ここではなんだからと、たまたま会った局の廊下から連れ去られた貴島の楽屋。10分くらいならと社の許可をもらい貴島についていくと貴島のマネージャーも人払いされた。

「あ~、その、なんだ…」

珍しい。

貴島が言い淀んでいる。うっすら頬が赤く、蓮に焦点が合っていそうで合っていない。はっきりいっておかしい。熱でもあるのかと覗きこむ。

「熱でもある?赤いよ。」

「んあ!?ない!ないよ。」

妙に慌てる貴島に蓮は思いきり眉間に皺をよせた。

「ヘンだな。何かあった?まさか最上さんに何か?!」

「あぁ、ないない。特に何も情報はないよ。とりあえずその辺にでも座って。なんか飲む?」

「いや、すぐ行かなきゃいけないから。で、話って?」

やっぱり貴島は目を合わせないが、時間がないことを思い出してか話を始めた。

「その、敦賀君のマネージャーだけど…。」

「マネージャーって社さん?それがどうしたの?」

「そう、そのヤシロさん。彼って、その…そっちの人なの?」

そっちとはどっちのことなのか。貴島の言いたいことが全くもってわからない。蓮の怪訝な表情に貴島は意を決して言葉を足した。

「男が好きなの?」

「は?」

「だから女の子より男がいいの?」

蓮の恋愛はこれでもかとイジられているが、そういえば社本人の話は聞いたことがない。連と一緒に多忙を極めていて正直なところ恋愛している時間はないだろう。

「さぁ、改めて聞いたことはないな。つきあっている人がいるなんてのも聞いたことないし。ほとんど俺と一緒にいるから、時間がないんじゃないかな。」

蓮の答えに貴島は不満そうだ。

「それじゃ答えになってないよ。」

蓮はまことしやかに流れる噂のせいだろうと笑って言った。

「この質問は社さんと俺ができてるんじゃないかって続くんだろう?よく知ってるはずの貴島君から確認されるなんてビックリだね。」

「なんだ、知ってたの。」

「まあね。たまに直接聞いてくる人もいるしね。誘われることもあるし。」

「さすが敦賀君!男にもモテるんだ。で?」

「しつこいな。あるわけないだろ。俺は彼女以外なんて考えたことないよ。」

「あっ、やっぱり?!まぁ、わかりきってたことだけど。念のため確認ね。で、この噂って京子ちゃん知ってるのかな?」

「えっ、そんなに有名なの?」

「有名って言えば有名かもね。でも、噂の半分は敦賀君のせいでもあるんだよ。声かけてきた女の子片っ端から断るからさ。特にここのところは前みたいに『かわす』感じじゃなくて『キッパリ』って感じで断ってるだろ?だから本命ができたんだろうって。なのに女の影が全くない。ってことで美しすぎるマネージャーに白羽の矢が向いたってわけ。それに、時々君ら耳打ちするだろ。そんなときの敦賀君の顔がいつになく可愛らしいって言われてるよ。心当たりあるんじゃないの?」

蓮が全くわからないという顔をしているので、貴島はからかう気満々といった目をして言った。

「全くわからないの?俺、なんとなくわかるよ。耳打ちってことは聞かれちゃ不味いことだろ。それって彼女関係じゃないのかな。敦賀君って彼女の話してるときはすんごい表情豊かだもん。そこを注意されたとか、そんなところじゃないの?」

思い当たる節のありすぎる蓮は真っ赤になる。社にはキョーコ関係ではいつもからかわれるか注意されるかだ。もちろん、聞かれちゃまずいので小声になる。まさかそんなことで誤解されるなんて…。

「まっ、そういうことだから気をつけてな。それと京子ちゃんに誤解されていないことを祈るよ。」


〈社へのお願い?〉

「社さんって恋人いますか?」
「はっ?なんだよ、唐突に。いるわけないだろ、出会いがないよ。」
「そうですよね、すみません。最後に恋人いたのっていつ頃ですか?」

蓮の質問に面喰らいはしたが隠すことでもない。

「うーん、いつだったかな。大学卒業して1年くらいか。仕事し始めて忙しくなってすれ違っちゃって、別れたのが最後かな。」
「それって女性ですよね?」
「はぁ~?!何いっちゃってくれてんの?俺はいたってノーマルだよ。」
「そうですよねぇ。」
「あぁ、あの噂か。俺とお前ができてるってやつか?そんなのお前が一番わかってるだろ。」
「そうなんですけど…。社さん、恋人作ってください。今すぐ。時間がないって言うなら、俺一人で現場行きますから。」
「お前なぁ、作ろうと思ってできるもんじゃないよ。それに何でお前の噂を払拭するために俺が恋人作んなきゃいけないんだよ。そんなまわりくどいこと言う前にとっとと告ればいいだろ。」
「……」
正論過ぎて蓮は何も言い返せないところに社は追い討ちをかける。
「フフン、いいこと教えてやろうか?その噂最近変わってきてるの知らないだろう?お前の相手、最近は俺じゃなくて貴島になってるぞ。女の子大好き貴島をその道に引き込んだって。恐るべし敦賀蓮ってな。」
「なっ、なんでですか?!」
「何でも何も。最近お前ら共演もしてないのに結構つるんでるだろ、それでだよ。なっ、だから外堀埋めるより早く本丸を落とせよ。」





明けましておめでとうございます
そしてそして、前回から1年!!!
Σ( ̄ロ ̄lll)
なんてことでしょう。
もう自分でビックリしてます。
もう少し更新できるよう頑張ります。
終わらせますよ~。


たぶん、きっと……





「敦賀君は共働きでもいいの?」


これで何度目の貴島との『相談』になるのか。

蓮にとっては『相談』などではなく無理やり口を割らされてるような気がしなくもないが、一方で『藁』とも思い始めているので何とも言い難い。そして貴島の問いはいつも唐突だ。


「何のこと?」


「いや、敦賀君って独占欲も嫉妬心も『ひと一倍どころか十倍』じゃない。この仕事って人目に触れてなんぼじゃないか。それに芝居なんてきったはれたのオンパレードだろ?恋愛ものなんて演られた日には我慢できるのかと思ってさ。」


なんて鋭い。本心ではどこかに閉じ込めて誰の目にも触れさせたくない。


「あぁ、黙ってるってことはやっぱりイヤなんだな。」


「...うん。」


蓮は小さく小さくうなずいた。項垂れる蓮を見て思わず抱きしめて慰めてやりたくなった自分に貴島はあせった。待て、オレ。俺はそっちの趣味はない!!どうにか自分の中で折り合いをつけて何食わぬ顔で貴島は続ける。


「素直になったねぇ。でもその様子じゃひっかかることがあるんだ?」


蓮は下を向いたままぼそりぼそりと続ける。


「彼女が言ったんだ。芝居をして最上キョーコを作りたいって。それまでの彼女は他人のためにつくしてて

自分のために何かをするっていうのがなかったんだ。その彼女が芝居をしていると自分が作られていく気がするって。それを家庭に閉じ込めてしまったら、また『自分』がなくなってしまうんじゃないかって。そんなのは嫌なんだ!」


そこでガバリと蓮は顔をあげた。必死に耐える顔は...。なんて色っぽいんだろう。


「なぁ、貴島君もわかるだろう?!彼女の演技、彼女と共演するときの高揚感!あんな役者そうそういない。役者としての俺は彼女が演技しないなんて罪だと思うんだ。だけど、それでも、演技でも他の男と恋に落ちるなんて許せない。相手役は全部俺ができればいいのに...。」


そこまで言って蓮はまた項垂れる。


「あぁ、そこは耐えるしかないね。京子ちゃんのプライベートは全部敦賀君のものって思ってさ。女優京子はみんなのものって。だいたい、それってお互い様だろう?敦賀君だって芝居で誰かと恋愛しなきゃいけないんだし。」


蓮は視線だけ貴島に向ける。ちょっと拗ねた上目使いが可愛らしい。


「そうかなぁ。彼女が俺に嫉妬?してくれるのかな。仕事だから何でもないって言いそう。それどころか賛辞を贈られたら立ち直れない。」


「う~ん、そこは俺もわかんないな。世間の役者カップルはどう乗り切ってんのかね?」


そういえば、父さんたちはどうしていたっけ?母さんは濃厚なラブシーンのあるのは受けてない気がする。でもその分気持ちを入れなきゃいけなくて視線や言葉やなんかが濃密になって、下手な役者のラブシーンよりやばくなってた気がする。父さんは...ちゃんと見てたし賛辞も贈ってた。目を逸らすなんてしてなかったけど切なそうなのは覚えてる。ただ、耐えてた...でもないか。そんな母さんの仕事が終わると寝室からなかなか出てこなかったし。あのころはいい年してバカップルなんて思ってたけど今なら父さんの気持ちが痛いほどわかる。尊敬するよ、父さん!!!


長い沈黙の後に蓮はぽつりと言った。


「...耐えるよ。耐えてみせる。彼女のためなら耐えてみせる。さっきの貴島君の言う通り、女優京子はみんなのもの、最上キョーコは俺のもの。うん、それで手を打つよ。」


なんだか鬼気迫るものがあるが、この沈黙の間に蓮の心中で何があったのか。しかしこんな時に深追いは禁物。本人が耐えると言うならいいだろう。


「あっ、でも仕事はある程度選べばいいんだよ。そのためには、会社が協力してくれないとね。その点、LMEは大丈夫じゃない?愛に寛大だからさ。」



<ラブモンスター押さえられる?>


「社長!最上さんにラブシーンなんてさせませんよね?」

「なんだ突然。そんな話があるのか?」

「いえ、彼女にはその辺の表現は難しいのではないかと...。」

「今はな。」

「まだ未成年ですし。」

「今はな。」

「純情乙女ですし。」

「今はな。」

「!!!」

「はっは~ん。まっ、考えといてやるよ♪」




゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚


コメントお返ししなくてすみません。

ブログ見てはいるんですけど気持ちが...

というわけで(?)しばらくコメントは閉鎖したいと思います。










「さてさて、次はっと…。」

貴島はまじまじと蓮を見ると真剣に聞いた。

「敦賀君さぁ、親はいるよね?!」

あまりに真剣に見つめられたので何を言い出すのかと思えば大した内容でなくて、気が抜ける。

「いるけど?今は仕事の関係で海外にいるから滅多に会わないけどね。なんで?」

「それって人間?天馬博士が親とか言わないよね?」

貴島が何を言いたいのか全くわからない。そんな名前の博士だって知らない。蓮は片方の眉だけあげて「当たり前だろ」と目で訴える。それだけで答えを理解した貴島はホッとした表情をみせた。

「いや、何となく、もしかしたらアンドロイドとか宇宙人とかだったりするのかなと。そうだと言われても納得しちゃいそうで怖いんだけどさ。」

かつてのミュータントと言われた自分を思い返し苦い気分になるが貴島は貴島でしかない。蓮の表情のわずかな変化を見つけはしたがそのまま続けた。

「なんなんだよ。だって12頭身とか顔とか体の黄金比とかできすぎだろ?筋肉のつき具合とかさ。まぁ、そこは努力してるんだろうけど。」

貴島は横目で蓮を見やるとニヤリと笑う。

「でもその顔で恋愛初心者とか酷く嫉妬深いとか、紳士面して腹黒いとか…。うん、安心した。敦賀君も普通の人間だったみたいだね。」

酷くみっともない部分で人間認定されて喜んでいいのか怒ればいいのかよく分からない。複雑な表情の蓮をしり目に一人納得したような貴島はさっさと話を本題に戻した。

「で、ご両親はご健在?」

「あぁ、二人とも元気だよ。」

「ふーん、仲はいい?」

良すぎる二人を思い出して苦笑いになる。

「…いいよ。」

「何?その間は?」

「いや、本当に良すぎて時々俺の存在を忘れるんだ。」

「ネグレクト?」

「まさか!親バカって言われるほど子煩悩だったよ。」

「へー、兄弟は?」

「いないよ。俺の家族構成がそんなに重要?」

質問の意図がわからない蓮に貴島はまたしても呆れ顔だ。勝手に恋愛相談を始めてから随分たつが蓮の感覚に何度驚いたことだろう。最近では蓮はトンでもないセレブ出身なのだと貴島は確信している。あまりにも世間一般と感覚がかけ離れすぎている。

「だってさぁ、結婚すればキョーコちゃんは敦賀君のご両親とも家族になるだろう?とりあえず小姑はいないみたいだからいいけど。京子ちゃんは嫁って立場だからね。京子ちゃんのことだからしっかりお姑さんをたてそうだけど、それはそれ古今東西古から嫁姑問題は家族問題の永遠のテーマだからね。どう?敦賀君のお母さんは京子ちゃんと気が合いそう?」

母さんとの相性なんて考えたことがなかった。家族かぁ。キョーコちゃんと家族になったらメチャクチャ喜ぶだろうなぁ。娘ができて嬉しいって言って連れまわしそうだよなぁ、二人とも。連れまわしすぎて帰ってこられないかも。それは困る。キョーコちゃんは俺のものなのに!!!
蓮が幸せそうな笑みを見せたから相性が良さそうなのかと思ったけれど途中から困惑に変わる。

「あのさ、京子ちゃんじゃないんだから百面相やめない?で、いいの、悪いの?」

「んあっ?!あぁ、気が合いそうだよ。前々から娘が欲しいっていってたし。最上さんも母さんとは気が合いそうだ。」

「随分、はっきり断言するね。」

俺が言うのもヘンだけど、キョーコちゃんは母さんを見たら女神様とか言って崇め奉りそうだし、おかしな波長が合いそうだし。父さんに至っては既にお互いに父娘認定だし。

「敦賀君マザコン?」

「なんでそうなるんだ?」

「気が合いそうだってことは似てるってことでしょ。母親と似てる人が好きってそういうことじゃないの?」

キョーコちゃんと母さんが似てる?そうなのか?

変な思い込みとか、斜め上の発想が似てると言えば似てるかもしれない。でも、母さんは天然腹黒で無邪気に他人を操るけどキョーコちゃんはそんなことしないし。あっ、でも天然たらしは一緒かぁ。

「どうかなぁ。似てるところがあると言えばあるけど、やっぱり違うよ。」

「マザコンは否定しないんだ?」

「親が大切なのは普通だと思うけど?」

「ふ~ん、でも、海外じゃなかなか会わせられないね。将来を考えてる人がいるんだくらい匂わしとく?突然連れてくのもありだけど、まだ早すぎるって言いそう?それとも喜ぶ?」

「それは、危険すぎる。」

「そっか、早いか。京子ちゃんまだ未成年だもんね。」

「いや、そっちじゃなくて。危険すぎるほど大喜びする。仕事ほっぽりだしてすっ飛んで来て最上さんを拉致しそう。」

「拉致?」

「うん、ドレスだ新居だと勝手にすすめそう。」

「えっ、いきなりそこ?!普通、人となりとか家の格とか気にするんじゃないの?」

「人となりは大丈夫。息子が選んだんだから反対なんてしない。それに最上さんを気に入らないなら誰が行っても気に入らないんじゃないかな。それに家の格なんて気にしないよ、貴族でもあるまいし。」

「やっ、なんか敦賀君ちってセレブっぽいから気にするのかなって。」

貴島は俺のことどう見てるんだ?アンドロイドとかセレブとか。まぁ、両親が有名人ってところは当たりだけど、こっちじゃセレブって上流とか金持ちって意味が強いけど、なんだかな。

「そんなこと気にしないよ。」

「じゃ、敦賀君ちは最後でいっか。」

「うん、それでいいと思う…。」

蓮は遠い目で答えた。




<ジュリ・クーは抑えとく?>

「くしゅん。」

「ジュリ!!まさか風邪か!?暖かくしてもう寝よう!薬!医者!いや、行ったほうが早いか?ヘリを呼べ!!!」

「もう、貴方ったら…。なんか急に鼻がね。大丈夫よ、治まったから。」

「本当に?無理はしないでくれよ。日本ではね、誰かに噂されるとくしゃみが出るって言うんだ。きっとジュリの美しさを誰かが噂しているんだね。」


「もう、バカねっ。」






゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚


コメント頂いているのにお返事しなくてごめんなさい!!!


蓮て12頭身でしたっけ?8頭身?まぁ、なんでもいいからかっこいいってことで(笑)