[編集 ] 地域によって違う自殺方法
上述したように、日本では法律によって銃の所持が厳しく制限されているために、銃を使った自殺はごくわずかであるが、銃の広まっている国では、年齢を問わず銃による自殺が多い。例えばアメリカ合衆国 における調査結果 では、10代の小火器(拳銃 など)による自殺が全体の49%と、ほぼ半数を占めている。
銃による自殺が多い理由には、その致死率の高さと手軽さが挙げられる。こめかみなどに銃口を当ててトリガーを引くと、飛び出した弾丸 により脳が壊滅的な損傷を受けるため、ほぼ確実に死に至る。銃自体も100ドル程度から手に入り、弾丸 も1発1ドルから買える。また、自衛の意識が強く、狩りが日本に比べて盛んなので、多くの家庭に銃が置いてある。そのために自殺を思い立ってから実行するまでの時間が短い。
アメリカ以外では、カナダ 、イタリア 、オーストラリア などの国々も、銃による自殺が多い。
それに対して日本など銃の所持が規制されている国々では、一部の例外を除き、ほぼどの国においても首吊り自殺が他の方法よりも多い。これは首吊りの有効性が、どの国でも認められているということでもある。
※国によって分類や調査などに差があるため、単純な比較はできない。参考程度に留めておいてほしい。
[編集 ] 自殺に関する倫理観と自殺志願者の意見
現在、「自殺をすることは良くないことであり、自殺志願者をすべて救おう」とする動きが日本社会の一般的な理念となっている。しかし、自殺志願者達は既に他人の求めに耳を傾けることができるほどの余裕を持ち合わせていない。したがって、自殺防止を呼びかける人々の「生きていれば必ずよいことがある」、「死ぬ気になれば何でもできる」、「残された家族が悲しみ続けるから家族のために生き続けてほしい」などの励ましは多くの自殺志願者にとって気休めになるどころか、かえって当事者を追い詰めがちになるという厳しい意見がある。
自殺は、精神ケアの難しさを顕著に示す例である。「自殺志願者を救いたい人々は自己満足のためだけに活動しているに過ぎない」という志願者側の見解に決定的な反証はできず、カウンセリング 成功への道のりは険しい。一方で、自殺願望の念から立ち直った人から「どうしてあれほど死にたいと思っていたのかはっきりしない」、「理由なくなぜか死にたかった」という意見も聞かれ、根本的な原因の追究と解決の難しさを表しているといえるだろう。
日本では近年個人主義が進んでいると言われているが、本質的な社会構造においては未だ集団主義的色合いが濃く残っている。また、皆と同じであることで心理的に安心感をもちうる国民性をもつ。そのため、個人の思想やライフスタイルが社会に受け入れられないと感じた時や、「他人と違う、自分だけついていけない」などのプレッシャーが重くのしかかった時に耐え切れなくなって自殺に走る傾向が強いといわれる。
[編集 ] 法律的な取扱い
現在、多くの国で自殺および自殺未遂 を犯罪 として取り扱ってはいない。しかし、これは、比較的近年になってのことである。歴史的には、自殺は犯罪と考えられ、その成否にかかわらず処罰の対象とされてきた。
現在の日本においても、自殺は犯罪とはされていない。しかし、他人の自殺に関与することは犯罪(自殺関与罪 、自殺幇助罪 )とされる。また、本人の依頼がある場合でも、人を殺害すること(同意殺 )は犯罪と扱われる。
一般に安楽死 は殺人、または自殺に関与する罪であって違法とされるが、オランダ においては、2000年 に安楽死が合法化されるなど、ヨーロッパにおいて尊厳死 、安楽死 が認められる動きがある。
また、過去の例外として、重大な犯罪 を起こして死刑 を免れない状況に陥った貴人が公衆の前で処刑されるという屈辱を免じてその名誉を重んじさせる意味で自殺を強要したこともある。律令制 国家における皇族 や高位者が死刑判決を受けた場合に自宅での自殺をもって代替にするのを許したことや、戦国時代から江戸時代 初期にかけての日本における切腹処分などがこれにあたる。
[編集 ] 文化的な取扱い
キリスト教 およびイスラーム 、儒教 では、自殺は宗教的に禁止されている。そのため、欧米やイスラーム諸国では自殺は犯罪と考えられ、自殺者には葬式が行われないなどの社会的な制約が課せられていた。かつては、教会の墓地に埋葬することも許されなかった。現在でもアメリカ合衆国 ミシガン州 法は自殺未遂は犯罪であると規定している(実際に適用はされないとしている)。
しかし、文化によっては自殺に類するものが推奨される場合もある。ヒンドゥー教には、夫が死ねば妻も焼身自殺するという、寡婦殉死 (サティー )の風習があった。マヤ文明 では、一般に死 をつかさどる神 「ア・プチ 」のほかに絞首台の女神 「イシュタム 」がいて、自殺者の魂 を死後の楽園へ導くとされた。仏教 でも、死 は永遠ではなく輪廻 ・転生 により生 とは隔て難いものであり、また、人食い虎に己の肉体を差し出す逸話など「己を捨てる」ことを美徳とする考えがあり、自殺を否定していないものと解釈される。
日本においても、明治天皇 崩御 のおりに乃木希典 夫妻の殉死が行われるなど、特定条件下での自殺は美談として扱われた。切腹 ・心中 ・特攻 ・自爆 ・殉死 ・即身仏 など、自殺に准じる行為が様々な状況で扱われている。
文化的に推奨される場合には、社会的圧力によって自殺が強要される場合もある。チェコ のヤン・パラフ や、フランス におけるイラン 人焼身自殺など、「抗議の意思を伝える政治的主張のため」とする自殺が行われる場合がある。
現代のイスラム原理主義 者による自爆テロ にもそのような主張がなされることがあるが、強要・洗脳・煽動・追込み、そして、最も根本的には「同情を向けるための戦術」という面があり、さらには自殺と同時に殺人 が行われることになるので、犯罪性が強い。多数派のイスラムの教義解釈によれば、敵の戦闘員に対しての自爆はジハードとして天国に行けるが、民間人に対しての自爆テロ は自殺として永遠の滅びの刑罰が与えられるとされている。
[編集 ] 日本における最近の情報
[編集 ] 急増した自殺者
日本では、1990年代 後半から中高年の自殺が3万人以上に増えている。それまで2.5万人程度であった年間の自殺者は、1998年を境に急増して3万人を超え、それ以降3万人を超え続けている。自殺者の2/3は男性であり、1998年以降急増した要因も男性の自殺であった。
自殺者が多い曜日は月曜日 である。これはブルーマンデーの影響があると見られる。逆に少ない曜日は土曜日 で、男女ともに同じ傾向である。
[編集 ] 国際的にみても多い自殺者数
2002年 以降、日本では年間3万2千人以上が自殺しており、人口に占める自殺率では先進国G7 諸国中で1位、OECD 加盟国では2位(1位はハンガリー )となっている。1日に平均88人、16分に1人が自殺している計算になる。2003年 の年間自殺者数は3万4千人に達し、統計のある1978年 以降で最大となった。人口10万人あたりの自殺者数を表す自殺率も27.0で過去最大であった。
国別の自殺率上位10か国中、日本以外はすべて東欧・旧ソ連の旧社会主義国であり、旧西側諸国の間では日本が1位である。近年の日本では、フリーター 、ニート に象徴される経済的な二極化の傾向が顕著である。
2004年 の自殺者数は、警察庁の調べで32,325人を数えた。自殺率は25.3で、G8ではロシアに次いで2位であった。戦後最悪といわれる失業率と倒産件数を背景に自殺者が激増した。過去最多の2003年に比べれば2千人余の減少であるが、7年連続で3万人台が続いている。1日平均89人が自殺する現状である。
[編集 ] 対策
2005年 7月、参議院 厚生労働委員会で「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」がなされ、同年9月には第1回「自殺対策関係省庁連絡会議」が開催された。しかし、後述の日本における行政の課題 も示すように、課題も多い。