル「SEAWEST」(しーうぇすと)のブログです。

こんばんは、缶三郎です。

酒飲んでます。久しぶりに深酒してます。

 

ずいぶん昔、といって3,4カ月ほど前ですが

ハルカの国の星霜編をプレイしました。

 

 

おもしろかったです。

おもしろかったので

感想を書くつもりだったし、

途中まで書いてたんですけど、

投げ出しました。

 

直接的な理由は忘れましたが、

その頃はしんどいことがいくつも重なってしまった時期で、

気力が続かなかったように思います。

 

今日はさっき、たまたまその途中まで書いてたのを発見したので、

これも何かの巡りあわせと考え、いくらか加筆修正してここに載せることにしました。

深酒クオリティです。ご容赦。

 

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星霜編、おもしろかった。越冬編、決別編に続いて良い作品だった。
端的に言えば、胸を打たれた。染みた。泣いた。
単純に作品のクオリティはめちゃくちゃ高い。よくぞここまで作り込んだなと思う。
一方でどこか浮遊感のあるストーリーでもある。
前を引き継ぎ、そして次に続いていく物語なのに、最初から最後まで行き先がぼやけている。
ハルカと別れて情熱を失ったユキカゼに向かう先はなく、あるのは行き場のない不安ばかり。
おトラやクリとのドタバタ騒ぎは楽しい日常であるけど、それが続いていく話でもない。
市井の中を生きていく悲喜こもごもを活写して、個人の想いや決意を越えて、縁に振り回されて進む物語。
暗中模索する主人公の苦悩と涙の物語。
世知辛さが実にリアル。写実とは違うリアリズム。
ユキカゼのイカヅチ、クリのトラユキ、そういうものを形にしたものなんだろうと思う。
だから、これは「僕」のための物語。
もちろん、ここでいう「僕」は、同時代に生きる同じような社会背景や感性を持つ多くの人を指す一人称だけど。
そういう意味で唯一無二だと思ったし、素晴らしき同人的な作品だ。

なので感想は、書きにくい。
下手な自分語りになってしまうし、作者への言及も多くなる。
だから酒を飲んで語り合うことにしましょうと言って、これも切ってしまおうかと思ったけれど。

果たしてそれでいいのかな、疑念が湧いてきた。
もう自分にはそう言う資格もないような気がしてきた。
水は低きに流れるもんで、すっかり負け犬根性が染みついた自分だもんで。
犬であれば、まだしっぽ振って恭順を示すだけの可愛げがあるものだけれど。
それすらないから、なんにもない。
失意だけはある。

なので、もう少し書いてみることにしました。

星霜編なにが良かったのか。正直にいうと、よくわからない。
越冬編の良さはいくらでもあげられる。桁違いの自然に圧されつつ、対比として生物の小さな営みの灯が美しい物語だ。
続く決別編も手に汗にぎるバトルあり、笑いあり、男の生き様ありで、ぐんぐんと引き込まれるストーリーが面白い。
そして星霜編……
湿っぽい物語だった。
涙、涙に暮れる物語。泣ける者も泣けない者も、みんな揃って泣いて泣いて慟哭して。そして酒を飲む。
酒と涙と謝罪ばかりの星霜編。あと、うどん。
皆、誰かに対して負い目がある。
それでも生きていかねば、闇の底で密漁してでも生きていかねばならぬ、という悲哀。
クリのように人の「国」憎しと言って、向かうべき敵も見えない。
周りの人間たちはみな優しく、けれど自分のことで手一杯な小さな人間たち。

右を見ても左を見ても辛い、辛い。
おトラのほどけ、喪失感に加えて圧し掛かるお金の問題、明日からの生活の問題。
一人枕を濡らすほかないユキカゼ、悲しみの晩。
夜が明けないことを願う晩。
わかる、その気持ちわかるぞ、ユキカゼ。

世知辛さの共感。
年取ると嫌でも思い当たることばかりで、そういうものに共感して慰めとなったのか。
それも大いにある。心によく染みた。
ただそればっかりじゃない。

屋根より高い巨大な船とどんちゃん騒ぎ。
怪物じみた赤黒い炭鉱とギトギトの坑夫たち。
するりするりとどこでも差し込まれるお化けのような株や金の話。
隣を歩く人のことなど気にも止めないビルディング、そして地震で崩れ去るビルディング。

関係ないようで、関係あるような。
あるようで、ないような。

大きな話と小さな話が折り重なった星霜編。
大きな話が象徴する時代があって、ユキカゼたちはその中のほんの小さな話の中で生きている。
その視野の行き来が、やっぱり良かったと思う。
背景としての時代ではなく、その時代のもつ生き物のような、うねりみたいなものが確かに感じられる作りだった。

時代に押し流されたり、その背に乗ったりして、ユキカゼたちは生きて行くのだな、
百年であればきっと、ずっと遠いところまで行ってしまうのだろうな、と。
悲しさ寂しさも含めて、そこでどんな景色を見せてくれるのだろうか、そういう期待を抱く作品だった。

とはいえ、きっと大きな話の中には「化け」の居場所はない。
ならどうするのか。

どうするんでしょう??
どうなるんでしょう??

次回、ユキカゼ怒りのイカヅチ大炸裂!!!
みたいな矛盾、期待してます。