というわけで後篇です
素敵なSSありがとうございました!!!
がんばってリンクも貼ってみましたので、まだご存じでない方はぜひ行ってみてください。
でも、やっぱりPC苦手です (-。-;)
昼休みを挟んで今度は私と飛鷹くんの出番が待っている。
お互いに気合いをいれて頑張ろう、とエールを送りあって楽屋に戻った。
するとそこには麗しき親友がいた。
「モー子さんっ! やっぱりモー子さんの演技って凄くて、見てるだけで心がキューって締まりそうになるの!」
「私も演じながら心臓が痛くて仕方がなかったわよ・・・・」
「ええっ、それは役の気持ちにリンクしたって事?」
「それもあるけど・・・・半分以上アンタの所為よっ!」
「ほえ?」
私、何かしたっけ? もしかして飛鷹くんと話してたのが気に食わなかったとか?
「やだ、モー子さんたら可愛いっ!」
「んもーーっ、何勘違いしてんのよっ! アンタが飛鷹くんと仲良く話してるから、敦賀さんの演技が必要以上に怖すぎんのよっ!」
「モー子さんにも大魔王がわかるのね・・・・」
「そうじゃなくって!」
コンコン
ただのノックなのに、なぜ怨キョが乱舞しているのかしら。
うふふ、居留守を使いたい・・・・
「最上さん、入るよ」
待ったなしでドアが開けられ、キュラキュラと輝く笑顔がプスチクと刺さる。斜め前のモー子さんも明らかにひきつった顔をしてる。
「ハイ、ツルガサマ、ナニカゴヨウデショウカ?」
「うん、用があったから来たんだけど。邪魔だったかな?」
「じゃあ、キョーコ。後でね」
「えっ、モー子さんっ」
ここで私だけ置いてくのっ! 明らかに大魔王降臨一歩手前なのにぃっ!
私の心の声はどこへやら、モー子さんは退散してしまった。そういえば、社さんはっ?
「社さんは今、向こうで打ち合わせ中」
目のすぐ前にいきなり麗しい顔が降ってくる。いきなり近距離は心臓に悪いっ。慌てて距離を置くと温度が下がった。
「俺は君に逢えなかった時間の方が、ずっと心臓に悪いんだけど」
「ですから私の考えを読まないで下さい!」
胸が痛い。こんなに近くにいるのに、私といる時の敦賀さんは大抵怒ってる。あの言葉達はやっぱり嘘だったのよ!
痛む胸を耐えながら、言葉を紡ぐ。
「だいたいっ、敦賀さんは私以外の女性、モー子さんや他の女性と話す時にはにこやかに笑ってるのに、私が近づくといきなりお怒りモードに入るじゃないですかっ!」
「だ・・・・それは、君だって上杉君と始終一緒にいてにこやかに笑っているのに、俺の前だと顔をひきつらせているからじゃないか」
「そんな・・・・だって敦賀さんがお怒りだから、何を言われるか、イジメられるかと・・・・。それに勇気を出して喋ったって、すぐに固まった顔するか、腕を組んで俯いちゃうじゃないですかっ」
思わずまた涙腺が緩んでくる。最後でも泣いちゃだめっ!
自分の気持ちが溢れすぎて、敦賀さんの気持ちを考える余裕がない。
「それは君と話してるのが嬉しくて、つい場所を忘れて抱きしめたくなるからで・・・・」
「それにそれにたまにお昼一緒にしている時だって、ずっと顔を見て下さらないし、ため息ばっかり吐いてるじゃないですかっ!」
もう止まれない。今まで耐えてきた分の気持ちが涙と共にボロボロとこぼれて行く。
「それは君の笑顔を最近みれていないから・・・・」
「敦賀さんだって私の前では笑って・・・・くれないじゃないっ・・・・ですかぁ!他の女性には優しく笑えても・・・・ヒック、こんな私に呆れたんですよね!だったら・・・・」
「呆れる訳ないだろっ! 今だって恋人みたいに君がヤキモチ焼いてくれるのが嬉しくて仕方ないのに」
その台詞にびっくりして顔を見上げれば、真っ赤に顔を染めて髪をくしゃっと手でかき混ぜて、表情を前髪で隠そうとしながら困った様に笑う敦賀さんがいた。
「本当にキョーコにはびっくりさせられてばかりだ」
「きょっ、キョーコって!」
「自分の愛しい恋人を名前で呼んじゃダメ?」
「い、愛しいって!」
「好きだよ、愛してるよ、君だけしか俺はいらないくらい君に溺れてるんだよ。なんて言ったら君は俺の想いを正確に理解して、こんな涙を溢れさせることがなくなるんだろうね」
腕をいきなり引っ張られて、壁に躯を押しつけられて肩口に顔を埋められると、耳元に息がかかる。擽ったいからやめて欲しい。
「ねえ、キョーコ。俺は本当に君以外誰もこんなに欲しいと思った事ってないんだ。君だけが本当の俺を引き出して、そして醜い俺も包んでくれるんだ」
「敦賀さんが醜いなんて事ありませんよっ!」
「撮影前からキョーコとの共演って聞いて、毎日逢える楽しさが演じる楽しさを上回る事なんて考えられなかった」
演じる事にプロ意識の塊でぶつかっていく敦賀さんが?
「だけど始まってみたら、君は俺が演じてる間も自分のシーンでも上杉君とずっと一緒だし。自分の恋人が他の男にべったりなんてイヤだ」
「い、イヤって、お仕事ですよっ!」
「じゃあ、なんで二人だけの場所ではあんなに楽しそうに笑ってたの?」
目の前で答えを待たれると困る!どうしよう、飛鷹君の話を勝手にしたら怒られそうだけど、でも敦賀さんにも協力して欲しい気もする。
「実はですね・・・・」
一通りと言っても掻い摘んで話をすると、敦賀さんはうんうん、と納得したように頷いた。
「やっぱりラブミー部員相手はみんな苦労するんだな」
「なんですかっ、そんなしみじみと!」
「だって、キョーコ、さっきまで冗談だ、とか嘘だったんじゃないか、とか思ってたんじゃないの?」
ば、バレてるぅぅ!
なんでっ、そんな、何も言ってないのに!
逃げたいのに後ろは壁。私の顔を覗き込むように顔が迫る。切なげな顔がさっきのシーンの顔とだぶる。
「俺の事を想って嬉し涙は嬉しいけど、邪推して一人で流す悲しい涙は見たくないな」
「ま、またっ、そういう気障な台詞をサラッと・・・・」
「だから、今回は気絶しないでね」
「え? んぅ・・・・むぅ・・・・はぁ・・・・んっ」
「もう・・・・絶対に・・・・俺の想いを疑わないでね」
「ん・・・・ふぁっ・・・・あぅ」
「返事は?」
「はっ・・・・いぃ」
気絶一歩手前で解放された私は、部屋から敦賀さんと出た途端、目の前には社さん、モー子さん、飛鷹くんの真っ赤な顔をした三人。びっくりして今の部屋の作りを考えれば、私が背にしていたのは薄い廊下側の壁だった事を思い出す。
「いっやぁぁぁぁっ!」
「あ、ちょっと、きょ、最上さん!」
三人より更に茹で蛸の様に真っ赤な顔をした私は、モー子さんが説得に来るまで敦賀さんが入ってこられない女子トイレに逃げ込んで泣き続けた。
でも不思議な事に今までの様な胸の痛さはどこかへ飛んでしまっていた。