[編集 ] 自傷
自傷行為 による失血死を試みるケースも少なくないが、たいてい切るのは静脈 であり、切ってから死に至るまでの時間が長いので、その間に誰かに見つかって未遂に終わることが多い。また、自殺する際の苦痛も大きい。ただし、首 や心臓 、動脈 を切った場合、激しい出血と痛みによって、失血死のほかに出血性ショック 死を起こす可能性がある。この方法は苦痛が多く、絶命する前に自分で病院に駆け込むケースも多いという。なお後述もするが、リストカット など、死ぬのが目的ではなく自傷行為そのものが目的であったとしても、出血がひどくて失血死をしてしまう場合もある。
切ったのが静脈の場合、発見・対処が早ければ後遺症が残ることは稀である。切ったのが動脈の場合は、一刻も早く止血する必要がある。健康な成人の場合、体内から半分の血液 が失われると死亡すると言われている。自傷により自殺を試みる人は、傷や血、痛みに慣れているために抵抗が少ないリストカッターに多い。
[編集 ] その他
銃 の広まっているアメリカ などの国々では銃による自殺も多いが、日本では銃は銃刀法 によって厳しく取り締まりが行われているため、銃による自殺は極めて少ない。また、アメリカでは警察官が自己防衛を事由に発砲することが比較的多いので、わざと警察官に抵抗して射殺される拡大自殺 を行う者がいる。銃自殺の例では、旧ナチスドイツの指導者であるアドルフ・ヒトラー の拳銃による自殺がある。
自らの体にガソリン や灯油 をかけ、火をつけて行う焼身自殺もあるが、これは死そのものよりも、見る者へ与えるインパクトの強さを狙った、過激な宣伝方法の1つであることが多い(例えば韓国 の反日デモ において、日本を批判する言葉を叫びながらガソリンをかぶり、火をつけようとした男性がいた)。 政治に対する抗議の焼身自殺も少なくなかった。有名なのはベトナム戦争 当時のベトナム政権による仏教 徒弾圧に対する抗議のためにビデオカメラの前で焼身自殺したティック・クアン・ドック師がおり、この映像が全世界に報じられた。左翼思想を持つロックバンド、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン の1stアルバムには焼身自殺を試みた僧の写真が載せられている。
熊 の檻に自ら入って噛み殺された人もいたが、これは「餓えた獣を不憫に思い、自らの身をその獣に捧げた」( 捨身飼虎)という仏教 の話に感化されて、自分もそれを行ったという説もあって、「自殺」と呼べるかどうか意見が分かれている。また、現在の日本人で特定の宗教を信仰する人はごくわずかなので、こういったものはほとんど見られない。
アメリカの病理学者が製作した自殺装置によって自殺した人もいる。この自殺装置は3本のボトルとそれぞれの流れを調整するタイマーからできており、ボトルにはそれぞれ生理食塩水、麻酔薬(ペントソール)、塩化カリウム 水溶液が入っている。まず点滴 のように静脈 に針を刺し、食塩水を流す。次に自殺志願者がボタンを押すと、食塩水が麻酔薬に変わり、志願者は眠りに入る。さらに数十秒後、麻酔薬から塩化カリウム水溶液に変わり、死亡するというものである。ただし、これは不治の病気などに悩む人がなるべく苦しまずに死ねるようにと作られた尊厳死 のための装置である。
[編集 ] 自殺の判定
自殺は自らの意思で自らを殺そうとすることとされるが、外面上自殺に見える場合であっても必ずしも自殺といえないこともある。この問題が持ち上がるのは、自殺があくまで「自分の意思の結果」であるという前提があるからである。
近年、警察の誤った捜査によって自殺と思われていた事件が事故や殺人事件と判明した例が数件発覚しており、徳島自衛官変死事件 のように遺族とのトラブルや訴訟となった例もある。
逆に、自殺であるにもかかわらず、警察や遺族によって事故とされるケースも少なくないと見られている。突発的な自殺願望によって、遺書も書かずに電車や車に飛び込み自殺した場合などに多い。
また、さらに広範に見ると、周囲から見てもこれは自殺ではないかと思われる場合でさえ、そう断定できないこともある。例えば、自傷行為 はしばしば自殺未遂とされることが多いが、実際には自傷は自殺が目的ではなく、切ること自体に意味があるので、これは誤解であるとされる。しかし、自傷者の多くには実際に自殺願望があるうえ、自傷による事故死と自殺は非常に見分けづらいので、現在は自傷による事故死も自殺に含めてしまうことが多いとされる。拒食症 による死亡も自殺的とされることもあるが、やはり意図していないので、別個のものである。
いずれにせよ、状況を一見しただけで安易に自殺であると断定するのは拙速であることがあり、特に有名人の自殺に関しては多くこの問題が取り上げられる。
[編集 ] 世界の自殺と社会
自殺そのものの是非をめぐって様々な議論がなされている。下記にいくつかの主張・思想と現代社会における取扱いを挙げておく。
[編集 ] 自殺にいたる背景
経済、政治的にその混乱と困窮の度合いがあまりにも高い国では、自殺はあまり見られない。生きることにまず最大の関心が向けられているからである。また、経済的に拡大途上にあり、様々なチャンスの多い国でも少ない。自殺が多いのは、元は経済的に豊かであったのが、不況になり失業や就職難が深刻になったとか、他人の幸福を目の当たりにしながら、自分だけがそれに手を伸ばすことができないといった絶望的な状況にあるなどの国々である。前者はバブル崩壊後の日本、後者はハンガリーなど元東側諸国の国々などが例として挙げられる。
こうした国の経済、社会、文化、宗教などでの違いは見られているものの、自殺の大きな要因として近年あげられるのは、うつ病 などの精神疾患 との因果関係である。現に、自殺既遂者の95%は何らかの精神疾患を患っていて、その大半が治療可能だったという研究結果もある。これらは慢性に経過するものから、強いストレス によって急激に発生するものまであり、自殺者や自殺志願者に対応する際、心得なければならない疾患の一つとしてしばしば注目される。
このような精神的危機の背景には、激しい競争社会や、低い自己評価に対する否定的な感情、家庭、職場での困難など複数の要因がある。しかし、以上のような環境にあっても周囲の対応で精神の健康を維持することは可能である。
初めて社会的な要因からの自殺の研究を発表したのは、エミール・デュルケーム の『自殺論 』である。近代からの視点では、自殺は必ずしも悪いことではないとされる。しかし、飛び降りなどの他人に少なからず影響を与える死に方に対しては、「死ぬのは勝手だが他人に迷惑をかけるな」という声もある。
特別な、あるいは珍しいケースもある。「肥満大国」とも言われるアメリカでは肥満 を恥じての自殺がある。
ドラッグ や麻薬 の広まっている地域では覚醒している状態で正常な判断能力を失っているうちに、ビルの上から飛び降りたり、自動車や列車に飛び込んで自殺をしてしまうこともある(この場合、自殺ではなく、事件や事故と取る場合もある)。例えば水谷修 氏が麻薬・薬物を撲滅しようとするきっかけとなったのは、横浜市 で定時制高校の教員を勤めていた頃、当時の生徒がシンナー で覚醒状態にあった時にダンプカーに飛び込み、死亡したことと本人は言っている。
日本では保険金を目的とした自殺も行われている。実際に日本で、保険金を担保に金融機関 から借金をして、返済ができなくなると悪質な取り立てを行って債務者を自殺に追い込み、保険金で返済を求めるというケースも起きている。
[編集 ] 自殺の歴史
自殺の歴史はとても古く、紀元前の壁画 などにもその絵や記述が残されているほどである。中国では、紀元前1100年 ごろ殷 王朝最後の帝 である帝辛 (紂王)が周 の武王 に破れ、焼身自殺したと伝えられている。また、前述したように古代ギリシャの詩人サッポー は入水 により自殺したという説があり、他にもエジプト プトレマイオス朝 最後の女王であるクレオパトラ7世 はアクティウムの海戦 に敗北した際に、オクタウィアヌスに屈することを拒み、コブラ に自分の体を噛ませて自殺したと伝えられている。
手法や原因は異なるが、失恋や権力の失墜、配偶者や親類の死亡などによる絶望感、失望感から自殺を試みるのは、過去から現在に至るまで同じである。
最近では、肥満による羞恥心から自殺したり、アルツハイマー病 と診断された人がその苦しみに耐え切れず自殺することもある。