きむらゆういち/あべ弘士『あらしのよるに』 | キムチの備忘録♪

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読み終わった本の感想です本
 
きむらゆういち(作)/あべ弘士(絵)
『完全版 あらしのよるに』

第1章 あらしのよるに
 雨が轟々と叩きつける嵐の夜、白いヤギはやっとの思いで丘を滑り降り、壊れかけた小さな小屋にもぐりこんだ。
 小屋の中は真っ暗で何も見えない。
 ガタン!と音がして、脚をケガしたオオカミが小屋に入ってくる。
 風邪で鼻も利かず、お互いの姿も見えない中、
 ヤギは相手をヤギと、オオカミは相手をオオカミだと思い込む。
 勘違いしたまま二匹は話を続け、やがて不思議な友情が芽生えて・・・。
第2章 あるはれたひに
 あらしのよるに知り合ったヤギとオオカミ。つぎの日に、おたがいのすがたを見た2ひきは……?
 あした会おうと、やくそくしたけど、ヤギとオオカミ、出会ったら、いったいどうなるの……?
第3章 くものきれまに
 ひみつのともだちになったオオカミのガブとヤギのメイ。こっそりまちあわせをしたのですがヤギなかまが2ひきのじゃまを……
第4章 きりのなかで
 オオカミのガブとヤギのメイはともだちどうし。2ひきはあそびのやくそくをしました。そこにいくとちゅう、メイがべつのオオカミにねらわれ……
第5章 どしゃぶりのひに
 ぐうぜんのであいから、なかよしになったオオカミのガブとヤギのメイ。
 それぞれのなかまからあいての、わるいうわさをきかされて……
第6章 ふぶきのあした
 むれをはなれ、ガブとメイはふぶきのやまごえをけっしん。
 くるしいたびのなか、たべるものがないガブにメイがさしだしたもの、それは……
第7章 まんげつのよるに
 みどりのもりでガブをまつメイ。
 なだれをひきおこしたガブがかならずいきているとしんじているメイでしたが。
絵本ナビより)
 
 
完全版は絵本『あらしのよるに』シリーズ全7冊を1冊にまとめたものです。
↓こちらは絵本大型版シリーズの1冊目『あらしのよるに』
この本は先日感想を書いた韓国ドラマ『主君の太陽』の中に登場し、内容が気になったので借りてみました。
私は未視聴ですが、2005年にアニメ映画化もされているお話です。
 
 
嵐の夜に小屋の中へ避難したオオカミとヤギが互いの正体を知らないまま意気投合し、後日会う約束をします。
そしてお互いがオオカミとヤギと知ったのちも友情を育んでいきます。
しかし、その事が仲間の反発を招き…
 
完全版のきむらゆういちさんとあべ弘士さんのあとがき対談の中で、きむらさんは「本能と理性」をこの作品のテーマに挙げています。
ヤギが大好物なオオカミのガブは、メイとずっと友達でいるにはオオカミとしての本能を抑えなければなりません。メイとの友情を守る為にガブが本能と理性の狭間で葛藤する姿が随所に描かれています。
また、メイの方もガブを信じたい気持ちと、ガブが自分を食べようするのではないかという疑念で葛藤する様子も描かれています。
 
第6章では、オオカミとヤギが友達でいる事に互いの仲間から反感を買い、また周囲にも奇異の目で見られ、ガブとメイは2人で山の向こうの森へ逃げて新天地を目指すことに。そこへ裏切り者を始末しようと、オオカミ達が追ってきます。
吹雪の中でガブに「自分を食べて生き延びて欲しい」と命を差し出そうとするメイ。
そしてメイの命を守るために、追ってくるオオカミの群れに自らの身を投げて雪崩を起こすガブ。
 
物語は一旦ここで終わっていて、きむらさんは実はここで完結させようと思っていたそうです。
しかし読者からの声があり、この続きを書いたのが第7章となっています。
第7章では、行方不明だったガブとメイが再会しますが、ガブは記憶喪失になっています。ガブはメイを食べようとしますが、ある言葉がきっかけで記憶が戻って2人は無事感動の再会を果たすというお話になっています。
 
この物語では、
「信じる心を最後まで貫く事の難しさと尊さ」
「自分の命をかけても良いと思えるものを見つけられる幸せ」
といった事が描かれています。
昔読んだ太宰治の『走れメロス』とも通じるものがあると思いました。
 
ところで、第7章の必要性については少し考えてしまいました。
作者のメッセージは6章までで十分伝わっているような気がしますし、実際きむらさんも第6章で完成だと思っていた訳です。
物語の結末の好みは人それぞれだと思うのですが、私は必ずしも「2人は幸せに暮らしましたとさ」というのが最良のラストとは思わないんですよね。
個人的な意見としては、たとえ結末が別離や死だったとしても、かけがえのないものを手に入れたり大切な人を守ることができたのであれば物語としてはハッピーエンドだと考えています。
変な言い方かもしれませんが、死を以て完成された物語は強烈に心に残るということも言えると思います。
なので私は全6章でも良いと思っているのですが、やはり2人が幸せに暮らす結末を期待する子供達の声がたくさんあったのかな~と思うので全7章で良かったのかも知れませんね!
 
絵本なので子供向けの内容かと思っていましたが、結構深い話だと思います。
大人の皆さんにも是非読んで欲しいですね。
内容の事ばかり書きましたが、大胆なタッチの絵も味わいがあって良かったですよ。
あと、ガブとメイの会話も良かった。お互い終始敬語なのも可愛いですし、相手を思いやる言葉選びも素敵だと思いました。
良い本でした!
また面白そうな絵本があれば借りてみようと思います。