伊達政宗公「秋」を詠む
奥州の覇者 伊達政宗公は和歌をこよなく愛し多くの歌を残しています。
豊臣秀吉は文禄三年(1594)2月に吉野山の花見の際に、公家や多くの武将を集め、一人5つの題で和歌を詠ませています。
そのときの二首
君がため 吉野の山の まきの葉の ときはに花も 色やそはまし
遠かりし 花野こずえも 匂ふなり 枝に知られぬ 風や吹くらむ
秀吉から「鄙の華人」と賞賛され、戦国武将からも一目置かれた文化人でした。
今回はその政宗公で秋を詠んだ歌をご紹介します。
よそにのみ 見れば木の間の 一つ栗
終には猿の 餌食なるべし
虫の音は 涙もよほす 夕まぐれ
さびしき床の 起伏しもうし
吹きはらふ 嵐にもろき 萩の花
誰しも今や 惜まざらめや
梢まで 咲きも残らぬ 花にまた
さやけき月の 光さへそふ
そめいろの 雲の眺めも ことなるに
初雁がねぞ 空にわたれる
わが宿の 庭のむら萩 咲きしより
思ひぞいづる 宮城野の原
短夜の あけもやすらむ 箱根山
木ぶかき陰に 夏ぞ忘るる
如何でしたか?
吉野の歌会で公家をも唸らせた伊達男の一面です。